ブックレビュー 「太陽のかけら」  大石明弘 | ネコのひとり言

太陽のかけら
昭和の歌謡曲みたいなタイトルですが、副題は「ピオレドール・クライマー谷口けいの青春の輝き」。
Amazonのおすす本にあった一冊です。

私は谷口けいさんという人を全然知りませんでしたが、登山界のアカデミー賞といわれるピオレドール賞を、女性で初めて受賞されたそうです。

この賞は優れた登山家に贈られる国際的な賞で、近年では新しい登攀ルートを開拓した人に贈られることが多く、谷口けいさんも、2008年にカメット南東壁(インド)を初登攀したことで受賞しました。


太陽のかけら 谷口けい

 

本書はそんな谷口さんの子どもの頃からの人となりを振り返りながら、どのようにして山にひかれ山を極めるようになっていったのかを、彼女の人間的な魅力とともに解き明かします。

前半は少し退屈な内容でしたが、後半になって彼女の生き方に共感する場面も多々あって、楽しみながら読みました★4

 


谷口けいさんの生き方太陽のかけら 谷口けい
・女だからできないというのが嫌い
・人として強くなりたい   
・いろんなことに興味を持って見ないともったいない
・自分らしく自分の力で生きたい
・自分の心に素直に生きたい
・自分がやりたいと思えば、努力してやればいい
・日常生活でも一瞬、一瞬を大切にする
・立ち止まることなく次の目標に向かう

特に、「いろんなことに興味を持って見ないともったいない」という部分は、私も大いに共感します。

人間的な魅力については、こんなエピソードが出てきます。

 

太陽のかけら 谷口けい

 

山形に住む山仲間の和田さんが、ある果樹園でサクランボの収穫手伝いをするという話を聞いた谷口さんは、「私もやってみたい!」と山形にやってきます。

 

果樹園のオーナーは、彼女は観光の延長でサクランボの収穫を見に来たと思っていました。
ところが、なれた手さばきで次々とサクランボを収穫するのにビックリ。

 

うれしそうに働く姿に感動したオーナーは、持ちきれないほどのサクランボを彼女に持たせ、アルバイト代まで渡したそうです。

太陽のかけら 谷口けい

 

ヒマラヤの山々を岩壁登攀する彼女でしたが、2015年12月、北海道大雪山系黒岳(1984m)で滑落し、亡くなられました。
43歳でした。

 

ご冥福をお祈りします。