ブックレビュー「難にありて人を切らず」 水木楊 | ネコのひとり言
イメージ 1サブタイトル「快商・出光佐三の生涯」。
 
「海賊と呼ばれた男」がとても面白く、出光佐三さんの生き方に興味を持ち、小説に書かれているのはどこまでが事実でどこまでがフィクションなのかを知りたくて、この本を借りました。
 
著者は元日経新聞論説主幹の水木楊(よう)さん。
 
本書はドキュメンタリなので、それによれば「海賊と呼ばれた男」の話はすべて事実ということになります。
 
一番驚いたのは日田重太郎という人が、出光佐三氏の独立資金を出したというエピソードです。
本当にこんな人がいたんだ!という驚き!
このとき出光氏27歳、日田氏36歳という若さです。
 
資産家の養子といえども当時のお金で6000円(現在では約9000万円)という金額を、まだ若い青年に何の見返りも求めず出したというのですから、出光氏の商才と人間性を見抜いた日田氏の先見性にも驚くばかりです。
 
二十三銀行や大分合同銀行などから借入金の整理をされそうになったときも、銀行トップの決済でその危機を回避できたというのも驚きでした。
 
出光氏の確かな経営方針と経営哲学が、彼らを動かしたのでしょう。
「この頃の銀行家たちの中には、担保よりも人間を見分ける人たちがいた。銀行マンの使命を心得ていた人たちである」と著者は述べています。
 
戦争で壊滅的な損害を受けたにも関わらず、出光氏は1000名にも上る社員を一人も首にしなかったとのことです。
 
また、こんなことも言っています。
「私は社員に全幅の信頼を置いている。創業時から出勤簿すらない。民主主義の基礎はお互い信頼し尊敬し合うところにあると思う」と。