ブックレビュー「聞く力」阿川佐和子 | ネコのひとり言
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150万部のベストセラーだそうです。
 
図書館に予約したら4人待ち。ほぼ1ヶ月半待って先週やっと順番が回ってきました。
このあとも5人が待っておられるようです。
 
文春新書からの出版ですが、アガワさんによれば新書とは、「学術的側面において人様に知らしめるべき知識や技術や意欲を持っている人が記すもの」らしい。
 
そして、「自分はその範疇にない」と言っています。
 
話し口調にも似た文体はとても読みやすく好感が持てます。
 
「なんの話をしていたんでしたっけ。あ、そうだ。日常生活におけるインタビューの話でした」
のような文章で、とってもお茶目で可愛い人だなぁ・・と思いました。
 
さて、本書は週刊文春で「この人に会いたい」という対談を20年もされているアガワさんが、そのインタビューから学んだノウハウをエピソードとともに35のヒントとしてエッセイ風に綴っています。
でも、いわゆるハウツー本ではないところがミソです。
 
そんな彼女は「今でも対談に出かける前は、ビクビクどきどき」するとのことです。
 
聞くヒントの一つに「素朴な質問を大切に」というのが書かれています。
「まさかこんな基本的なことは、今さら聞けないよね」という質問が、思わぬ収穫を得ることがあるとのことです。
 
イメージ 2デーモン閣下との対談エピソードがそれです。
事前にヘビメタについて担当編集者からレクチャーを受けたアガワさんでしたが、その説明がよく理解できないまま対談の日。
おそるおそるデーモン閣下に聞いたそうです。
以下本書からの抜粋。
 
~「あの、ヘヴィメタって、なんですか」
すると、驚きましたよ。デーモン閣下は親切!しかも説明がお上手!私のようなロックシロウト相手に、それはわかりやすく教えてくださったのです。
「ハハハ、ロックというのは、わかりますね?」
最初に私に優しく断りを入れてから、こんなふうに話してくださいました。
「ロックがいろいろな枝葉に分かれていく中で、速さと激しさを追求したものをハードロックというんですね。♪ガンガンガンガン、ガガーンガンガーンガーン、タターンターンタ、バーンバーンバーンっていう感じ」
「ほうほう」
「じゃ、速くて激しければ全部ハードロックなのかというと、そうではなくて。そこからまた枝葉が分かれていって。速くて激しいけれど、ドラマティックであったり、仰々しい決めごとを取り入れる。たとえばクラシック音楽のワンフレーズを持ってきて、あるイントロに来たら全員がちゃんと、♪ダダダダーンみたいなベートーヴェンの『運命』のメロディをぴったり合わせる。そういうのを様式美というんですけどね」
「はあ~」
「簡単に言うと、様式美の要素を入れないと、ヘヴィメタルとは認定されないんです」~
 
アガワさん、よくぞ聞いてくれましたって感じ。私も全然知りませんでした。
 
また、「老人の話すテンポについて」のエピソードでは、「相手の答えが出てくる前に、こちらで予測して答えてしまうことがある」のは、「一見、親切な聞き手のようですが、結果的には答えようとしている人を追い立てることになる」と戒めています。
老人相手でなくても思い当たりますね・・。
 
★4