文科省と財務省の綱引きが長く続いてきましたが、政府は、公立小学校の1クラスの上限人数を現行の40人(1年生は35人)から35人に段階的に引き下げ、2025年度までに小学校の全学年で35人学級の実現を目指すという報道がありました。
文科省は、教員が子どもと向き合う時間の確保などによる質の高い教育の実現が急務だとし、平成23(2011)年度より小学校1年生において35人学級を実施してきました。
こうした動きに噛みついてきたのが財務省。
財務省としては、35人学級にした結果、教職員の人件費増などで財政負担が増えたにもかかわらず、いじめや暴力抑制などの明確な効果が認められなかったじゃないかというわけです。(下記資料参照)
今回、全国の小学校において、全学年35人学級への道筋がつきましたが、文科省は本当は30人学級をやりたかった。財務省がそこは譲らず間をとったという見方もできます。
では、35人学級について、少しおさらいをしておきます。
先にも触れましたが、2011年度から、小学校では1年生に35人学級を導入しました。
35人学級というのは、1学級の生徒数上限を35人にするというものです。
1学級の生徒上限を定める学級編成基準は、1959年度に50人と定められ、64年度に45人、 80年度に現在の40人になったという経緯があります。
例えば、高校の生徒募集などは分かりやすくて、320人、360人、400人などと40人刻みなのもそういった理由からです。
ただし、学級編成基準というのは1学級の上限を決めるものであって、自治体や学校の中には、もっと踏み込んで、自主財源を使い、きめ細かい少人数学級に力を入れているところもあります。
(上の写真資料は新聞記事掲載当時のものですので現在は変更されている場合があります。)
ちなみに、現在、名古屋市では小1・小2で30人学級を実施しています。原則30人以下の学級を編成するということです。市の予算を使っているので、以前に名古屋市の事業仕分けの対象になったことがありました。(結果は「継続」になりましたが。)
名古屋市では、中学1年生は35人学級を実施しています。
ところで、30人学級になると、以下のような学級編成が可能になっています。
例)1学年61名の場合
【35人学級の場合】
👇
1学級の上限が35人
👇
A組31名、B組30名
【30人学級の場合】
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1学級の上限が30人
👇
A組21名、B組20名、C組20名
1学級の上限人数変更を牽引してきた有力者のうちのお一人が下村博文現自民党政調会長。
下村氏はこれまで教育行政に辣腕をふるわれてきましたので、今回の35人学級実施にも、大きな力を発揮されたと推測します。
これで、まずは全国、全学年での35人学級実現に向かうでしょう。
学校現場ではデジタル化促進、教員の英語力やICT活用指導力向上という大きな課題がありますし、大学入試制度も先送りされている事項がいくつかあります。
こうしたことに対応しながら、少し先になるのでしょうが、おそらくは全国で30人学級を実現させようという流れになっていくのでしょう。国の動きが遅ければ、自治体単位で進むのではと思います。
学力調査で全国トップクラスの成績を上げ続けている秋田県では、20年ほど前から少人数教育に力を入れてきて、2020年度の1学級あたりの平均児童生徒数は、小学校23.6人、中学校26.7人です。学力調査の好結果は、定員だけが理由ではないのでしょうが、注目すべき数字です。
ちなみに、1学級当たりの平均児童生徒数は、名古屋市では小学校26.1人、中学校30.8人、東京都の公立では小学校29.3人、中学校31.4人となっています。
今回、35人学級が大きなニュースになっていますが、自治体ごとに学校現場では少人数教育の動きは既に進んでいて、実際のところ、大きなインパクトになるのは30人学級に施策が進んだときだと感じています。(だからこそ文科省は中学校も含めた30人学級をやりたい)
引き続き、動きがあればこのブログでもお伝えしていきます。
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