続・『麦藁帽子』― 立原道造の詩と作曲家の意図を読み取り、曲想を解釈する
昭和61年度 中学校の部課題曲B
麦藁帽子
作詞:立原道造、作曲:飯沼信義
▲「麦藁帽子」(根城中学校合唱部)
「麦藁帽子」は、昭和61年度中学校の部の課題曲B(既存曲)でした。
詩は、昭和初期に活躍した詩人の立原道造さん。
多くの作曲家に愛され、楽曲化されています。
高校生の音楽の教科書「Joy of Music」(教育芸術社)に、創作学習の例示として、この曲を作曲をされた飯沼信義さんの創作についての解説が掲載されていたので、一部かいつまんで紹介します。
立原道造の詩を解釈する作曲家・飯沼信義さんによる解説
【A】
八月の 金と緑の [微風]の中で、
眼に沁みる [爽やかな]麦藁帽子は、
黄いろな 淡い [花々]のようだ。
【B】
(b)
甘いにおいと 光とにみちて
それらの花が 咲きにおうとき、
(b´)
蝶よりも 小鳥らよりも
もっと優しい生き者たちが 挨拶する、
詩の解釈と曲の構想
- 自然体の情趣を生かし、明るく爽やかで、優しく温かみのある曲想とする。
その中心となるモティーフ(動機)を共通のイントネーションをもつ3つの語句(※Aの[ ]付き語句)からつくる。 - AとBという詩の構造を曲の構造として生かす。
さらにAは1行ずつ、Bは2行一体として、行末のニュアンスを曲のフレーズに反映させる。 - A・Bそれぞれの最後の行に詩の内容の重心が、さらに第7行に全体の頂点が置かれていることに留意し、第4行からこの頂点に向かってさまざまな音楽的高揚を工夫する。
- 第7行を半休止とし、そのあとにAを再現することによって、全体を安定感のあるA-B-Aの三部形式とする。
フレーズのまとまりをここまで体系的に捉えられていると、スマートに納得できますね。
この後、「曲想の展開」「ピアノの役割」と解説が続くのですが、全6ページに渡る解説ですので、割愛します。
飯沼さんの曲への思い
最後に、飯沼さんのこの曲への思いを一部抜粋して紹介しておきます。
- 調や拍子、それにテンポなどの選択も楽曲の性格づけにとってはとても大切です。
その選択のヒントも実は原詩の中に潜んでいることが多い、と私は思います。 - 「句読点」と和声法上の「終止形」との関係については次のことを念頭に置いています。
「、」=「続く」感じ=半終止または偽終止
「。」=「終わる」感じ=全終止 - 詩の内容的な頂点と楽曲のクライマックスを合致させること、さらには、その場所をできる限り各部分の、あるいは曲全体の3分の2ぐらいのところに置くことができれば、造形上の美しさが確保できると思います。
- このような詩句の反復は原詩本来の形ではありませんが、音楽的造形の必要性があり、かつ、それによって詩そのものに根本的な不具合が生じない限り、許されることだ、と私は考えます(詩人によって許可しないということもありうるかもしれませんが…)。
詩句の反復は「落葉松」(S60高B女)でも見られますよね。
野上彰さんの8行の詩を作曲家の小林秀雄さんが詩句を反復させて仕上げています。
これもどうして反復させたのか、想像してみると面白いかもしれません。
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