『落葉松』― 落葉松林の霧雨の中、あふれる思いは❓美しい詩とメロディーを味わいたい課題曲 | Nコンブログ【NHK全国学校音楽コンクール合唱ファンブログ】

『落葉松』― 落葉松林の霧雨の中、あふれる思いは❓美しい詩とメロディーを味わいたい課題曲

昭和60年度高等学校の部課題曲B(女)

落葉松

作詞:野上彰、作曲:小林秀雄

 

青森県八戸市立根城中学校合唱部(女声合唱)による演奏

 

▲福島県立安積女子高校による演奏(昭和60年)

 

POINT合唱曲「落葉松」の意味・解釈は❓

 

 独唱曲から女声、混声合唱曲化へ

曲の生まれた背景を少し。

昭和47年に独唱曲として発表されました。YouTubeでもいくつか独唱版がアップされてますが、何度も聴き返してしまうほど聴き惚れる1曲です。

 

 

その後、昭和51年に女声合唱化、昭和59年に混声合唱化されました。
 

 

 曲が生まれた背景は?

作詞の野上彰さんは昭和22年秋、最も愛した軽井沢でこの詩を書きました。
 

落葉松の 秋の雨に
わたしの 手が濡れる

落葉松の 夜の雨に
わたしの 心が濡れる

落葉松の 陽のある雨に
わたしの 思い出が濡れる

落葉松の 小鳥の雨に
わたしの 乾いた眼が濡れる


昭和47年、この8行の詩に出会った小林秀雄さんが激しい感動を覚え、一気に作曲されたそうです。
出来上がった曲のイメージを、小林さんはこう語っています。
 

曲は高原の霧雨の中からやってくる。
やがて激しく心を揺さぶり、
再び高原の秋の、
雲霧の彼方へと去ってゆく―


“やがて激しく心を揺さぶり”とありますが、何が心を揺さぶったのでしょう。
詩の背景にある、軽井沢の秋を思い浮かべると見えてきそうです。

優雅な秋の光景を見せてくれる軽井沢。
そんな秋の軽井沢を雨の中、落葉松の林を、ひとり歩いている。

やがて秋雨の中で…

 

“手が濡れる”
 冬へと向かう雨の落葉松林の寂しげな姿
“心が濡れる”
 その寂しげな姿に一気に思い出が蘇る
“思い出が濡れる”
 その蘇った思い出に自然と涙があふれていた
“乾いた眼が濡れる”

 

この曲の中の雨は“霧雨”です。
何度も登場する“雨に”の表現は繊細な表現であって欲しいです。

しかも、心情の変化もあるので、“雨に”も表情が変わるはずです。
 

 

 演奏上の注意点は❓

冒頭の音源の学校の指導者である元・根城中学校合唱部顧問の竹内秀男先生が演奏で注意した点を見てみます。

 

  • ユニゾンで始まっているので、音色の統一を第一とする。私はひとりひとりの声調べに時間をかけてまとめてみた。
  • 音量的にもっとも山場となる「落葉松の小鳥の雨に」のフェルマータはその合唱団の発声・呼吸・表現力等すべてが見られるところであり、充分訓練したい。
  • 同じようなメロディパターンが繰り返されるので、数ヵ所にアゴーギクテンポルバート等の表現を入れてみると効果的。私は23~24小節の「私の思い出が濡れる」のあたりを工夫してみた。

※アゴーギク:わずかな速度の揺れ
※テンポルバート:流動するテンポ

 

この曲の指導の際に使われた指導語録もほんの一部紹介します。

  • 瞬間的に入ってくる休符というのは、そこのブレスも音楽にしてしまうのです。
  • 言葉のやりとりをもっときれいにしないと、かけ合いが美しく出ないですよ。だから自分が歌っていないところでも、相手のパートをいっしょに心の中で歌う。また、口ぐらいは動かしてもいいですから、いっしょにその音楽をつくっていくという考えをもって歌いましょうね。

 

参考文献

「合唱指導の実際と運営」竹内秀男著、1992年)


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