Lady Strawberry アパレル君 -72ページ目

第10話 寝技 前編

ペタしてね

詰まるところ、話はこうだ。

スリーピース編成バンドをやりながらホストをやっているイケメンの彼は、新しいギターを探している。

曲が作れて、動員数が見込めるから、俺と組みたいらしい。

目をキラキラさせて、イケメンが言う。

ニルヴァーナがやりたいらしい。

俺の代わりに、マツダが応える。

「兄さん、コイツは忙しいから無理だぞ。」

マツダの声に反応して、イケメンの連れが動く。

カウンターに4人並んで座っていたはずなのに5人いる。

入り口から、俺、マツダ、イケメン、エロマドンナ…マスター。

マスターは、俺とマツダにしかわからないように、背を向ける彼女の肩越しから、隙間だらけの胸元を覗き、髪の毛の匂いを嗅いでいる。

しかし、ひどい店だ。

俺は、カウンターから下がり、アイスコーヒーをドリップしている娘さんを呼ぶ。

「すいません、マスターが、アイスコーヒー作るの手伝いたいそうですよ」

カウンターに、マスターそっくりだが、可愛らしい笑顔の娘さんが顔を出す。

「あら、珍しい。手伝ってくれるの」

席を立ちあがり、掃除をしていた「てい」のマスターが、応える。

「タクヤとマツが、うちでバイトするってぞ!」

「あら、本当に」

苦笑いする俺に、睨みつけるマスターとマツダ。

「…バンドは嫌だよ。俺、最近はdizzy mizz lizzyの1stと、ドヴォルザークの家路なんかを聞いてるんですよ。クラッシックはわからないけどよいですよ」

「わからないですね」

「ニルヴァーナも、いいけど、コード進行が単調に感じてね。他の話は何だっけ?」

「夜の話です。」

「ヤバい話かな?」

「多分。」

ダイナーのマスターがグラスを拭きながら遠ざかる。元警察官は、ヤバい話には近づかない。

白い脚を組み替えながら彼女がタバコをふかす。

手足の細さで誘惑する女だ。

マツダは、ナプキンに長渕の歌の歌詞を書いている。こいつは、なんなんだ。

「聞いてもらえますか?」女は、杉本彩のような声。妖しく甘い声だった。

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