第9話 ガガーリン 後編
ダイナーに向かう間に、数台のパトカーとすれ違う。
日本平の入り口近くにあるダイナーは、不良が集まる喫茶店。
駐車場には、ウチヤマやパンクが、だべっていた。
ジュンが話かける「何かあったんすか?」
「いや、何もないよ」
マツダの派手に壊れた単車と、俺達を見て、マツダが背中からヌンチャクを取り出し、ウチヤマに放り投げる。
「それ、やんよ」どや顔で話すマツダに、ウチヤマは、笑顔で応えた。
「ジャッキーチェーンじゃないですか。…でも、いらないっす。」
「チェーンじゃなくて、チェンな」と突っ込みながら、ゴリラ達と喧嘩した事、シェルに突っ込んで死んだ中に、俺の友人がいた事などを伝えた。
「ところでカイチョウとゴッチ君は、いるかな?」
「今日は、来てないみたいです。」
「何か、タクヤさん尋ねて、沼津からビジュアル系が来てますよ。」
金のかかった沼津ナンバーの単車が二台あるなと確認し、店に入ると、カウンターの背中越しに、男前オーラを臭わせる色男と、バイブスに乗るようなキャバ嬢風の美女が二人座っている。
「タクヤさん、久しぶりです。」
…誰だろう。
すいません、申し訳ないけど、どこでお会いしましたっけ?
二人でウインナーコーヒーを飲んでいるカップル。
ウェッジウッドのカップが似合っている。
この店で1000円もするウインナーコーヒーを頼むのは、あまりいないはずだ。
マツダも、ウインナーコーヒーを笑顔で頼むので、俺も続いた。
店内なのに、ヘルメットを脱がないマツダは、ティアドロップ型のサングラスをつけながら、マスターに話かけた。
「ウインナーさんの一つは、上にぶっかかってる白い元気なトロトロさん多めで
御願いします」
マスターから、タオルがマツダの顔に飛ぶ。
「マツ…うまいな」
「ありがとうございます」
俺も娘さんに伝えた
「俺は、ウインナーの上のソレ抜きで」
「さて、沼津からわざわざどうしましたか?」
「実は、彼女は夜で、俺はバンドやってるんですよ。それで、御願いしたい事がありまして」
何だかな。
マスターから、抜きは、どっちだっけ?と問われると、マツダが、にやつく。
この店、やめようかな。

