夜明け前。 -164ページ目

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  夜明け前。





五月も最後の日になってしまって、もう毎日のように雨が降ってばかりいる。梅雨が、始まるよって、君が言ってたのを想い出した。今年も、また、そんな季節になってしまったんだなって、煙草を吸いながら僕はぼんやりと雨の空を眺めるんだ。あっという間に、さようならの日がやってきた。毎日顔を合わせてた日々は、物凄く輝いて見える。さようならだけど、ごきげんよう。って、あの人が言ってた。僕らは、これからだね。って、そうあの人に伝えると、なんとも言えないような顔で、笑った。毎日何してるのって、君は聴くけど、毎日僕だって何をやってたか、わからないくらい時間がただただ過ぎていくのを見つめてるよって言ったら、君は、そう。って寂しそうに言ったっけ。僕は、かたつむりになる季節なんだ。そして去年とは違う本当のかたつむりになってやろうって、そう、想ってる。夏が来るのを心待ちにしているあいつは、今頃何やってんだろう。あの日電話で言ってた事は、何だったんだろうって少しだけ思いながら、でも、あいつも元気で、僕は嬉しいんだ。






雨の、季節になっちゃったね。そう、君の好きな、雨の季節。僕も好きな、雨の季節が。







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  夜明け前。







咲き乱れる桜。散らないでって願う君の横顔が、あまりにも可愛らしくて抱きしめたくなったんだ。君は驚いた顔をしてたけど、何も言わずに、僕の胸に顔を埋めてた。4月最初の週末に、僕らは、一緒に桜を見たんだ。湘南の海と、芦ノ湖。そして桜並木と、松並木の国道1号線。今年は何度も海を眺めてる僕ら。そして、沢山の時間を一緒に過ごしてるね。君と過ごすあと残り少ない時間を。ねぇ。ずっと、ずっとこうしてられると良いのにね。だけど、うん。僕は、決めた。桜を見つめながら決心したんだ。うん、決心を、した。








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  夜明け前。




熱を帯びた身体。性器を包む細くてしなやかな指と舌。体液。吐息。鎖骨。重なり合う影。湿度。結ばれる運命だった僕ら。離れられないよ、きっと。ずっと。そっと優しく。強く。いつまでも。果てる事のない欲望。