黒田寛一が「戦術スローガンの革命性」をこれほどまでに重視するのはなぜなのか

 

 

  「時間がかかる」

 

 黒田寛一が「米・ソ核実験反対」——「このスローガンは、帝国主義ばかりではなく同時にスターリニズムの本質そのものの暴露と打倒にまでゆきつかざるをえない……」と言ったときには、どうも、相手としてスターリン主義者を念頭においているように思われる。もしも相手がごく素朴に「「米・ソ核実験反対」か。そりゃ、そうだ。俺も反対だ」、と応える即自的労働者であるならば、このように「ゆきつかざるをえない」というようには言えないからである。彼をして「スターリニズムの本質そのものの暴露と打倒にまでゆきつか」せるためには、彼を変革するための闘いを相当やらなければならないからである。

 相手としてスターリン主義者を念頭においていると思われるのは、次のような展開もあるからである。

 「今回のソ連核爆発実験の問題は、一九五六年のハンガリア革命と同様に、ふたたびすべての既成左翼を試練にたたせている。それに反対か否か? それは革命的共産主義者とスターリン主義者との分岐点をなす。まさしくこのゆえに、「米・ソ核実験反対」の反戦闘争を強力に展開することは、代々木共産党第八回大会前後から強制されて発生した、腐敗と汚辱にみちたスターリン主義戦線の流動状況にとどめをさし、それをわが革命的共産主義運動の強化と拡大の方向に転換していく契機たらしめなければならない。」(「現段階における反戦闘争とは何か?」黒田寛一『スターリン批判以後』(下)現代思潮社、362頁)

 この当時のスターリン主義者であるならば、マルクス主義の諸文献をそれなりに学習しているといえるであろう。そのような彼らとイデオロギー闘争をどうやっていくのか、という問題になる。

 実際には、当時のわが組織は、素朴な労働者や学生を広汎に「米・ソ核実験反対」の闘いに組織したのである。(奈良女子大学には、分派闘争時に20人のマル学同員がいた、ということである。2人の指導部がブクロ派にいっただけで、他のメンバーは「私の主体性をつくってくれなかった」と反発してすべて革マル派に結集した。しかし、1964年春に残っていたのは4人だけであった。)彼らをどうマルクス主義者に変革するのか、ということが問題となるのである。

 黒田が「戦術の革命性」を強調するのは、彼は、どうも、マルクス主義者=共産主義者へと早急に育てあげることができるのはほんの少数の学生であって、彼らを職業革命家にし、ほとんどの労働者や学生には革命的な戦術を主体化させ、あとは終生(学生は就職させて)、マルクス主義者=共産主義者をめざしてがんばらせる、という感覚を抱いていたからではないか、という気が私にはどうしてもしてくるのである。

 どこかに、労働者をマルクス主義者=共産主義者に育てるにはそうとう時間がかかる、というようなことが書かれてあった。

 

  われわれは、素朴な労働者をマルクス主義者=共産主義者に早急に育てることができる

 

 私は、そうは思わないのである。われわれは、バネのある素朴な労働者をマルクス主義者=共産主義者へと早急に育てあげることができる、と思うのである。しかも、わが労働者同志が自分の職場や他の職場の労働者を、ということである。

 われわれは、職場の労働者たちに職場での実践の意欲をつくりだし、彼らを組織して、一挙に左翼フラクションを創造しなければならない。そして、われわれは、左翼フラクションの会議において、みんなの実践をめぐって論議し、その実践の総括をほりさげるかたちにおいて、プロレタリア革命をどのようにして実現するのか、この革命の主体をどのようにして創造するのか、ということを論議するのである。これは、マルクスやレーニンやわれわれの本を学習するということではない。このような本は、読むべき課題として彼らにあたえて、自分で読ませるようにしなければならない。理論学習としてではなく、自分がどう実践するのか、という問題として、それを論議することが必要なのである。したがって、われわれは、自分が、実践上の問題をほりさげるかたちにおいて革命理論的なその内容を、その都度、A4一枚ぐらいの短い文章として書かなければならない。だから、われわれは、革命理論上のあらゆる問題について下向的に展開しなければならないのであり、展開する能力を自分が獲得しなければならないのである。

 われわれは、プロレタリア革命の実現を、その主体の創造を、左翼フラクションとそのメンバーみんなの自分自身の実践の問題として論議することをとおして、彼らをマルクス主義者=共産主義者へとたかめていかなければならないのであり、そうできる、と私は考えるのである。

 これを実現するためには、われわれは、自分自身の能力をたかめなければならない。自分にない能力を自分自身に創造しなければならない。

 自分にないものを、自分にはないと自覚して、自分自身に創造するのは大変なのである。自分にはないことからして、それがない、とは、なかなか自覚しえないからである。

 

 

 

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