まだ変質していなかった革マル派の時代に、私はみんな(他の組織成員)とのあいだに感覚的なちがいを感じた。みんなはどうも、相手の労働者あるいは学生を大衆運動(労働運動)の革命的展開(左翼的展開)の主体にする、というところで一段落する、一気に革命の主体にすればいいのに、と私はどうしても感じる、と感じたのである。みんなは、相手の労働者あるいは学生を、いったん大衆運動(労働運動)の革命的展開(左翼的展開)の主体にしたうえで・しかるのちに革命の主体にする、と考え実践している、というように感じた、ということである。

 私はマル学同(マルクス主義学生同盟)メンバーを一度に何人もつくったときに「粗製乱造だ」と言われたこともあった。そうは言っても、私は彼らを変革することを追求し、彼らに、自己の組織活動の反省と、自分の形成過程の捉えかえしとを、加盟決意書として書かせたのである。

 当時は、何が違うのかはわからなかった。

 今日的に言えば、次のようなことである。

 大衆運動の方針として最大限綱領(革命戦略)を提起するならば、それは最大限綱領主義という誤謬である。しかし、自分が大衆運動に決起させたメンバーに、ただちに「革命をやろう」と提起して論議し、彼を、プロレタリア革命を実現すると意志する人間に変革することは何ら最大限綱領主義という誤謬ではないし、そうすべきである、と私は考えるのである。

 社会民主主義者の当面する労働運動の方針を批判し、その根拠は改良主義にある、とあばきだして論議したときに、相手の労働者が、この根拠の暴露を「そうだ」と思うためには、われわれは、彼を、プロレタリア革命を実現する、という立場にたたせなければならないのである。改良主義とは、改良の自己目的化ということであり、改良と革命のあいだに万里の長城をきずく、というように特徴づけられるものである(これは、もうほとんどいなくなった、第二インターの流れをくむ日本型社会民主主義者のばあいだが)。この批判は、自分がプロレタリア革命を実現するという立場にたってはじめて、「そうだ」と思うことができるのである。彼をこの立場にたたせないで、この批判をやっていたのでは、彼は、改良主義なるものを解釈するという解釈主義者にしかならないのである。われわれは彼を解釈主義者に育ててしまうことになるのである。われわれは、組合の提起した闘いに決起した労働者にプロレタリア革命を実現するという立場にたつことをうながすために、社会民主主義者の方針を批判して、その根拠は改良主義にある、とあばきだすのである。

 日本共産党系の学生が提起した反戦闘争の方針を批判して、その根拠は二段階戦略にあるとあばきだしたのも、同じである。われわれが反戦闘争に組織した学生に、プロレタリア革命を実現するという立場にたたせるためにそうしたのである。

 むかし、むかし、私は、マルクス=エンゲルスの『ドイツ・イデオロギー』を読んで「共産主義的意識の大量的産出」が必要であり、それは革命の過程において実現することができる、そのためにわれわれ=この仲間がそれをやる組織になるのだ、と考えて実践していた。その本には、「打倒する階級は革命においてのみ一切の古い汚物をはらいのけ、新しい社会建設の能力が附与される」と書いてあったからである。黒田寛一の『現代における平和と革命』の「疎外された大衆を革命化(意識改造と人間変革による階級的自覚の獲得)し組織化し動員することこそが、問題なのである」(現行版では184頁)、というのを読んで、私は「エエッ」と衝撃をうけた。「革命の前に共産主義的意識を大量に産出しなければならないじゃないか。そんなことができるのか」、と。しかし、考えてみれば、私はあまかったのだ。共産主義的意識を獲得した人間を大量に産出し組織し動員しないことには、革命を実現しえないことは、明らかだった。「よし、やろう」と私は思いなおした。(もっと私が動揺したのは「プロレタリア世界革命の完遂への過渡期の固定化」と書かれていたことであった。「エエッ、誤ったスターリンが打ち倒されることなく、ここまできた、ということじゃないか。歴史の必然性は誤謬者の打倒と正しい者の勝利としては貫徹されないのか。ソ連の文献をすべて批判しなければならない。そんなこと、一生かかってもできるのか」、と思い、「僕が誤っても、是正されることなくひっぱってしまう、ということもありうる、ということじゃないか」、と恐怖したのだった。「ロシア革命が、孤立・後進・世界革命の遅延ゆえの早すぎた革命であってくれたら、どれほど心が休まることか」、と思ったのであった。——私は、ソ連の文献を批判したのは60歳を過ぎてからであった。)

 プロレタリア世界革命を実現するためには、われわれは自分が、プロレタリア世界革命を実現するぞ、と意志した人間を大量に創出し組織しなければならないのであり、そうなしうるだけの共産主義者=組織成員におのれを鍛えあげなければならない。われわれは、自己の小ブルジョア的残滓を払拭する、というようなことに拘泥しているわけにはいかないのである。われわれは、自己のあらゆる残滓や欠陥やまた弱さもろともに、自己の低い諸能力をうちくだき、あらゆる能力を格段にたかめなければならない。向上心あるのみ。こう私は思うのである。

 

 

 

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