わが「革マル派」中央官僚の御用学者・笹山登美子は次のように主張したのであった。

 「民族は非存在ではない」。「民族的対立とは、論理的に言えば、階級分裂という本質的矛盾が・現実的な諸条件のもとで現れでているものであって、仮象実在(シャイン)として存在しているのだ。」と。

 「現れでているもの」という表現はいかにもヘーゲル的である。これはヘーゲルの模倣である。というのは、ヘーゲルは『小論理学』において、「仮象」について次のように書いているからである。

 「現存在の矛盾が定立されたものが現象である。現象を単なる仮象(Schein)と混同してはならない。仮象は有あるいは直接態の最初の真理である。直接的なものは、われわれが思っているような独立的なもの、自己に依存しているものではなく、仮象にすぎない。かかるものとしてそれは、内在的な本質の単純性へ総括されている。本質は最初は自己内での反照の全体であるが、しかしそれはそうした内面性にとどまっていないで、根拠として現存在のうちへあらわれ出る。こうした現存在は、その根拠を自己のうちにではなく、他のもののうちに持つのであるから、まさに現象にほかならない。現象というとき、われわれは、その存在が全く媒介されたものにすぎず、したがって自分自身に依存せず、モメントとしての妥当性しか持っていないような、多くの多様な現存在する物を思いうかべる。しかしこの表象のうちには同時に、本質は現象の背後または彼方にとどまるのではなく、自己の反照を直接態のうちへ解放して、それに定有の喜びを与える無限の仁慈であることが含まれている。このようにして定立された現象は、自分の足で立っているものではなく、その有を自分自身のうちでなく、他のもののうちに持っている。神は、本質として、その自己のうちにおける反照の諸モメントに現存在を与えて世界を創造する仁慈であるとともに、世界を支配する力であり、世界が独立に現存在しようとするかぎり、その内容を単なる現象として示す正義である。」(ヘーゲル著、松村一人訳『小論理学 下巻』岩波文庫、56頁)

 わが御用学者は、ヘーゲルがここに言う「あらわれ出る」という論理を、「民族」や「民族対立」の把握に適用したのである。本質は根拠として現存在のうちにあらわれ出るのであって、このような・現れでているものとしての現存在である民族や民族対立は仮象実在として存在しているのだ、と。彼女は、ヘーゲルの本質の位置に階級分裂をおき、この本質が現存在のうちにあらわれ出る現実的な諸条件を「現実的な諸条件のもとで」という言葉で措定したのである。

 もちろん、彼女は、ヘーゲルのこの本を横におきながら当該の文章を書いたのではないかもしれない。もしもそうであるならば、ヘーゲルの論理と言い回しがひとりでに現れでるほどまでに、彼女の頭はヘーゲル的になっているということになる。当該の展開は神秘的なのである。階級分裂という本質的矛盾が・どのような現実的な諸条件のもとで・どのようにして民族や民族的対立として現れでているのか、ということを、彼女は何ら明らかにしないからである。

 しかも、この・現れでているものが仮象実在として存在する、というのは、まさにヘーゲル的である。唯物論の立場にたつならば、われわれは、実在するところのものを対象として分析することをとおして、この直接的なものを規定している根拠を本質としてつかみとるのであり、この本質的なものから直接的なものを捉えかえすのである。ところが、彼女は、本質が現実的な諸条件のもとで現れでているものが、仮象実在という実在として存在する、としているのである。これは、本質が現れでて実在をうみだし、このようなものとしての実在が現実世界として存在する、という論理なのである。ここでは、この本質は絶対理念のようなものになっているのである。彼女にとっては、階級分裂という本質的矛盾は、自己の観念世界のなかの理念のようなものとなっているのである。そして、彼女は、この理念が現実世界では民族や民族的対立として現れでる、とするのである。彼女の論述が神秘的である秘密はここにある。

 ヘーゲルにあっては、実在するものが神であり、神が実在するのである。現実の世界はこの神の化身である。神は本質として自己の諸モメントに現存在を与え、現存在のうちにあらわれ出て、世界を創造するのである。これと同様に、わが御用学者にあっては、自己の頭のなかの理念が、現実世界に現れでて、民族や民族的対立という仮象実在を創造するのであり、これが存在なのである。

 わが御用学者と彼女を笹大和巫女として神のお告げを聞く中央官僚にとっては、日本民族は、黒田寛一という神が現実世界に現れでているものなのであり、脈々として流れるヤポネシア人の血の現実態なのであって、おのれの心のよりどころなのである。それは、自己の内奥に棲みついているものなのであって、論証の対象ではないのである。ただ信じればいいのである。

 私はこれまで、わが御用学者の問題を唯物主義というように論じてきたのであったが、いま見てきた意味においては、彼女はヘーゲル主義そのものなのである。

 

 

 

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