ロッタ・コムニスタが強調する「労働者は祖国をもたない」という主張を否定するために、マルクスは「労働者は祖国をもたなければならない」と主張したのだ、と言いくるめるのに、当該の批判論文の筆者・笹山登美子は苦心惨憺である。

 そのために、彼女は、「各国革命のプロレタリア的な主体的推進構造を解明したもの」は、同じ『共産党宣言』のなかのマルクスの次の文章だ、とするのである。

 「ブルジョアジーにたいするプロレタリアートの闘争は、その内容からではないが、その形式上、最初は民族的である。いずれの国のプロレタリアートも、当面まず自国のブルジョアジーをかたづけなければならない。」

 彼女は、この文章を引用するだけで、この文章を自分はどのように理解したのか、ということは書かない。書くと都合が悪いのである。彼女は、自分を意図的にごまかしたのである。

 マルクスのこの文章を素直に読み、これを現代に適用するならば、ウクライナのプロレタリアートは、当面まず自国ウクライナのブルジョアジーをかたづけなければならない、すなわち、自国のこのブルジョアジーの権力たるゼレンスキー政権を打倒しなければならない、となるからである。マルクスは、「いずれの国のプロレタリアートも、当面まず自国のブルジョアジーをかたづけなければならない」と言っているのだからである。

 これは、いかにも都合が悪い。

 そこで、彼女は、マルクスのこの文章に直続しては何も言わないで、しばらく間をおいてから、この文章を「民主主義的任務の遂行からプロレタリア的任務の遂行へ」という展開にすり替えるのである。

 この句は、一見すると黒田寛一の論理的理論的展開を踏襲しているものであるかのように見える。だが、この句には、階級として組織されたプロレタリアートはみずからを支配階級にたかめるのだということ、すなわち——『共産党宣言』よりもあとのマルクスの言葉で言えば——プロレタリアート独裁権力を樹立するのだということ、これがない。この国家権力の問題を放擲したところの、「民主主義的任務の遂行からプロレタリア的任務の遂行へ」なるものの押しだしは、場所的弁証法を否定した単なる過程的弁証法の開陳であり、スターリン=ブハーリン的な二段階戦略のようなものの定式化以外の何ものでもない。

 かくして彼女は、中央官僚型二段階過程論の一段階目たる「民主主義的任務の遂行」として、「労働者は祖国をもたなければならない、労働者は他国からこの祖国を防衛しなければならない」という任務の遂行を基礎づけたのである。

 すなわち、マルクスの展開を、「いずれの国のプロレタリアートも、当面まず自国のブルジョアジーをかたづけなければならないのであるが、それよりもさらに前に、自国が他国に侵略されたときには、プロレタリアートは、自国のブルジョアジーにつき従って、祖国を防衛するために戦わなければならない、これが民主主義的任務の遂行なのである」、というように、彼女はこっそりと歪曲したのである。彼女は、自分が付け加えた後半をもって、マルクスの展開たる前半を否定したのである。

 これは、第二インターの社会民主主義者と同じ手口である。

 

 

 

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