いま多くの職場で、人員を大幅に削減し、現存する労働者たちに過酷な労働強度の強化を強いる、という攻撃がかけられている。

 こういう職場のなかの労働組合のない職場の一つで、現場労働者と同じように労働しながら指揮をとっている現場管理者が、労働者仲間をおもんぱかるというこれまでの態度を変えて明確に会社側の立場にたち、ガミガミ言って、労働者たちをメチャクチャに働かせはじめた、としよう。

 わが仲間は、これまではこの現場管理者に「会社に、人員を増やせ、と要求していこう」と論議してきたのであったが、彼は「会社は無理だと言っている」と言って耳をかさなくなった。わが仲間は、闘い方をかえなければならなくなった、といえる。

 この現場管理者は、労働者一人ひとりに、これをやれ、あれをやれ、そっちじゃなくこっちを先にやれ、そんなやり方じゃ時間がかかる、こうやれ、などなどと喚き散らしはじめた。わが仲間はこれに対応しきれなくなった。

 こういうときには、この現場管理者に「何か、今日は虫の居所が悪いですね。何かあったんですか」と言って、ニコッと笑いかける、というようなことが必要になるのだが、自分が生真面目であれば、なかなかこういう芸当はできない。そうすると、彼に指示されたことをやりながら、つまり手を止めないで、「私は機転が利かなくてうまくやれないんですけどね、こういうのはどうやればいいんですか、教えてもらえますか」、と言って、ごく普通の会話にもちこみ、喚き散らす相手の気勢をそぐ、というようなことが必要になるのである。

 すなわち、われわれは、相手が指揮をとる労働の現場そのものにおいて、この相手とたたかわなければならない、イデオロギー闘争を展開しなければならない、ということなのである。

 もちろん、自分がそれなりに力をもつならば、——すなわち、自分が、それなりに仕事ができ、職場の労働者仲間たちから相談されるというような関係をつくりだし、管理者たちとも迫力をもって話しすることができる、というようになれば、——いろいろとイデオロギー闘争のしかたはある。

 ようするに、勤務が終わった後や休み時間に、現場管理者や労働者仲間たちと、職場の現状を変えるためにどういうことを要求していくべきかというかたちで論議する、というイデオロギー闘争のしかたを、わが仲間は突破することが必要なのである。わが仲間は、労働の場面そのものにおいて、現場管理者が上級管理者の意を体して理不尽な労働を強要してくることをうちくだくためにイデオロギー闘争を展開しなければならないのである。

 さらには、次のようなこともでてくる。

 過酷な労働を強制されるという状況のもとで、職場の労働者の一人は、きつい仕事をわが仲間に押しつけ、そのメンバー自身はできるだけ相対的に体にこたえない仕事を選んでやる、という行動をとり、他の一人は、現場管理者の目を気にしてその意向にそうように動こうとする、という立ち振る舞いをした。これらの労働者たちを、わが仲間は、前者を、根性の悪い・こすっからい人間だ、と分析し、後者を、上司に取り入ろうとする人間だ、と捉え、彼らを毛嫌いする感情をもった。

 このわが仲間には、労働者はこのようなものなのだ、という感覚がない、と私には感じられる。自分が接している労働者は、年を食っているのであれ若者であれ、これまでの過酷な労働と理不尽な人間関係のもとで、このなかを生きぬいていくためにさまざまな処世術を身につけ、しぶとさと自分の身の守り方を心得ているのだ、という感覚の働かせ方がわが仲間にはない、と私は思うのである。わが仲間は、職場の労働者たちにたいして、彼らを純粋無垢な即自的労働者であるかのように感覚し、彼らをマルクス主義の理論でもって思想的に変革するのだ、というように接している、と私には思えるのである。

 だが、マルクス主義の理論を注入することによっては、彼らを変革することはできないのである。われわれが、上級の管理者たちや現場管理者に敢然と立ち向かい、彼ら労働者たちがこのわれわれに接して、「こんな人間がいるのか、こんな生き方があるのか、こんな人間になりたい」と感じないことには彼らを変革することはできないのである。われわれが、理不尽な指示をだす管理者の前に立ちはだかって彼ら労働者仲間をかばい、そうすることによって同時に、彼らの、自分だけが楽をするという行動や上司の目を気にするという立ち振る舞いを現実的にうちくだかないことには、われわれは彼らを変えることはできないのである。

 職場の労働者を、こすっからい人間だ、とか、上にへつらう人間だ、とかと感じて、このような人間ではなくその人間性においてもっとまともな・思想的に変革すればいいだけの人間をさがしたとしても、そんな労働者はいないのである。人間性という抽象性において素直でありつづけられるほど、この資本制的労働とこの資本制社会の社会的諸関係は甘くはないのである。

 自己でも、他者でも、人間変革は大変なのである。私はこう感じるのである。

 

 

 

 

 

 

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