「革マル派」中央官僚は、今日のロシアを支配するものを「権力者と特権支配層」と呼ぶ。この「特権支配層」という表現は、かつてわれわれがソ連のスターリニスト官僚を呼称してきた表現と同じである。スターリニスト官僚は生産諸手段を所有しているわけではなく、したがって「階級」ではなく「階層」であるからして、われわれは「特権官僚層」ないし「特権支配層」というように呼んできたのである。

 いま「革マル派」中央官僚が「特権支配層」という表現を使うということは、現在のロシアの国家権力を掌握するものを「ブルジョア階級」と規定するのを避ける、という意味をもつ。この表現には、今日のロシアはかつてのソ連と同じようなものだ、と言いくるめたい、という彼らの意図が透けて見えるのである。

 これは、みずからが発した「ロシアのウクライナ軍事侵略とは『私たちにとってのハンガリー事件だ』とうけとめないわけにはいかない」(「解放」第2784号、東海集会報告)というお告げをほんとうらしく見せかけたい、という彼らの思惑にもとづくのである。今日のウクライナでの事態を「われわれにとってのハンガリー事件だ」とするためには、今日のロシア国家をいまなおスターリニスト官僚が握っているかのように言語表現上で見せかけなければならないからである。

 「特権支配層」という表現は次の文章に見られるものである(「解放」合併号)。

 「……ロシアの労働者人民にむかって、「今こそ権力者と特権支配層への怒りに燃えて<ウクライナ侵略戦争反対―FSB強権型支配体制打倒>の闘いをまきおこせ!」と呼びかけたのである。

 同志黒田は、すでに二〇〇三年に、エリツィンに替わって大統領の座に就いていたプーチンの政治体制を「FSB強権型支配体制」と規定した。それは、スターリンの秘密警察=KGBの機構と手口を受け継いだFSB(連邦保安庁)、これを実体的基礎としてつくりだされた強権的=軍事的支配体制の謂である。このプーチンの権力は、たとえイデオロギー的にはスターリン主義とは無縁となっているとしても、スターリン主義ソ連邦の時代と瓜二つの強権的な統治システムにほかならない。この「FSB強権型支配体制」にかんする同志黒田とわが同盟の分析の先見性は、いま燦然と輝いているではないか。」

 ここで「燦然と輝いている」としている規定それ自体が、黒田寛一の規定を巧妙にセコく歪曲したものなのである。

 この文章をよく読んでみよう。黒田寛一の規定の紹介としては、何か変だ。実際には、黒田はどのように規定したのであろうか。『ブッシュの戦争』に、黒田寛一のノートが収録されている。

 プーチンの下院選挙での圧勝(二〇〇三年十二月七日)の報に接して、黒田はただちに、このプーチンのロシアにかんして「FSB(旧KGB)の強権支配体制=ロシア型国家資本主義の成立」と規定したのであった(「十字軍の犯罪または戦犯ブッシュ」二〇〇三年十二月九日朝執筆、『ブッシュの戦争』あかね図書販売、二〇〇七年刊、一九三頁)。

 もはや明らかであろう。現在の中央官僚は、等号で結ばれている・この黒田の規定から、その後半のロシアの政治経済構造の規定の部分、すなわち「ロシア型国家資本主義」という規定を切って捨て、その前半のロシアの支配体制の規定の部分、すなわち「FSB(旧KGB)の強権支配体制」という規定だけを自立化させたのである。

 こんなことをやるから、中央官僚はセコイのである。セコイ政治主義なのである。

 彼らは、なぜこんなことをやったのか。

 今日のロシアの政治経済構造を「ロシア型国家資本主義」と規定するならば、それは資本制政治経済構造の一形態であり、ロシアはすでに資本主義になっている、ということになってしまうからである。これでは、「プーチンの権力は、イデオロギー的にはスターリン主義とは無縁となっている」ばかりではなく、今日のロシアの経済形態は、スターリン主義とは無縁になっている、ということになってしまうからである。

 ここで、中央官僚の頭はくるくると回る。——

 これはまずい。これでは、「ロシアのウクライナ軍事侵略とは『私たちにとってのハンガリー事件だ』」とは、とても言えなくなる。これでは、ロシアのウクライナ侵略とハンガリー事件とは無縁だ、ということになってしまう。これはまずい、まずい。黒田さんの規定の「=ロシア型国家資本主義」という部分は隠してしまおう。前半だけを紹介することにしよう。——

 このようにして中央官僚がこしらえあげたのが、「スターリン主義ソ連邦の時代と瓜二つの強権的な統治システム」という像なのである。

 組織成員がこのような像を自分の頭に浮かべるように仕向けておけば、自分たちは「ロシアのウクライナ軍事侵略とは『私たちにとってのハンガリー事件だ』」と言いつづけ、下部組織成員には「若き黒田さんの『魂の転回』を追体験すること」以外のことには目を向けないようにさせておくことができる、というわけなのである。

 これが、中央官僚の面々の精神構造なのである。彼らの頭と心は、自己保身と自己保存の心情に満ち満ちているわけなのである。

 

 

 

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