黒田寛一は、「前衛党組織」ではなく「前衛組織」というあいまいな概念を設定した、というように『反スタ 2』で反省しているのであるが、それは、『組織論序説』における理論的解明を次のように問題にしたうえでその根拠として明らかにしているものである。

 「ここでは明らかに「前衛組織」は、いわば扇の要としての組織的地位があたえられ二重に規定されている——すなわちそれは、一方では前衛党の「下部組織としての政治的機能をはたす」ものとして、他方では既成諸組織の内部において「階級闘争を全体として左傾化し革命化してゆくための革命的分派組織としての役割をも、同時にえんじる」ものとして。今日的視点から表現するならば、前者は「前衛組織」の組織面、後者はその運動面である、といえる(第1図の1をみよ)。

 労働者階級の内部につくりだされ実存するとされている「前衛組織」は、さしあたりまず、直接には社共両党の組織の内と外にまたがってつくりだされる革命的ケルンとしてとらえられているがゆえに、既成指導部にたいしては「革命的分派組織としての役割」をえんじるとされているのであるが、しかしこの「分派」は既成左翼諸政党内の分派としてだけでなく、また労働組合内の革命的フラクションとしてもとらえられている。したがってそこでは、この両者(党内分派と組合内フラクション)の本質的なちがいはまったくとらえられていない。だから当然にも「分派闘争」ということも、党内分派闘争と組合運動における反幹部闘争との二重の意味でつかわれているわけである。」(『反スタ 2』227~228頁)

 この反省は、黒田が『反スタ 2』の段階で自分が明らかにした理論的解明の地平から見て、『組織論序説』の段階での理論的解明においては未分化なものをつきだす、というようになっている、と私は感じるのである。すなわち、後者の理論的解明は、その当時に実際のおこなっていた・どういう実践の理論化であるのか、ということが、私にはわからない、ということなのである。

 端的には、「社共両党の組織の内と外にまたがってつくりだされる革命的ケルン」とはいったい何なのか、革共同全線委員会(のちに国鉄委員会という名称になった)のことなのか、それとは別のものなのか、ということである。

 『ケルン』という雑誌は革共同国鉄委員会の機関誌であると私は思いこんでいたのであったが、四茂野修の本(『評伝・松崎明』)を読むと、どうもそうではなく、当初は日共系の学習会組織の機関誌として出発したようなのである。そのようなものとして、松崎明は学習会組織をつくったのだ、と思われるのである。そうすると、これは、黒田が「社共両党の組織の内と外にまたがってつくりだされる革命的ケルン」という表現でもってさすものとぴったりなのである。しかし、これは、松崎が日本共産党内での分派闘争を推進するためにつくったものとは思えない。むしろ、これは、松崎が若い国労組合員や動労組合員をわが前衛党組織の担い手へと変革するために彼らを集めてつくりだしたフラクションのようなものというべきであろう。

 そして、前衛党組織をなす全線委員会は、この学習会組織とは別に存在するであろう。そうすると、当時つかわれていたと思われる「革命的ケルン」という規定は、全線委員会をも学習会組織をもさすものとされていた、と考えられるのである。

 さらに問題となるのは「内と外」という規定である。ここで、「社共両党の組織の内と外にまたがって」といわれるばあいには、これは、社共両党のいずれかに加入しているメンバーといずれにも加入していないメンバーという意味だと思われる。

 「内と外」のこの意味と「「内部」の革命的ケルンは同時に「外部」に実存するのだ」というときの「内」と「外」の意味とは異なる。後者は革命的ケルンそのものの規定だからである。この「内部」を社共両党のそれと考えるならば、革命的ケルンは「内部」には実存していない。前衛党の成員の一定のメンバーが共産党に加入戦術をとっているのであるならば、その一定のメンバーが共産党の「内部」に実存しているというだけのことである。また、この「内部」を労働組合のそれと考えるならば、それの「内部」と「外部」というように問題をたてることそれ自体がおかしい。大衆団体である労働組合と前衛党組織とは組織形態として別なのであり、前衛党の成員が同時に労働組合の成員でもある、という関係をなすのだからである。さらに、この「内部」と「外部」を労働者階級のそれと考えるならば、よりいっそうおかしい。前衛党組織は労働者階級の「内部」に実存すると同時にこの階級の「外部」に実存する、と言いうるのであろうか。このように言うことそれ自体が、前衛党組織を労働者階級の外側に措いて両者を関係づけるものではないだろうか。

 レーニンが「外部」というばあいには、「労働者」の「外部」というように論じている。

 「階級的・政治的意識は、外部からしか、つまり経済闘争の外部から、労働者と雇い主との関係の圏外からしか、労働者にもたらすことはできない。」(『なにをなすべきか』121頁)というように、である。

 この展開については、われわれ前衛党とわれわれが働きかける対象をなす労働者との実体的対立を措定して、われわれ前衛党が労働者をどのようにして組織していくのか、という労働者の組織化の論理を解明するという問題として止揚すべきである、と私は考えるのである。レーニンが「外部」という用語を使っているからといって、このレーニンの規定を止揚するためには、われわれは「内部」と「外部」の論理を解明しなければならない、と考える必要はない、と私は思うのである。

 

 

 

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