レーニンが『なにをなすべきか?』を書いたとき、レーニンは「経済主義」者と対決していたのであり、当然にも彼らと対決すべきであった、といえる。「経済主義」者は、自然発生的に起ちあがり経済闘争を展開していた労働者たちにおもねているだけであった。その彼らを、レーニンは「自然発生性への拝跪」と批判した。彼は、この批判をさらに徹底的に貫徹し、ほりさげなければならない。そうすると、この「経済主義」者をその根底からひっくりかえすためには、経済的要求を掲げて起ちあがった労働者たちを、どのようにその自然発生性から脱却させ、どのように変革しプロレタリア的階級意識をおのれのものとさせるのか、ということを、自分自身が解明しなければならない。

 自分が対決している相手である「経済主義」者を「イスクラ」派の仲間へと獲得することが問題なのではない。自分の仲間である「イスクラ」派のメンバーたちを、「経済主義」者と対決しうるようにイデオロギー的に武装し、彼らを共産主義者として・前衛党組織成員として鍛えあげていくために、その徹底的な批判が必要なのである。そして同時に、起ちあがった労働者たちを階級として組織していくために、したがってまた、「イスクラ」派の組織成員へと獲得していくために、彼らを、どのようにして自然発生性から脱却させ変革していくのか、ということを解明することが必要なのである。

 だが、レーニンはこのように考えなかった。「専制の打倒」という階級的・政治的意識を前衛党が外部から労働者たちにもたらす、と考えたのである。しかし、「専制の打倒」というのは、ナロードニキ以来、ロシアの革命的インテリゲンツィアが営々とうけついできた政治的意識なのであり、それを実現するための運動は、イデオロギー的にマルクス主義的なものを少しずつ取り入れながら一つの潮流をなしてきたのである。レーニンはこの潮流のほうにのっかったのだ、と私は思うのである。

 この潮流の先頭を走り、マルクス主義をロシアに移植したプレハーノフにレーニンがそのまま学んだこと、すなわち、学ぶにあたってプレハーノフを徹底的に批判しなかったこと、このことが、レーニンが彼の独自の二段階戦略を定式化したことを根本的に規定しているものである、と私は考えるのである。

 レーニンがまだ十歳であった1881年に、ヴェラ・ザスーリッチは自分とプレハーノフらの仲間を代表してマルクスに手紙を送り、その返事をうけとった。だが、彼らはそれを理解することができず棚上げにしてしまった。彼らがそうしたのは、マルクスの返事の内容は、自分たちの・マルクス主義の受容の仕方と異なったからだ、と思われるのである。

 レーニンが『なにをなすべきか?』を書いた1901~2年には、プレハーノフとヴェラ・ザスーリッチはレーニンとともに、「イスクラ」の編集局員・すなわち・「イスクラ」派組織の指導部であった。自分の同志であり大先輩であるプレハーノフにレーニンが学ぶのは当然であるとしても、学ぶためには徹底的に批判しなければならない、と私は考えるのである。

 レーニンが革命の目的と手段を構想するときには、前衛党が一定の政治勢力にのっかり、戦略・戦術という指令を出してこの勢力をひっぱる、というように発想し考えることを基本とした、と私には思えるのである。

 では、黒田寛一は、みずからの解明した・プロレタリアの自覚の論理を前衛党組織論に貫徹し、そうすることによって同時に、組織戦術というカテゴリーを創造したのであるけれども、眼前の階級闘争にかんして考えるときに、はたして、レーニンのこの発想と考え方を克服していたのであろうか。

 2000年代初頭に、黒田がムスリムを支持すべきことを提起したときに、彼黒田は、イスラム主義への批判をまったくおこなっていない。「ヤンキーダム」論文では、書いてあるのは、イスラム主義勢力の主張の特徴づけと、その闘いへの「あだ花」という評価だけである。考えてみれば、イスラム主義者のイデオロギーへの批判の論文を書いたのは私だけであり、その論文一つである。黒田その人がイスラム主義へのイデオロギー的批判を書かないのでは、組織諸成員にイスラム主義への対決をうながし、かつイデオロギー的に武装することはできないのであり、そしてまた、組織諸成員と同じ職場の労働者たちを階級的に変革していくことはできないのである。黒田自身、われわれ前衛党が階級闘争を展開するということを考えるときには、わが組織が階級闘争にとりくむ、というように発想し考え、それに組織的にとりくむべき既存の左翼的な運動が現存在しないときには、なんらかの運動にのっかる、それに期待し尻押しする、というように頭がまわるのではないだろうか。

 われわれが労働組合の下部組織や組合のない職場でたたかうときには、われわれは、その場で・すなわち・われわれが実存する物質的諸条件のもとで、打破すべき傾向をもつ組合員たちや労働者たちのイデオロギーを徹底的に批判し、左翼フラクションのメンバーたちに彼らに対決する立場をつくり、イデオロギー的に武装し、階級的にたかめていかなければならない。そして、このことを基礎にして、職場の組合員たちや労働者たちを変革していかなければならない。ここに言う、対決すべき相手のイデオロギーとは、彼らの諸行動や彼らが口にする言葉や、彼らの・会社管理者や職場の組合員ないし労働者への相対し方、これらにあらわれており、これらを規定しているところの、彼らの感覚・考え方・生き方であり、その総体であるところのイデオロギーである。

 われわれは、自分が組合の下部組織の文書として書くばあいと、左翼フラクションの会議に提起する文書として書くばあいとを区別しつつ、この両方を内容的にほりさげ、形式上工夫することが必要である。

 

 

 

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