葉巻 | ぴいなつの頭ん中

ぴいなつの頭ん中

殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる



口の中一杯にこんなに苦味が広がるのにどうしてわたしは口にするのをやめられないんだろう

爪がわたしの思った色じゃない色に染まってゆく

今まで私が出会った

おんなじような爪をした人は

みんな世の中を辞めたような

それでいて

まだ何も知らないような

黒く塗りつぶされた目を持っていた

こんなふうになりたくないと

私が泣きながら叫んだ夢の中の瞳だ


渇いた舌に葉っぱの屑が乗る


小指の爪くらいの大きさになっても

まだ火を絶やすなと

燃やし続けていろと

消し潰すなと

その書物は捲れ上がりながら火の粉を巻き上げる

白と黒だった塊がなぜこんなに彩りをもって

命を持ったかのようにふわつくのだろう

飛んでゆきそうになるものを捕まえたくとも

火傷しそうで

手を伸ばすことすらできない


最後に焼け残る数行の糸をなんとかして編んでこの毛布が出来上がるのだろう

あたたかくて

本当に辛い時にしかもたらされない

期待など忘れてただただ跪いて祈るしかない時しかもたらされない

甘くてやわらかい毛布

それを辿ってきっとここまで来たのだろう

愛されようとなんて

評価されようとなんて

これっぽっちも思わない

甘くてやわらかい

近づいたら燃え尽きてしまうような素材で

そっと触れることを期待された素材で

愛しい愛しいと

口いっぱいの苦味にかたりかける

赤さも弱まりなめらかに働かなくなったゼツ(舌)が

飢え渇いて唾液のように煙を垂れ流す

愛しい愛しいと

口いっぱいの苦味を転がして慈しむ

チョコレートの味だなんて

その見た目通りの慈しみをどうして信じてしまったのだろう

子供のように純粋に

大人の私はその細くて太くてゆるされている

一本を手に取り火をつける

見咎められるのを恐れながら暗闇で

誰にともなく自由という強さを見せつけるように

(燃えているのはなんだったのか?)

(果たして目で見ることを肯定されるべきものだったのだろうか?)