あったかいポケットから出て来た
あったかい手のひらに包まれた
あったかい
キャンディ
は
いつでも大体溶けている。
包み紙にこれでもかというほどへばりついていてまるで食べられたくないみたいに。
なまぬるさが伝わって来てちょっと気持ち悪くなる。
知らない人の温度は気持ち悪い。
好きな人の温度はあたたかくて、少しでも触れていて欲しいと思うのに。
知らない人の温度は、どんなにあたたかくて優しくて心がこもっていても、どんなにちいさくても、気持ち悪い。
好きな人の温度なら、たとえ針の先ほどの面積でも、うれしいのに。触れる面積が小さすぎて、それがおもむろに痛みに変わったとしても。
口に入れてるうちに変な形にとがっていく飴が舌を刺すように、好きな人の鋒(きっさき)が心を刺しても、そこから流れるわたしと、流れてくるあなたがまざりあって、あなたにわたしの血が付くから、
うれしい。
たぶんわたしは、満たされることはない。