ねえ、ジョア、ねえ、
初めての外の世界はどう?
人の流れは早すぎて、時に追いつけなくなったりもするね。
ねえ、ジョア
君の持ち主は誰だったんだろう
こんなに甘くて可愛い君を置いて電車を降りてしまうなんて
こんなに甘くて可愛い君を愛したぐらいだから
たぶんとてもかわいらしいひとだったんだろうね
ストローについた噛み跡が愛されて飲み干されたあかしであるかのように君はこちらに自慢げに見せつける
ねえ、ジョア
外の景色は楽しいかい?
自販機で落ちてくるのは怖かったかい?
不思議の国のアリスみたいに、
新しい世界に行くべく選ばれて大きな穴を覗き込んだのだろう?
ねえ、ジョア
このままここにいても駅員さんに捨てられてしまう
わたしといっしょにいかない?
襟を削って、噛み跡だらけのストローの代わりに、きれいな水と小さな白い花を入れてあげる
ねえ、ジョア
ジョアは首をかたむけて、
知らない人には、ついていかないってママと約束しているから。
と、微笑んだ