旅に出る理由 | ぴいなつの頭ん中

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殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

いつも血が滲むほど噛み締めていたいし何もかもを切り取るように紡ぐように語るように大事にしたいけど、噛み締めすぎたら顎関節症になっちゃったし生きてるあいだのひとつひとつなんかすぐ忘れてしまうんだ、それはわたしがきっとほんとうのセックスもほんとうの死も知らないからだ、ほんとうの悲しみもほんとうの孤独も、ほんとうの幸福もほんとうの達成感も。なにが本当のことかなんてわからないし、他人よりもイージーモードでプレイしてはじめてなんとか階段をのぼっていける私なのでもうこれどうしようもないことなんだけど、私が疲れやすい原因は19歳でもうすでに年老いてしまったからなのであった。しかしマルグリット・デュラスのラ・マンは、ワタシハ17歳デ年老イタという書きだしから始まるためデュラスの経験にはきっと及ばない。早熟な人はいつだって羨ましさの対象だ。早く知れば知るほどその甘い果実のいちばんおいしい蜜を吸い尽くすことができるだろう。苦しみたいとか思う一方で優しくして欲しいと思う。好きな男に喧嘩やいたずらをふっかけ困らせて、仲良しのひとの苦しんでいるところを見て興奮するなんて、可愛さの欠片もないのにどうして可愛くないことばかりやってしまうのだろう?さばさばしたように見せたいなんて思ったことはない、可愛くあるのが難しいだけなんだ。かっこよくありたいとおもってもガラスについたこまかい傷みたいな誤算たちがぜんぶ隠してしまう。優しくありたいと思っても優しさは弱さになる。あっという間に濁って憎しみを抱いて生きることになるのはわかってる。どこにいったら目覚められるの?どこにいったら強くなれるの?どこにいったら慰められるの?困った人や餓えたひとを探して西へ東へ向かうけど疲れて帰ってきちゃうから雨にも風にも勝ったことはない。顔が汚れたら生きられないくせにヒーローを名乗るなんて私にはできない。新しい顔をくれる人を、帰れる家を、汚れた顔を拾ってくれるだれかを、きちんと固定で見つけなければきっといつまでもせっかくのマントを磨くだけ磨いて飛ばさずにシャワーカーテンとして使うだけ。もっと豚骨ベースで野菜たっぷりで麺はハリガネの熱くてこってりした人生がまた欲しくなったんだ。見つめてるあいだは空間はストップモーションなのだ、人生は映像ではない。いつのまにか死んでたいくつかの組織が滲出液を吐き出しきって新しいものに再生しようとしている。年老いたってまた生きれる。