なんてことないことだ、すべて。
私がやってることは裏切りではない、友達同士で手を繋いで何が悪いんだろう。女の子同士で愛し合って何が悪いんだろう。女の子同士で愛し合いたい人間のどこがそんなに怖いのだろう。何ごとも起こらないように、争いも起こらないように、わざわざ眠い目をこすって終電で帰るというのに、とっといたマシュマロは既に串にさされて灼かれて食べ尽くされたあとであった。ただし冷蔵庫の中のプリンを勝手に食べたからって誰も怒ったりしない。気づかれる前に、ごめんねってお詫びにもっと大きなデザートを買ってきたらそれで済むはなしなんだ。中古で売って、一年後そのまんま買い戻したハイアールの冷蔵庫はホールケーキをいれたらもういっぱいになってしまう。ご飯は凍らせて置いて明日起きたら食べればいいよね。しかし炊いてすぐに凍らさないと、ご飯そのものからでる水気で解凍したときにはすでにまずいご飯になってしまっている。こういうことはお父さんはちっとも教えてくれはしなかった。お母さんはそもそも全部凍らせたりしないでアクティブのまま食材を活用し、あとで耳打ちするような優しい人だったから、私は電子レンジというものを知らず、12歳のときにそれを初めて使ったのだ。代わりに買ってきた大きなデザート、彼は喜んでくれるだろうか。プリンの冷たさがかなしくなるくらい、あたたかくておいしい甘い安心をぎゅうぎゅうに詰めて作ってあげるからその優しさをきたなくしないような綺麗な言葉で話すから緊張しないようにするからどうかこないだ一緒におうちで観た歯ぎしりするようなかなしい映画のことは忘れて頂戴。いややっぱり忘れないで頂戴。血が流れてもびっくりしないし採血のときなんか血が流れてこないとびっくりするんだけどシリンジの中の空気を何度もぐりぐりしていたらこのなかにはヘロインが入っているんだってちっちゃい妄想の種が芽をふいてわらった。皮下脂肪の厚く血管の細い患者さんはぐりぐりを見兼ねて、あの男の看護師さんにやってもらいたいですって言った。隔離室のベッドのキャスターはいつだって困った顔をしてるように見えるのは多分、同業者に打ち明けた途端入院させられてしまうから私たちだけの内緒にしましょうね。この象徴界がいつ崩れるかわからないから、崩れたときはお父さんの名前をミタマにつけてあげてください。