第3話 脳天の一撃は心をも傷つける | ぴいなつの頭ん中

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殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

わたしは毎日自転車をこいで出勤するが、さむくて起きられなかった今朝は、出勤時間帯が小学生の通学時間帯とかぶった。

あーこれはまずいなという予感はしていた。小学生は一年生から六年生まで紙製の空気砲を腕につけていた。

あっと思った瞬間にわたしの鼻歌が漏れた。鼻歌の源泉であるわたしの鼻のほうを、一億の紙製空気砲を装備した小学生の腕が一斉にねらう。

すぱぱぱぱん

わたしは撃たれてその場に倒れた。足に自転車が絡まって、撃たれた衝撃よりもそっちのほうがなんかじわじわ痛い。

向こうの国では天気の変化でぜんぶが流されて、フランスのメディサンズフロンティエールが目のきらきらしたこどもたちを診察している。わたしもわたしの診察に行かなくてはならない。患者さんが待っている。外来は8時から年寄りどもがならんでいる。ラーメンかパチンコかとでもいいたげな行列だ。今日はおいなりさんを買って仕事に行こう。倒れているどころではないのだ。

わたしを撃ったのは紙製空気砲ではなくて小学生たちの無関心だった。一瞬だけ武器をこちらに向けたあと、撃たれることを楽しみなほどにぴりぴり期待していたわたしを裏切り、かれらはまっすぐ前をむいて歩いて行った。何もなかったかのように一億の無関心が一斉にわたしに向けられた。わたしは無関心の、からの視線に全身を撃ち貫かれて倒れた。わたしを見てからかっておもちゃの空気砲で撃っておいかけっこして笑って遊んでまた次の日も同じ場所で遊ぶ約束をして17時になったらお家に帰って。。。。。。

わたしはそういう幸福で何も考えない青春の日々とそれを贅沢によごしむだづかいしながら謳歌するかれらから無視されたのだった。

小学生が贅沢にふみしめた落ち葉のくさるアスファルトをわたしはなかなか起き上がれはしなかった。おいなりさんを食べながら診察をつづける、小学生の頃にひたすら夢見た自分の姿は小学生の目新しい駿足にふみしだかれてぱらぱらになってシルバー人材センターのおじいさんに掃かれて捨てられた。