「マイク・ミルズのうつの話」アップリンクにて | ぴいなつの頭ん中

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殻付き。そにっくなーすが言葉を地獄にかけてやる

マイクミルズのうつの話、観にいきました。アップリンクにて。

まず受けた印象。うつの人ってやっぱみんな、けっこうまじめだということ。だから自分の病状にたいし、すごく色んな対処方法を考えてがんばってるということ。

また、抑圧、圧力を嫌う一方で、自分で自分を抑圧しちゃっている人が圧倒的に多いということ。これがでかかった。抑圧しなくていいとこで自分を押さえ込んでいる、もしくは押さえ込まずにはいられない状況下にあったひとたち、というイメージだった。

短パンハイヒールのケンさんは自由に生きているようで世間のノイズもきっと聞こえていると思う。嫌われたくないと思っている彼。異常にハキハキしている彼。幸せを演じているんじゃないかとか思ってしまう。好きなように生きるんだ!ってことに、抑圧に似た強いこだわりを持っているように見える。

ミカさんは、すごく解放されたいひとなんだなと思った。どこまでも強い人であろうとしている印象。死にたいというより消えたい感じがする、っていうことにすごく共感。わかる。うつがひどくなると消えたくなるんだ。あと薬からだんだん離れていきたいっていう思いもすごくよくわかる。薬ないとだめになるってことは人間として自由じゃなくなる気がするんだよね。そういう思いで断薬するひとけっこういるんではないかしら。

カヨさんはアピールをしたいんだと思った。すごくさみしくて、つらくて、ダメダメだって言われて育ってきて、誰かにまるっと受け入れて欲しいんだ。愛して欲しいんだ、と思った。愛を補充するためにペットの犬と一緒に暮らすし、仕事場の先輩にむちゃなことを言ったりするんだ。わたしにも同じような面がないとは言えないから見ててつらかったけど、そのアピールを単に甘ったれた依存だとは言い切れなかった。

タケトシさんの記録はすごいなと思った。自分をたしかめるため、体調の比較をするため、つねに記録をかかさない。テレビを見れた、ということも、何かできたということとして大事なことである、という彼。うつがひどくなってなにもできなくなったつらい日々があったからこその言葉。このひとのうつへの対処方法はいちばん徹底していたね。

「自分の生きていた記録を残したい」って言ってたダイスケさんにはらはらした。そのままほろりと死んでしまいそうなはかなさがあった。バーで見せたあの素敵な笑顔も、クッソきたない部屋も、かたそーな頭も、ぜんぶ受け入れて愛してくれる人がいればあの人はすこし軽くなるんじゃないかと貧弱なことを思った。

まだまだ思うところはある。日本にうつという概念を、抗鬱剤という薬と優しげなCMによって持ち込んだグラクソ・スミスクラインについてマイクミルズはどう思ってるんだろう?

「原爆を落としてきたアメリカをかんたんに許して尊敬するような無邪気で真面目な国民、naiveな日本人に抗鬱剤などという逃げられないクスリを覚えさせたことを疑問視し、暗に批判している」みたいな構図に見えてしまうのはわたしの単なる被害妄想なのだろうか?

これを、病院にかかったことのない非患者さんは見たらどう思いどう感じるのだろう。患者さんはけっこう共感できたりびっくりしたりできて参考になりそうだけど、実際見たらどう思うのかとても気になる。
これに出演することを許可するということは、取り上げられた彼ら5人は回復期にある人なんだなっていう先入観があった上で見たから、入院中とか真っ只中の人、回復に向かいかけの人はどう感じるのか、うちの病棟でも観てもらいたい。そしてどうおもったか、教えて欲しい。