「未来のイヴ」 | ぴいなつの頭ん中

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ヴィリエ・ド・リラダン「未来のイヴ」読了。
ずっとわくわくしっぱなし。
旧漢字で歴史的仮名遣いだけど全然読みにくくなかった。むしろその旧くささが可愛らしくうつる綺麗な翻訳でした。

人間と機械の違いは?
機械は恋愛という心ですることにおいて人間のかわり以上になりうるか?
こいのなやみは科学で解決できるのか?

以上の答えが全部ここに載ってる。手塚治虫のメトロポリス(「おそらく人間は発達しすぎた科学により自らを滅ぼすのではないだろうか」という衝撃の予言で終わる。名作漫画。)とはまた違った、ロボットと人間のあいだのとらえかた。

男性を酔わせる小悪魔的美少女(人間)の仕組みについて解説したかと思えば、未来のイヴとなる人造人間、人型の存在の「理想」的存在「ハダリー」がどうして動いて、どうしてしゃべれるかまでをも子細に描写されてるのでかなり内容てんこ盛りでした。

電気学者のエジソン翁が、やたら女について語っちゃうのがなんていうかこのひとどんな恋をしてきたんだろ?って思っちゃう。
小悪魔な女は他の女よりも愛されたいってことばっかり考えてるんだ、とか、恋人同士の間では新しいことを知れば知るほど夢がなくなってきてつまんなくなる、とか。
ひいては、どんなに美しい女でも、中身が卑俗であればその美しさは体に生じた畸形みたいなもので、その女にとって美しささえも害をもたらしかねないものでありうるんだとか。

女の子は可愛ければなんとかなるって思ってた私にはショッキングでした。笑

科学のすきまに霊魂がゆらめいているこのバランス感も幻想的で素敵だった。
映画「イノセンス」冒頭にリラダンの引用出てくるんだよね。そしてソワナって名前も出てくる。
草薙素子は、人造人間ハダリーのずっとずっと妹なんだ。
ハダリーに未来があるならきっと、素子のように自我とアイデンティティについてもっともっと考えるようになるだろう。
ハダリーは恋人としてつくられた人造人間だから、彼が認めてくれさえすれば自分の存在を確信できる。
彼が認めてくれなければ彼女は棺に入ったまま。
人間でもそういうことあると思うんだけど、特定の誰かが認めてくれなければ生きられないなんてもったいないよな。
うまく言えないけど、誰かのなかで生きる自分と、今生きている自分がいっこだけじゃだめだと思うんだ。

エジソン翁は彼女の次に何を作ってくれるのだろう?
ボードレールと同様、時代の寵児になれなかった、パリにもなじめなかった、残念なリラダンさんは現代の人と機械を見たらなにを思うかな。