中耳炎といえば小さな子供がよくかかる病気です。
お医者さんにいくと、かなりの確率で抗生剤を処方されます。
ただ、昨今のネット社会の影響か「抗生物質は中耳炎にはあまり意味がない」だとか、逆に「子供の健康に悪影響を与える」さらには「抗生物質は絶対にとっちゃいけない!」と言う声を頻繁に聞くようになりました。
この手の話は世の中に腐る程ありますが、この件に関してはゼロか百かで判断できるほど簡単なものではないでしょう。
もちろん、どんな薬にも副作用はありますし、抗生物質だって下痢、嘔吐、発疹、耐性菌の問題などむやみやたらに摂取するものではありません。
あるリサーチペーパーによるとおよそ80%の急性中耳炎は自然治癒するのに対して、15%弱は抗生物質の投与が効果的だったという報告があります。
このリサーチペーパだってどこまで信用できるか疑問ですが、いずれにしても細菌による中耳炎には抗生物質は効果があるのは事実です。
じゃあ、抗生物質が必要なケースとそうじゃないケースの明確な違いを見分けるためにはどうしたら良いか?残念ながら現状では経過を観察しながらケースバイケースで対応していくしかありません。
医師であり自然療法の第一人者でもあるアンドルーワイル博士は著書の「Spontaneous Healing」で「抗生物質は確かに細菌の数を減らすためのサポートはするけど、細菌自体にとどめを刺すのは人間の持つ自然治癒力である」と述べています。
ですから仮にアンドルーワイル博士の言っていることが正しいと仮定して、最終的には中耳炎を治すのも、そもそも中耳炎になるもしくは再発を防ぐために大切なことは、自然治癒力のパフォーマンスをできる限り高めておくということが重要になります。
そこでオステオパシーが中耳炎の患者に対して何ができるのか?
そのためにはまず、生理解剖学的に中耳炎とは何ぞやということを理解しなければいけません。
中耳炎とは、中耳と呼ばれる鼓膜の内側にあるスペースとそこから鼻咽頭につながる耳管と呼ばれる管の中に膿や滲出液がたまり、炎症を起こした状態をいいます。
そして、この耳管は頭蓋骨の内部にある2種類の小さな筋肉の作用により収縮します。また、耳のすぐ後ろ、側頭骨の茎状突起につながっている胸鎖乳突筋、顎関節やそれに繋がる筋肉、舌骨とそこにつながる筋肉など中耳の内圧や液体貯留に影響する構造も非常に重要です。
また、中耳や鼻腔を含む上気道は背中の上部(T1-T4)にある交感神経によってコントロールされています。後頭部の付け根から分布している副交感神経も顔面神経、翼口蓋神経節を通して中耳と繋がっています。そのため中耳炎になると後頭部や首の上後部、第一肋骨周辺に圧痛点が現れます。
さらに、耳や頭部周りのリンパ液は、胸郭入り口を通過し、胸管と右リンパ本管にたどり着いた後、最終的に静脈へと戻っていきますが、このリンパ液のスムーズな流れは免疫系に大きな影響を与えます。
このようにオステオパシーでは神経筋骨格系の見地から血流やリンパ、神経伝達に影響する骨格や筋肉、さらには自律神経系のバランスを調整することによって患者の自然治癒力のパフォーマンスを高めていきます。
そして血流やリンパ、神経伝達の流れを調整すると言うことは、すなわち体全体を見ていくことになり、場合によっては耳の周辺だけでなく、首、背中、肋骨、腰なども治療の対象部位になることは珍しくありません。
これがオステオパシーで言う、ホリスティック(全体的)な見地で自己治癒力を最大限に引き出し、結果として局所だけでなく体全体の不調を改善することになります。
オーストラリアでは抗生剤を出して欲しいと言っても、なかなか首を縦に振らないドクターは多く、代わりに代替療法を進めるケースも少なくありません。
残念ながら、日本のお医者さんは非常に多忙で、なかなか患者一人一人に時間をかけていられないですし、患者自身が薬を求めているという現実があります。
日本でも、代替療法に対しての理解と知識があり、かつ患者の話をよく聞いて安全で適切な方向へ導いてくれる医師が増えることを切に望みます。
追記:よく薬は絶対取らせたくないと痛み止めも飲まない方がいますが、痛みで精神的にも辛い状況が続くと、上で述べた神経筋骨格系にも悪影響を与えますので、程度によっては痛み止めを活用する方がリスク回避につながるケースもあります。自然療法はあくまで治療の選択肢の一つで万能ではありません。現代医学とのバランスを取りながら総合的にリスクを減らすバランス感覚が大切です。




