子どもに強く怒ってしまった夜。
「どうしてできないの?」
「あなたのために言っているのよ」
そんな言葉を口にしたあとで、
「もしかして、私も毒親なのではないだろうか」
と不安になったことはないでしょうか。
SNSや本で「毒親」という言葉を見るたびに、自分の言動を振り返り、子どもを傷つけているのではないかと自分を責めてしまう。
でも、ここで一度、
「私は毒親なのか、そうではないのか」
という二択から離れてみてほしいのです。
大切なのは、自分にラベルを貼ることではなく、
「なぜ私は、あのときあんな言い方をしたのだろう」
と、その背景を見ることだからです。
子育てをしていると、自分が育てられた記憶が出てくる
子どもが宿題をしない。
言うことを聞かない。
学校に行きたくないと言う。
そんなとき、頭では怒らないほうがいいと分かっているのに、
「ちゃんとしなさい」
「みんなできているでしょう」
「そんなことでどうするの」
と、自分が子どもの頃に言われて嫌だった言葉が口から出ることがあります。
そしてあとから、
「母に言われて嫌だった言葉を、私も言っている」
と気づく。
でも、これは意志が弱いからとは限りません。
人は、子どもの頃から何度も見聞きしたものを、人との関わり方の「型」として身につけていくことがあります。
家庭の「当たり前」は、無意識に残る
「迷惑をかけてはいけない」
「親の言うことは聞くもの」
「失敗してはいけない」
「弱音を吐いてはいけない」
家庭の中の価値観は、「これは家族独自のルールです」と説明されません。
当たり前の空気として存在します。
だから、自分が疲れていたり、不安になったり、余裕を失ったとき、昔から知っている反応が出てくることがあります。
普段は優しくできても、強い不安を感じた瞬間だけ親と同じ言葉が出てしまう。
そこには、そんな背景があるのかもしれません。
「毒親かどうか」より見てほしいこと
大切なのは、
自分がどんなときに子どもをコントロールしたくなるのかを見ることです。
子どもが失敗しそうなとき。
周囲からどう見られるか気になるとき。
自分の期待した道から外れそうなとき。
そこで強い不安が出るなら、
「子どものため」だけではなく、自分自身の古い経験が反応している可能性があります。
自分も失敗を許されなかった。
親の期待に応えることで認められてきた。
迷惑をかけないことを強く求められてきた。
そうした経験があると、子どもの自由な行動を見たとき、自分の中の不安まで一緒に動くことがあります。
親子二人だけを見ると分からないこともある
ここで少し視野を広げてみます。
自分と子ども。
自分と親。
さらに、親と祖父母。
母親も「ちゃんとしなさい」と言われて育ったかもしれません。
父親も弱音を吐けない家庭で育ったのかもしれません。
祖父母の時代には、
「親はこうあるべき」
という価値観が、今より強かったかもしれません。
個人の性格だけではなく、
育った環境。
親子関係。
時代背景。
家族の中で受け継がれてきた価値観。
そうしたものが重なって、今の自分があります。
だからといって、
「家系のせいだから仕方がない」
ということではありません。
どこから来た反応なのかが分かれば、そこで初めて選び直すことができます。
「気づいた」ということ自体が変化の始まり
「親と同じことをしてしまった」
と気づくと、苦しくなることがあります。
でも以前は、その言動を「普通」だと思っていたかもしれません。
今は、
「これでいいのかな」
と疑問を持っている。
この違いは大きいものです。
家族の中で何かが繰り返されるとき、流れが変わり始めるのは、
誰かが「これは本当に続けたいものなのだろうか」と気づいたときです。
完璧な親でなくても、関係は修復できる
親であっても、人間です。
疲れる日もあります。
感情的になることもあります。
言葉を間違えることもあります。
大切なのは、一度も間違えないことではなく、
間違えたあとにどう向き合うかです。
「あの言い方はよくなかった」
「本当は心配だった」
「あなたが悪かったわけではない」
そう伝え直すこともできます。
子どもに何か言いたくなったとき、
「これは本当に子どものためだろうか」
「それとも、自分の不安を消したくて言おうとしているのだろうか」
「この言葉は、昔誰かに言われた言葉ではないだろうか」
と、一度だけ問いかけてみる。
そのわずかな間が、今までとは違う選択をする場所になります。
「自分も毒親かもしれない」
という不安は、自分を責めるためだけにあるのではないのかもしれません。
それは、
自分と子どもの関係を、これまでとは違うものにしていく入口
にもなります。
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