大宮さんの恋物語です。
毎日20時更新予定です。
ではでは・・・どぞ・・・。
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Side.O
今日は個人の仕事。
雑誌の取材の日だった。
いろいろと話を聞かれ・・・グラビアの撮影もあるんだけど。
俺は・・・早く帰りたくて。
うずうずしていた。
だってニノが一人で家で寝ているから。
とにかく早く帰りたかった。
今朝は。
シルバーウルフがニノが病院へ連れて行ってくれた。
そしてついさっきうちのマネージャー経由で連絡が来て。
風邪のようだけど・・・ウイルス性ではないらしく。
うつる心配はない・・・と教えてくれた。
ならば早く帰って看病したい。
俺は。
指定された衣装へ急いで着替えた。
とにかく。
少しでも早く。
家へ帰りたい。
昨夜。
調子が悪そうにしていたニノ。
案の定・・・ソファに座ったらそのまま寝てしまった。
少し顔が赤く・・・呼吸が荒いのが気になり。
おでこと首筋に触れると・・・感じる少しの熱。
一瞬の躊躇もなく。
すぐに抱え上げた。
男にしては軽くて・・・でもしっかりと重みは感じ。
なにより・・・ニノの全てを抱えているこの感じが。
頼られているようで心地よくて。
このままずっと・・・腕の中のニノを見つめていたい衝動に駆られる。
抱えたまま立ち尽くし。
そのつやつやの肌やくっきり黒くて長いまつ毛。
少し開いた・・・ツンとした上唇とか。
しゅっととがった顎のライン。
胸の上に無造作に置かれたぷっくりとした手とか。
服の袖口から見える白い腕。
普段あまりじっくりと見ることができないニノのパーツに目を引かれる・・・けど。
早く楽にしてあげなくちゃ・・・・と思い動き出す。
ニノを抱えたままソファやテーブルを避け寝室に向かうと。
少し乱暴に扉を蹴り開け。
でもベッドへは・・・そっと。
まるでガラス細工を置くかのように・・・ゆっくりとニノを横たえた。
そのあと。
ヨーグルトを食べさせて。
市販のだけど薬を飲ませた。
でもまたすぐに眠ってしまったから。
俺は・・・寝室を後にした。
それにしてもあの・・・女装というセリフ。
俺も言うのは嫌だったけど。
ニノも意外にも気にしていることがわかって。
つい・・・本音が出た。
女装しろなんて言わないし。
誰にも隠さないよ・・・という本音。
撮影中はショックを受けた顔をしていて。
演技にしてはリアルだな・・・と思っていたけど。
本気でショックを受けていたのか・・・。
具合悪いのに・・・そんなこと思っていたのかと思った。
演技とリアルと疑似がごっちゃになっているかもしれないけど。
もうそんなの関係ない。
ただただいじらしくて・・・ますますニノを愛おしいと思えた。
こちらへお願いします・・・と。
写真スタジオへ招かれる。
そこで。
ポーズの指示を受けながらも。
俺の頭の中はニノでいっぱいだった。
多忙だから。
心配になる。
今日休めたのはラッキーだ。
なんとか・・・今日一日で治ればいいんだけど。
帰ったらおじやを作ってあげよう。
・・・いや。
具合の悪い時はおかゆか・・・?
そもそも。
おかゆとおじやの違いがよくわからない。
あとで調べよう・・・と。
俺は忘れないように。
写真を撮られながら脳内で。
「おかゆおじやおかゆおじや」と繰り返していた。
結局・・・ちょっと押してしまい。
予定時間よりも1時間遅く俺はスタジオを出た。
帰り際・・・買物をするためにスーパーに立ち寄ってもらい。
夕飯の買い出しをする。
とにかく栄養があって胃に優しい食べ物。
結局。
おかゆとおじやの明確な区別は。
読めば読むほどよくわからなくなったけど。
病人にはおかゆを・・・と書かれていることが多かったから。
米から作るおかゆを作ることにした。
果物も・・・・おいしそうなものを探し。
いろいろチョイスし・・・どっさりと買うと。
車に乗りこむ。
・・・と。
マネージャーが誰かと電話している。
俺を見て・・・代わって・・・とスマホを差し出す。
電話の相手は。
シルバーウルフだった。
『お疲れ様です。大野さん。』
「お疲れ様です。」
『すいませんこのたびは。ご迷惑おかけして。』
「いえ。全然大丈夫です。気にしないでください。」
『あの・・・それで。うちの二宮のことなんですが。』
「・・・はい。」
『うちの』という言葉に引っかかる。
当然と言えば当然なんだけど。
はい・・・と言う自分の声に硬さが混ざったのがわかった。
つづく