大宮さんの恋物語です。
毎日20時更新予定です。
ではでは・・・どぞ・・・。
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Side.O
おかゆを持った松潤が。
ニノの部屋へと入って行く。
相葉ちゃんはすでにドライヤーを持って部屋に入っている。
中から・・・にぎやかな声が聞こえてくる。
俺は。
・・・。
・・・。
どうにも・・・何もすることがなくて。
せっかくだから・・・と。
松潤が作ってくれたつまみを。
立ったままキッチンで食べ始めた。
酒は飲む気になれず。
かといって米を食べる気にもなれず。
テレビもつけずスマホも見ず。
キッチンに立ったまま。
ただひたすらに・・・鮭と豆腐と向き合いちびちびとつまんでいた。
行儀が悪いのはわかっている・・・けど。
今日は・・・今はこんな気分。
お皿も持たず。
左手をキッチンにつき・・・下を向いてただただ機械的に箸を上下させ口へと運んでいた。
ニノは。
大丈夫だろうか。
心配だ・・・。
そうだ。
せめて声だけでも・・・と。
箸を持ったまま・・・ニノの寝室の前まで行ったけど。
急に・・・三人の笑い声が聞こえてきて。
・・・。
・・・。
ああ・・・なんか。
ニノも笑えているなら。
俺なんかがジャマしちゃ悪いな・・・と思い。
相葉ちゃんと松潤といて楽しいなら。
気を遣わずいられるなら。
その方がいいのかも・・・と。
そう思い。
そっと引き返した。
蚊帳の外。
疎外感を感じる。
おいしいはずの食事も。
あまり味を感じない。
ニノのことは心配している。
でも。
一番近くで心配できないことが。
それが・・・すごくつらくて。
切なくて悲しくなってくる。
疑似恋愛。
スタッフや監督をだますための偽の付き合い。
思い出したくなかったけど。
ニノとの関係を。
いやでも思い知らされる。
はぁ・・・と大きため息を吐いて。
俺はまた・・・ちまちまと食べ始めた。
かなりの時間・・・二人はニノの部屋にいて。
俺は・・・食べ終わった食器をキッチンで洗い片づけ。
それでもまだ・・・酒を飲む気にはなれず。
テレビもつけず。
ぼんやりと・・・ソファに座っていた。
いつもなら隣にニノがいるのに。
一緒にテレビを見て。
飲んで。
やいのやいの言いながら・・・録画していたドラマやバラエティを一緒に見ているのに。
一人・・・ということ。
ニノがそばにいない・・・ということも寂しいけど。
もちろん体調も心配だけど。
なにより。
一番近くにいるのが俺じゃなくて。
あの部屋に。
松潤と相葉ちゃんがいて。
ニノが甘えているのかと思うと。
嫉妬なんて・・・できる立場じゃないのはわかっているけど。
それでも。
妬いた。
少し前なら。
こんな感情もなかっただろうに。
一度・・・ニノのそばにいてしまったから。
近くにいたから。
俺の方がニノに近い・・・なんて考えがグルグルしてしまう。
疑似恋愛のくせに・・・だ。
・・・。
・・・。
はぁ・・・と深いため息をつく。
ニノが苦しんでいるのに。
俺は自分のことばかりだ。
どれくらいしたか。
2人が・・・出てくる。
そっと・・・静かに出てくる姿を見て。
ニノが寝たんだろう・・・と察した。
「大野さん。遅くまですいません。お邪魔しました。」
「いや・・・ニノは?」
「寝てます。多分明日の朝には治ってると思います。」
「そう・・・それならよかった。」
「あいつ。大野さんに迷惑かけてません?」
「いや・・・全然大丈夫だよ。」
「ホントですか?なんかニノちゃん。大野さんに甘えてるみたいで。」
「・・・ぇ・・・?」
「言うんですよ。俺たちに『帰れ』って。」
「・・・帰れ・・・?」
「そうです。大野さんに看てもらうから大丈夫だって。」
「・・・。」
「いやいやいやダメでしょって。そんなの迷惑だからって。」
「・・・。」
「そう言ったんですけど。」
「・・・。」
「甘えてるんですよ大野さんに。」
「・・・。」
とくん・・・と。
心に何か・・・甘いものが流れ込んでくる。
ずっと重かった心・・・。
乗っかっていた何か・・・が。
突然・・・一瞬で消滅したかのように心が軽くなる。
それどころか・・・重しがなくなりその分心が浮いてしまい。
居所が定まらないほどフワフワする。
え。
甘えてる・・・?
ニノが。
俺に・・・?
言ったの?
2人に。
帰れって・・・。
・・・。
・・・。
ホントに・・・?
つづく