大宮さんの恋物語です。
毎日20時更新予定です。
ではでは・・・どぞ・・・。
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Side.O
ニノの全身を傘が覆う。
・・・とニノが。
ちら・・・と俺の。
向こう側の・・・濡れている肩を見て。
俺の手ごと・・・傘の柄をぐいっと押した。
いやそれじゃ。
ニノが濡れちゃうから。
俺は。
ぐぐっと力を入れて・・・傘が動かないようにした。
それでもニノが・・・また傘の柄を俺の手ごと押す。
俺は抑える。
小さな攻防。
・・・とニノが。
「なんでよ///。」
って小さく言いながら。
俺を見て笑った。
その笑顔が。
いつもの笑顔で。
声も。
とてもとてもかわいくて。
ああ・・・いつものニノだってそう思ったら。
一瞬で・・・体から力が抜け。
きゅっと・・・ニノとの距離が戻ったようになった。
やっと耳が聞こえ目が見えるようになったような・・・。
こっち側へ戻ってこれたような感覚。
それで俺は。
・・・やっと。
「ニノが濡れちゃうから・・・///。」
とニノを見つめ。
笑いながら言えたんだ。
すると・・・俺の笑顔を見て。
目があって・・・ちょっとほっとしたような顔をするニノ。
やっぱり。
役に入り込んでいた・・・と。
そう思っていたのかもしれない。
って言うか俺は。
役に入り込んでいる・・・と言うよりも。
現実と演技の線引きが上手くできていなくて・・・。
今日だけじゃなくて。
昨日のあのキス未遂のシーンだって・・・。
スタッフさんたちが・・・未だ俺たちの周りで傘を開いている。
多分・・・別々の傘に入るのが・・・今ここでは正解なんだと思う。
二人とも濡れない方がいいに決まってるし。
傘はたくさんあるんだから。
でも俺とニノは。
一つ傘の中にいる。
若干・・・スタッフさんの困惑した表情が気になり・・・ちょっと心地が悪くなった俺に。
ニノは・・・重ねて話しかけた。
「なんか。」
「・・・ん?」
「僕。ちょっとびっくりしちゃった・・・///。」
「びっくり・・・?」
「だって知らなかったもん。おーのさんがここで何するか。」
「・・・・・・・・・ああ///白紙だったからね・・・ここんとこ。」
「あそこで立ち止まって。スタッフさんの『ゴーサイン』が出たら走り寄って抱き着いてくださいって。」
「・・・。」
「それだけよ?僕への指示。」
「そうだったんだ・・・///。」
「そうよ。あんなに『好きだ』連呼されるなんて知らなかったもん///。」
「俺も今日。さっき聞かされたから。」
「監督に。信頼されてるってことで・・・いいのよね?」
「もちろん///。そうだと思うよ。」
「・・・監督まだ映像見てる。OKだといいんだけど。おーのさんの迫真の演技だし。」
「声ちょっとかれちゃったんだけど///。」
「それわかった。最後の時でしょ?」
「そう///。」
「かすれもするよ///あんなに叫んでたら///。」
「撮り直し・・・あるかな。」
「でもこういうのってさ。最初が一番いい気がするの。」
「わかる。何度もやっちゃダメなんだよな。意外と。」
「ね。」
ニノと話しながら。
どんどんいつもの俺に戻って行き。
ほっとして少し饒舌になる。
いつだってそう。
俺を演技の世界に引き込むのも。
現実に引き戻してくれるのも。
ニノなんだ。
未だ・・・演技もリアルも・・・交差して続いている感覚があるけど。
いつもの俺に戻れたのは。
ニノがこうして。
すぐそばにいてくれるからなんだ。
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つづく