大宮さんの恋物語です。
こちらは続編です///。
本編はこちら→「バレンタインのお話(仮)♡1」です。
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その先生は。
和が・・・どんな人生を歩んでいるのか・・・をとても心配していた・・・と言う。
なぜなら。
「5年生の男子にチョコを上げることを知っていたから。」
・・・とそう言う。
あのバレンタインの日。
チョコの紙袋を持って嬉しそうに歩く和を廊下で見かけ。
声をかけた先生。
誰に渡すのかと聞くと・・・5年生男子にあげると言う。
個人的には・・・同性を好きになる気持ちは否定しないし。
もしかしたら和の思いはそこまでの強い思いではなくて。
ただの憧れや尊敬としての好意かもしれない・・・と思った・・・と。
ただ・・・渡される方は5年生ということもあってとても多感な年齢だ。
そんな年齢の5年生男子が。
低学年男子からの思いに。
照れやとまどいなくちゃんと答えてくれるかどうかも・・・ちょっと心配したという。
それでも・・・和の意思を尊重し。
止めずにそのまま行かせた結果。
和は泣きながら帰ってきて。
授業中ずっと・・・ハラハラと涙を流していたと言う。
・・・。
・・・。
和には・・・もうそのことは。
気にしなくていいと言われているから気にしないようにしているけど。
やはり・・・聞けば胸が痛む。
先生の危惧していたことが・・・そのまま現実となってしまったんだから。
「二宮君が傷つくかもしれないことを・・・事前に予知できていたのに。」
「・・・。」
「止められなくて・・・。」
「・・・。」
「小学校低学年の幼い子供を導いてあげることができなくて。」
「・・・。」
「大人として・・・教師として。とても悔やんでいたんだ。」
「・・・。」
「二宮君は。聞いても何も話さなくて・・・。相手が誰かも。ずっと隠していたよね。」
「・・・。」
「かばってるんだなって思ったよ。」
「・・・。」
「次の日・・・休んだ時はホント心配した。」
「・・・。」
「その後・・・すぐ元気になったように見えたから。先生もほっとしていたんだけど。」
「・・・。」
「5年生の子も・・・どんな風に感じたのか気になっていたし。」
「・・・。」
「とにかくずっと心配していたんだよ。」
「・・・。」
「二人の心を守ってあげられなくて・・・。」
「・・・。」
「後悔していたんだ。」
申し訳なさそうに言う先生。
時を経て。
先生の・・・懺悔を聞いているよう。
いい先生だな。
そんな・・・和のことを心配してくれていた先生を。
安心させたい。
「先生。」
「・・・ん?」
「その時の・・・5年生の男子って。俺です。」
「・・・え。」
「和・・・二宮君からのチョコ。受け取らなかったの俺なんです。」
「・・・そう・・・なのか・・・。」
「はい。でもすぐその後反省して謝って。来年のバレンタインには俺がチョコをあげるからって約束したんですけど。」
「僕が・・・引っ越ししてしまったんです。」
「え。じゃあ・・・今こうしているのは・・・。」
「つい最近再会して。で・・・俺たち今。付き合ってます。」
ぁ・・・言っちゃった・・・と思って和を見ると。
ぶん・・・と音がするくらいすごい勢いでこっちを見て。
これでもか・・・というくらいに目を真ん丸にして驚いている。
そしてすぐ。
なんで言っちゃったの・・・とでも言いたげに眉をキュッと寄せたけど。
もう・・・///とため息交じりに小さくつぶやいて苦笑いをした和を見て。
俺は・・・俺も苦笑いをしながら。
ごめん・・・と小さくつぶやいた///。。
「そうか・・・///そうなのか。」
「・・・はい///。」
「いや・・・そうか。それはよかった///あ~そうかそうか///。」
「そんな喜びます///?」
「いやもうずっと気になってたから。バレンタインになると思い出すんだよ。毎年。」
「・・・。」
「どうしてるかなって。ずっと思ってたから。」
「・・・ありがとうございます。」
「いや・・・よかったよかった。それはいい///。」
「ありがとうございます///。」
「多様性とか言われ始めてるけど。まだまだ当事者の人たちは心痛めて悩むこともあると思うんだ。」
「・・・。」
「でも・・・そうだな。二人なら大丈夫だな。今二人を見て。先生そう思ったよ。」
「・・・///。」
「そうかそうか・・・///ああなんか・・・今日はいい日だ///。会えてよかったよ。」
「僕もです・・・///。」
俺は。
ちょっと・・・会釈した。
なんか・・・うん。
初めて二人の関係を離したのが小学校時代の担任って言うのもまた。
俺たちらしいなって。
そんなこと思った。
そして。
人に話したことで。
改めて・・・二人の関係が明白になる・・・って言うか確実なものになるって言うか・・・。
なんか。
不思議な感覚になった///。
その後・・・俺たちは応接室で別れ。
旧体育館をもう一度見てから帰ります・・・と伝えた。
歩きながら話す。
「言っちゃったこと。怒ってない///?」
「そもそも怒ってないし///。さらっと言うからちょっとびっくりしたけど。」
「・・・ごめん///。」
「大丈夫よ。あの先生になら言っても。いい人だから。」
「ん・・・そうだな。いい先生だな。」
「ぅん。思い出したの。お兄ちゃんみたいな先生だったってこと。」
「そうか・・・でもさ。先生もあんな風に後悔とか抱えて生きてるんだな。」
「ね。あの頃って親とか先生って完璧だって思ってたけど・・・。」
「それなりに悩みとか後悔とかあるんだよな・・・当然のことだけど。」
「・・・でも。知らなかった。僕。あんな風に心配されてたなんて。」
「・・・ん。子供なんて自分のことでいっぱいいっぱいだからな。人の気持ちまで考えられないよ。」
「・・・ぅん。」
俺だって知らなかったから。
和が・・・あの保健室で出会うよりも前からずっと。
俺を知っていたことなんて。
「なんか。」
「・・・ん?」
「自分の知らないところで・・・こんな風に心寄せてくれる人がいたなんて。」
「・・・。」
「ちょっとほっこりする。」
「だな。」
あの頃を思い出してでもいるのか。
少し下を向いて・・・歩く和。
その・・・思い出す記憶の中に。
俺がいればいいな・・・と。
ついさっきは・・・記憶の中の俺に嫉妬したくせに。
そんな妙なこと・・・思った。
体育館の裏に着く。
日があたるのか・・・奥の方で早咲きの桜が咲いているのが見える。
ひらりと・・・風で散った花びらが。
ふんわりと風に乗ってすぐそばに落ちた。
もうすぐ取り壊しとあって・・・周りは何も整備されていない。
ひざ丈くらいの雑草が生い茂っているのを見て。
あの頃はちゃんと手入れされていたんだということに気づく。
人の手が加わらないと。
これほど荒れるのか・・・と。
その壁や屋根を見上げ・・・月日が経ったことを感じた。
「なんか・・・様子が違い過ぎて・・・///。」
「荒れてるな。」
「でも確かにここよね。二人で話したの。」
「そうそう。指切りげんまんした和・・・かわいかったな。」
「何それ///覚えてない。」
「覚えてないの///?こんな風にしてさ。」
「・・・///。」
俺は。
和の手を取ると・・・軽く握られていた小さなその手を解き。
そして・・・小指を立たせると俺のと絡め。
体と一緒に揺らし歌い始めた。
「ゆぅびきりげんまんウソついたら針千本のぉ~ますっ~♪・・・ってさ。」
「・・・///。」
「歌いながら揺れてたんだよ。」
「///なんかあなたって。」
「・・・?」
「歌もうまいのね。」
「・・・え///。」
「今のワンフレーズだけですっごいドキドキしたんだけど///。」
「・・・///。」
「すごいよね・・・あなたいくつ才能持ってるの///?」
「・・・。」
さらり・・・と。
絡んでいた小指を解く和。
そして。
指折り数え始めた。
「かけっこ速いでしょ?絵が上手いでしょ?歌うまいでしょ?」
「・・・///あったとしても多分それくらいだよ。」
「ん~・・・あと・・・。あ///。」
「・・・?」
「絵が上手いってことはよ?なんかそういう・・・創作的なことの才能があるってことじゃない?図画工作的な。」
「・・・ぅ・・・ん・・・。そう・・・なのか?」
「そうよ。だから例えば・・・何か作る才能もあると思うの。粘土とか石膏とか。」
「・・・美術系ってこと?」
「そうそう。やったことある?」
「いや・・・あんまりない。」
「興味は?」
「まあ・・・ある・・・かな・・・?」
「今度やってみれば?新しいドア開くかも///。」
それはそれは嬉しそうに笑う和。
って言うか・・・俺の才能。
そんな風に言ってもらえて・・・。
ずっと・・・自分のこと平凡だと思ってたから。
俺のいいとこをそんなに見つけてくれて。
まだ・・・さらに見つけようとしてくれる和が。
愛おしくてたまらない。
つづく