シャッフルメドレーのスタンバイ。
舞台袖で先輩と並んでいる。
ふっと・・・先輩が「愛のかたまり」を口ずさむから。
俺もそれにあわせて軽く口ずさんだ。
そう言えば・・・あの頃。
この曲がリリースされて。
和からいつも聞かされていた頃。
よくこうして・・・二人で口ずさんでいたな・・・と。
そんなこと思い出す。
先輩が。
こそっと・・・俺に話しかけた。
「これ・・・いい曲だよな。」
「・・・ですね。」
「天才だよな・・・あいつら二人。」
「・・・はい。」
「この・・・剛の歌詞さ。」
「・・・。」
「女性目線じゃん。」
「・・・はい。」
「男もさ・・・こういう・・・女性目線にならないとさ。」
「・・・。」
「伝えられない思いとかあるのかもな。」
「・・・。」
・・・。
・・・。
女性目線でないと伝えられない思い。
・・・。
・・・。
和は。
ずっと昔から俺を好きだった・・・と言っていた。
あの頃。
この曲がリリースされたあの頃すでに。
俺を好きだった・・・としたら。
和は。
どんな思いで・・・この曲を俺に聞かせたんだろう。
ずっとずっと。
俺のそばにいた和。
俺が現場に行くといつも和は。
ねぇ見て・・・ねぇ聞いて・・・と。
俺に寄り添ってきた。
長い長い片思い。
あの頃の俺には・・・わからなかったけど。
でも・・・今ならわかる。
和の言葉や仕草は。
・・・。
・・・。
間違いなくすべて。
俺のためにあったこと。
そう言えば和も。
女性目線の歌詞を・・・書いていた。
和・・・。
今日は優しくしてやろう
なんでも言うこと聞いて。
・・・。
・・・。
いや違うな。
そうじゃない。
たくさん愛を伝えよう。
愛してるよ・・・と。
お前が大事だよ・・・と。
そして。
最後の人だよ・・・と伝えたい。
真横に立っている坂本先輩を見つめる。
こうして気付かせてくれるなんて。
やっぱすごいな。
ホントに尊敬する。
俺の視線に気づいたのか。
一度チラリと俺を見た先輩。
でもすぐ前を向いて。
そのままの姿勢で俺に小さな声で言った。
「何か困ったことないか？」
「・・・ぇ・・・。」
「事務所のこととか・・・周りとかスタッフとか。」
「・・・。」
「二人のことで・・・何か困ったことあったら・・・俺に言えよ。」
「・・・。」
「できる限りのことはするから。」
「・・・ありがとうございます。」
「・・・ん。」
「俺・・・先輩みたいな大人になりたいです。」
「・・・。」
「・・・。」
「大野に言われると・・・ちょっと複雑だよ///。」
「ぁ・・・///。」
「俺はお前になりたいけどな。」
「・・・。」
「・・・なんてな・・・ウソだよ。」
「・・・。」
不意にこぼれた先輩の本音に
すいません・・・と。
声には出さずに心で謝る。
それでも和を・・・俺たちを。
心配してくれる先輩。
やっぱり俺は・・・こんな大人になりたい。
そして・・・先輩と俺の出番。
ステージに立ち。
心に浮かべる。
ただ一人・・・唯一俺の大切なあいつを。
思い浮かべながら歌う。
心配性すぎなあなたは 電車に乗せるのを嫌がる
まるでか弱い女の子みたいで なんだか嬉しいの
あなたと同じ香水をね 街の中で感じるとね
一瞬で体温蘇るから ついて行きたくなっちゃうの
教えたいもの 見せたいもの
たくさんありすぎるのよ
言葉や仕草は あなただけの為にあるから
思いきり抱き寄せられると心 あなたでよかったと歌うの
X'masなんていらないくらい 日々が愛のかたまり
最後の人に出逢えたよね
歌い終わり・・・先輩に見つめられたけど。
俺はもう・・・さっきのカメリハの時とは違い。
笑顔ができたんだ。
みんなで歌うために・・・ステージにスタンバイする。
和のチャンカパーナが横目でチラリと見えた。
振付を。
かわいく踊る和。
そして・・・気合を入れて。
全力で。
シャウト。
すげ・・・。
ニノさんやば・・・と。
こっちのステージがちょっとザワつく。
そうだよ。
すげぇだろ。
俺のだぞ。
誇らしげになりながら。
俺は・・・和を見つめた。
そらされた喉元を見つめ。
今日はめいっぱい愛し合おう・・・と。
心に決めて。
fin
お付き合いいただきありがとうございました♡
楽しんでいただけていたら嬉しいです。
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