大宮さんのBL物語です。
苦手な方はご注意を。
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「俺たちあっちにいるから。二人で話して。」
翔ちゃんが・・・向こうを指さして言う。
「手短にね。あんま俺たちを待たせないでよ?」
まーくんが・・・笑いながら言う。
「男だろ智。しっかりしろって。」
パン・・・と智の背中を叩き潤君が言い。
そして三人が・・・向こうへと行ってしまった。
立ったままの智。
バツが悪そうに。
居心地が悪そうに。
顎ばかり触っている。
驚きのあまり・・・すっかり涙が止まってしまった僕の頭の中は。
どうして?とか。
なんで?とか。
いろんなことの整理がつかないんだけど・・・。
でも。
「・・・和。」
優しく見つめられ。
甘いその声を聴いた瞬間。
ふら・・・っと。
まるで引き寄せられるかのように・・・自然と立ちあがり。
そして・・・ゆっくりと。
ゆっくりと・・・その智の体に。
自分の体を寄せた。
するり・・・と背に腕を回し引き寄せると。
同じくらいの力で引き寄せてくれる智。
背に回った智の大きな手が。
ただそこにあって。
それだけで。
落ち着いていく心。
もうずっと。
こうしていたみたいに。
しっくりくる。
穏やかになる心。
何を・・・伝えよう。
何が言いたい?
智に伝えたい言葉。
・・・。
・・・。
それは。
「智・・・。」
「・・・。」
「お帰りなさい。」
「・・・ん。」
「会いたかった。」
「・・・。」
「すごく会いたかった。」
「・・・。」
「智・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
長い長い沈黙。
智の手は・・・軽く僕の背に触れているだけ。
・・・。
・・・。
どう・・・したの?
そのまま。
少しだけ離れ。
智を・・・智の顔を見ると。
・・・。
・・・。
え。
「・・・見ん・・・なよ・・・。」
「・・・。」
「・・・ふ・・・っく・・・。」
「・・・。」
「っ・・・ぅ・・・っ・・・。」
「・・・。」
智が。
号泣していた。
今まで泣いていたはずの僕が。
もらい泣きするくらいの・・・号泣。
初めて見る・・・智の涙。
口はゆがんで。
ポロポロと頬を伝う涙。
すっと・・・顎から。
智のシャツへと・・・きれいな雫が落ちる。
それを目で追う。
「お帰り・・・なんて・・・。」
「・・・。」
「言って・・・もらえると・・・思わなかった・・・。」
「・・・言うに決まってるでしょ・・・だって・・・。」
「・・・。」
「こうして・・・帰ってきてくれたんだから。」
和・・・と。
もうかすれ過ぎて聞こえないほどの小さな声で呼ばれ。
そしてぎゅっと。
ぎゅっと・・・抱きしめられる。
「待たせて・・・ごめん。」
「・・・ぅぅん・・・もういい。」
「・・・マジごめん。」
「もう・・・いいの。」
「・・・ただいま。」
「おかえり。」
ごめん・・なんてもういい。
だって。
糸・・・は。
つながっていたから。
5年前・・・切れたと思っていた糸。
でも。
そうじゃなくて。
5年前とかじゃなくて。
あの幼い日からずっと。
ずっとずっと。
智と僕の糸は。
つながっていたんだから。
すすっと・・・智の背に手を滑らせ。
泣いている智を落ち着かせる。
ふと・・・向こうを見ると。
三人が・・・こっちを見ているのが見えて。
なんとなく。
ただなんとなく・・・泣いている智を見られたくなくて。
ぐぐっと・・・智の体ごと向きを変えた。
はぁ・・・と大きく息を吐いて。
ずずっと・・・鼻をすすると。
僕を見て・・・照れくさそうに智が笑う。
久しぶりに見る・・・智の笑顔が。
まぶしくて・・・目を細める。
互いに体に触れたまま。
顔を見て話す。
智の・・・涙にぬれた顔。
きっと僕の頬も。
さっきの涙で濡れているんだろうな・・・と思うと。
ちょっとだけ笑える。
もう・・・ね。
言いたいこと・・・聞きたいこと。
いっぱいあるんだけど・・・。
「智・・・ありがとう。」
「・・・。」
「僕のこと・・・ずっと。」
「・・・。」
「ずっと守ってくれてたんだね。」
「大事だったから・・・和のこと。すごく。」
「ありがとう・・・。」
ならば・・・僕も。
僕だって。
智のことが大事なんだから・・・だから。
「ねぇ。」
「・・・ん?」
「もしも・・・。」
「・・・。」
「もしもね・・・もしも絵のことで・・・またどっか行きたいなら。」
「・・・。」
「行ってもいいから。」
「・・・。」
「自分の夢は・・・あきらめないで欲しい。」
「・・・。」
「僕のせいでそういうの・・・」
「・・・。」
「・・・あ・・・そうだ。」
「・・・。」
「次は僕も行ってもいい?一緒に。」
それは・・・本音。
今突然思ったけど・・・でも本音。
もう。
1秒たりとも離れてなんていられない。
智が行くなら。
僕もついていく。
すっと伸びてきた智のキレイな指が。
すいっと・・・僕の前髪をはらう。
そんな指先にすら。
愛情が宿っているようで。
ふわんと・・・温かい気持ちになる。
智の・・・満足げな笑み。
僕を優しく見つめる。
「もう・・・。」
「・・・。」
「俺は・・・どこへも行かない。」
「・・・。」
「一人でしかできないことは・・・この5年で全部済ませてきたから。」
「・・・。」
「だからもう。」
「・・・。」
「俺はどこへも行かない。和といる。」
「・・・。」
ハッキリとしっかりと。
まるで・・・誓いみたいな言い方をする智。
断言する様子に・・・思わず笑みがこぼれ。
すっと。
ホントにすっと自然に・・・近づくと。
くいっと・・・智が軽く顔を傾けるから。
そのまま・・・キスをした。
あまりにも自然で・・・自然すぎて。
今までもずっとこんなことしていたように感じる。
智の触れた唇が柔らかくて。
気持ちよくて。
だから・・・。
「ん・・・智・・・もう一度・・・。」
「・・・和・・・。」
「・・・ん?」
「ホントに・・・俺でいいの?」
「・・・。」
「ホントに俺で・・・。」
「もう。」
「・・・。」
「智じゃなきゃイヤだし。」
「・・・。」
「そんな確認しないでよ///。」
「・・・ん///。」
その首に・・・腕を絡ませ引き寄せた。
僕の背に・・・触れるだけの智の手。
僕のことになると意気地なしになる智。
こんな人だったんだ・・・と。
心の奥がくすぐったくなる。
・・・と。
「はいストップ~!」
「・・・ぇ///。」
向こうの方から・・・まーくんが。
若干の早足で近づいてきた。
え・・・なに///。
「はい離れて~。」
「・・・ちょ・・・な///に・・・。」
「こういうのは・・・五人でいる時は禁止ですぅ~。」
「禁止って///。」
「行こ。飲みに。」
「ぁ・・・ぅん///。」
「発表もあるしね。翔ちゃん♪」
「お前さぁ・・・サプライズだって言ってんのに・・・。」
「ぁ///言っちゃった///。」
「翔君しょうがないよ。だって雅紀すげぇ楽しみにしてたんだしさ。」
「そうそう♪潤ちゃん大好き♪」
「ちょ//やめ///行くぞホラ。」
なんだか。
にぎやかに・・・向こうへと歩いていく三人。
って言うか・・・サプライズ?
また何か・・僕の知らないこと?
「智・・・なんか知ってるの?」
「イヤ・・・俺も知らない、」
「なんだろ・・・。」
「な。」
すっと。
背を押される。
行こう・・・と言う合図。
今までだって・・・こんな風にされたことあるのに。
気持ちが通じた後は。
同じことをされても気持ちが全然違って。
ホント・・・不思議だなって・・・思った///。
「ねぇ智。」
「・・・ん?」
「お絵かき帳・・・いつか見せてね。」
「・・・。」
「僕とまーくんの・・・自主練。待ってくれてた時に書いてた絵。」
「・・・。」
「いつか見せてね。」
「もう・・・どっか行っちゃったよ。」
「嘘つき。」
「///。」
「見せたくないの?」
「いや///多分ひくよ。見たら。」
「・・・ひかないよ///。」
「ひくって。」
「そんな・・・なの///?」
「そんな・・・だよ。」
ふっと。
横目で・・・僕を見て笑う智。
ちょっとだけ・・・男くさくて。
ドキッとした。
つづく
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毎日20時に更新です。
楽しんでいただけたら・・・。
ではでは。
来てくださってありがとうございました。
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