こちらは大宮さんBL物語です。
苦手な方はご注意を///。
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「うーさん。」
「・・・ん・・・?」
俺は。
まっすぐにうーさんを見つめる。
優しい瞳で・・・俺を見つめてくれるうーさん。
初めて・・・こんな風にまっすぐにうーさんの目を見つめた様な気がする。
「うーさん・・・ごめん。」
「・・・。」
「ごめんなさい。」
「・・・。」
「ホントに・・・ごめんなさい。」
「・・・。」
「俺・・・これ受け取れない。」
「・・・。」
指輪を。
右手の薬指からぬいて。
そっと・・・テーブルに置いた。
うーさんの視線が指輪に注がれ。
でもすぐ・・・俺へと戻って来る。
「俺ね・・・うーさん。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
呼吸が苦しい。
でも・・・伝えたい。
言わなくちゃ。
ううん。
聞いて欲しい。
言いたい。
すっと・・・息を吸うと。
俺は一息で言った。
「俺好きな人がいるの。」
言葉にすると。
・・・。
・・・。
余計にリアルに思えて。
自分で言った言葉なのに。
そうなんだ・・・って客観的にとらえる。
そう。
俺は。
先輩のことが・・・好きなんだ。
先輩への甘えが・・・他の人へのソレとは違っていた。
絶大な信頼を寄せていて。
だから・・・説教された時の俺の落胆とかすごくて。
でも親身になってくれたことはイヤじゃなくて。
なにより・・・先輩と一緒にいる時の自分をキライじゃない・・・なんて思ってたけど。
それってもう。
もうさ・・・そういうことじゃん。
そういうことでしょ?
気づいてたくせに。
自分でもわかってたくせに。
「そうか。」
静かに・・・うーさんが言う。
そして・・・俺の頬にすっと手をあてる。
温かくて優しい手。
うーさんの手って。
こんなに安心できたっけ?
「お前にそんな顔させるのは・・・どこのどいつだ?ん?」
親指で目の下をすりすりされる。
甘くて甘くて。
すがってしまいそうな声。
うーさんの・・・目尻の下がった優しい顔。
俺は・・・どんな顔してる?
やだな・・・もう。
なんか・・・泣きそうになる。
「カズ。」
「ぅん・・・。」
「相手は男か。」
「・・・ぅん。」
「そうか・・・見込みは・・・あるのか?」
「・・・見込み?」
「・・・その男は・・・お前を受け入れてくれるのか?」
「・・・。」
多分無理。
だってゲイじゃないし。
さらには・・・ただの後輩だと思われてる俺。
あの日。
先輩の家で。
一緒にいたのに。
全然そういう雰囲気にならなくて。
俺に触れもしない先輩。
愛って何なんて・・・聞いても答えてもらえなくて。
ただ困らせただけ。
夜の世界で働いている俺とは。
住む世界が違う人。
だから。
「多分・・・無理。受け入れてもらえない。」
「・・・。」
ぎゅっと。
心臓がつかまれたように痛む。
目の奥が熱くなって。
ちょっとだけ視界がゆがんだ。
「お前は・・・素直じゃないから。」
「・・・。」
「俺は・・・そんなとこが好きなんだけどな。」
「・・・。」
「そういうの・・・伝わらないヤツもいるから。」
「・・・。」
「だから。」
「・・・。」
「素直になれ。」
「・・・ぅん。」
「で・・・もしダメなら。」
「・・・。」
「ダメなら俺んとこ来い。」
「・・・。」
「なぐさめてやるから。」
「・・・。」
「な。」
軽口一つ出てこなくて。
ホントに。
ダメだったら慰めて欲しい・・・なんて思った俺。
なに。
急に・・・弱くなっちゃって。
なんか・・・笑える。
うーさんが。
さすがにちょっと居心地が悪いから今日は帰るよ・・・って言って。
また来るからなって言って・・・そのまま帰って行った。
帰り際・・・一度だけ。
俺の顎をきゅ・・・と持ちあげ見つめ。
がんばれよって・・・言ってくれたうーさん。
俺は・・・俺。
もうすぐに立ち上がり。
バックヤードに入るとそこにいたオーナーに言った。
「ごめん。もう帰る。後の仕事全部キャンセルして。」
俺は。
びっくり顔のオーナーの返事を待たずに。
バックヤードを出て店を横切り。
え?どうしたの?って驚く雅紀に。
ちょっと行ってくる・・・と一言だけ告げ。
エレベーターで降りて外へと出た。
目指す場所は一つ。
電車なんて乗ってらんない。
俺は・・・全速力で大通りに出て。
タクシーを拾った。
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つづく
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少しずつですが毎日8時16時0時の更新です。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
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