大宮さんBL前提のお話です。
苦手な方はご注意を///。
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Side.N
すぐに。
智から電話がかかってくる。
でも。
・・・。
・・・。
うん。
約束だったから。
父さんと約束したから・・・だから。
電話には出なかった。
本当は出たかったけど・・・でも。
でも。
智は僕に今日嘘をついた。
智の事・・・愛してるけど・・・でも。
どうしてもそこがひっかかってしまって。
部屋に鍵もかかっていたし。
不安で。
どうしようもなくて。
どうしたらいいか・・・わからなくて。
だって智が嘘ついたから・・・だから。
電話には出なかった。
本当は疑いたくなんかない。
でも・・・。
しばらくして・・・LINEが来る。
ディスプレイに浮かび上がる文字。
大丈夫か?
無事か?
僕を心配する言葉が・・たくさん並ぶ。
それを・・・既読にもしないで僕は。
じっと見ている。
返事をしたい。
僕は大丈夫って。
でも・・・父さんとの約束だから。
これ以上・・父さんを怒らせない方がいいから。
それに・・・智は僕に嘘を・・・。
だから。
僕は・・・スマホをそのままにして。
部屋を出た。
しばらく・・・何もできずにただ座ったままでいたけど。
食事が途中のままのテーブル。
急に僕は・・・片づけを始めた。
何かしていた方が。
気がまぎれる。
残った食べ物をラップして冷蔵庫にしまい。
汚れたお皿を重ねグラスと一緒に運び・・・シンクに置き。
洗い始める。
・・・。
・・・。
今頃・・・父さんはもう着いたかも。
何を・・・話してる?
智・・・責められてるかも。
父さんに。
殴られるとか・・・そういうのは・・・ないよね?
でも。
もしかしたら。
もう。
・・・。
・・・。
ちょうどいいって思ってるかもしれない。
もし智が・・・僕と別れたいと思っていたとしたら。
今のこの父さんのタイミングは。
智にとっては・・・。
痛・・・っつぅ・・・
突然・・・指に痛みが走り。
持っていたグラスを手放した。
ゴトン・・・とシンクに落ちるグラス。
指ににじむ赤。
グラスを見ると・・・ふちが欠けていて。
そこで・・・指を傷つけたみたいだった。
水で流してから・・・傷ついた指を見る。
左手。
薬指。
の・・・付け根。
じんわりと広がる赤いすじが。
まるで。
・・・。
・・・。
指輪みたい。
それを見て。
突然。
思い出す。
あの・・・幻想的な大正池の風景。
昇り始めた太陽。
湖面からもやのように浮かび上がる煙。
そんな中。
智が・・・僕にくれた指輪。
太陽のパワーをいっぱいあびた指輪。
本物の指輪ではなかったけど・・・でも。
そっと。
僕の指にはめてくれた指輪。
実在する指輪ではなかったけど・・・でも。
確かにそれは・・・僕の左手の薬指に。
ずっとあった。
あの時から・・・ずっと。
ずっとずっと・・・あったんだ。
クリスマスの時だって。
確かに・・・見た。
この薬指が・・・きらっと光るのを。
僕は確かに見たんだ。
智
ぶわっと・・・涙が溢れる。
一瞬で零れ落ちる涙。
愛されている。
そう・・・僕は。
ずっとずっと・・・愛されている。
知ってたのに。
知ってたはずなのに。
どうして。
どうして・・・智の愛を疑ったりしたんだろう。
ぐいっと・・・服の袖で涙をぬぐうと僕は。
近くにあったティッシュで指の付け根をくるむと。
そのまま・・・部屋に戻りスマホと財布を持った。
ちらっと見えた・・・ディスプレイ。
何度も送られてきているLINE。
その・・・最後の言葉。
心配ないからな
それを見てまた涙が溢れる。
ほら・・・ね。
僕は。
こんなに・・・愛されているんだ。
・・・。
・・・。
父さんに言われたのは。
電話に出るなってこと。
連絡とるなって・・・そう言われただけ。
まだ・・・電車は動いている時間。
だから。
・・・。
・・・。
うん。
これは・・・禁止されていないはず。
怒られない・・・よね・・・。
そう考えて僕は。
家を走り出た。
.
つづく
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作者のナツコです。
読んでくださって、ありがとうございました。
お話はまだまだ続きます。
毎日0時8時16時に更新の予定でございます。
最後までお付き合いいただけたら嬉しいです♪