大宮さんの腐のお話です。
苦手な方はご注意を///。
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それからは。
少し・・・仕事の話をする。
夏に向けて大きな仕事が一つあるから。
それの話を少しした。
お酒がすすむ社長。
俺も・・・酌み交わすように・・・と。
お酒がすすんだ。
ほろ酔いでお店を出て。
少し歩こうか・・・と社長に言われるがまま。
駅とは逆の方向へと歩き始めた。
季節が。
春から夏へと変わる。
桜ももう散って。
吹く風に生暖かさを感じ。
湿った空気とともに・・・春が過ぎていく。
ふいに思い出す・・・専務の事。
秋が終わる頃には。
日本からいなくなってしまう専務。
あと。
何度。
今朝みたいな朝を。
過ごせるんだろう。
そんな事・・・考えていたから。
社長が言った言葉を聞き逃してしまった。
「・・・ぇ・・・。」
「・・・。」
「すいません・・・今・・・なんて・・・。」
「・・・智はどう?って・・・聞いたんだよ。」
「・・・。」
「部長に言われて・・・どうだった?」
「ぁ・・・。」
「・・・。」
「ショックを・・・少し受けたようで・・・。」
「・・・。」
「ちょっとだけ・・・落ち込んだようですけど・・・。」
「・・・。」
落ち込んだようだけど。
今朝は・・・いつもの専務だったし。
出社しても普通にみんなには挨拶をしていた。
ランチに出かける時に。
偶然エレベーターで企画部長と一緒になったけど。
社長は普通に・・・会釈して。
お疲れ様です・・・と。
そう言っていた。
だから・・・きっと。
思うところはあるかもしれないけど・・・でも。
専務の中では。
乗り越えたんだと思っていた。
「もう大丈夫だと思います。」
「そうか・・・。」
「はい。」
「君の・・・二宮君のおかげ・・・かな。」
「いえ・・・僕は何も・・・。」
「・・・そうかな?」
「・・・は・・・い・・・。」
ちょっとだけ・・・ひっかかるような言い方をする社長に。
少し違和感を感じたけど。
でも。
そう。
本当に・・・俺のおかげではないから。
専務は・・・きっと自分で乗り越えたはず。
それでももし俺のおかげとするなら。
それは・・・ちょっとのきっかけを与えたに過ぎなくて。
あの人が。
自分で乗り越えた事なんだ。
強い人だから・・・ね。
「話は変わるけど・・・。」
「はい・・・。」
「まだ・・・智にも伝えてないんだけど・・・。」
「・・・。」
「二宮君には・・・先に言っておくよ。」
「・・・はい・・・。」
「智は・・・あと三カ月だ。」
「・・・ぇ・・・?」
「ロンドンに行くのが早まってね。」
「・・・。」
「夏になったら・・・日本を出る。」
「・・・。」
夏・・・。
・・・。
・・・。
立ち止まる俺。
社長が俺を見ていることが。
わかったけど・・・でも。
動揺が隠せなかった。
どうして。
なんで三カ月?
あと半年・・・と思っていた関係が。
夏には終わる・・・なんて。
・・・。
・・・。
終わりがあることはわかっていたけど・・・でも。
あまりにも早い終わりに。
頭が・・・上手く働かない。
「向こうで・・・事業の拡大が急に進んでね。」
「・・・。」
「人手が足りなくなったんだ。」
「・・・。」
「それで・・・智の渡英を早めることになって・・・。」
「・・・。」
「夏の・・・まあ・・・早ければ7月終わりか・・・遅くとも8月には・・・」
立ち話のままの社長と俺。
でももう。
あまり・・・社長の声は聞こえていなかった。
というよりは。
意味が理解できない。
専務が。
ここからいなくなる。
あと三カ月でここから。
いなくなるなんて。
足元が。
崩れ落ちそうになり。
歩いてもいないのに・・・ちょっとだけよろけた俺。
大丈夫?・・・と。
俺の腕を取る社長に。
すいません・・・と言って。
ちょっと酔いました・・・と言って。
離れようとした・・・けど。
そのまま。
俺の腕を持ったまま。
道の端・・・細い脇道へと引っ張られた。
つづく
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