納豆と混浴してみる
分とく山の野崎洋光さんの著書『野崎洋光が考える美味しい法則』(池田書房)の中に、「肉はお風呂に入れる」という記述があった。どういうことかというと、下拵えの段階で一度湯通ししておくということだ。『お風呂に入れてアカをとるようなもの』らしく、『素材を熱湯にさっとくぐらせて、汚れやアク、余分な脂肪を取り除くこと』だそうだ。
これを納豆に応用できないかと考え、やってみた。
とはいえ、塊の肉と違い、納豆をそのまま熱湯にさらしては分離して粒同士が仲違いする結果は目に見えている。そこで、比喩としての「お風呂に入れる」ではなく本当にお風呂に入れてやることにした。小粒納豆をビニール袋に移し、口を閉めて混浴した。梅雨の日の午後の出来事。
さて一緒にお湯に浸かった納豆にはどこかいつもの納豆と違った愛着が生まれてきた。見た目はもともと淡かった色合いがより一層あっさりした風合いを帯びていた。
直接的に湯を受けたわけではないのに、水分を増したようで粘りは弱まった。熱を加えたためだ。ちょっとダルダルしている。
旨味の面では、いつもの常温のものと大差なかった。一緒に食べた時、口の中で常温組とお風呂組が喧嘩しなくてよかった。ホッと胸を撫でおろす。
それと、納豆と混浴する意義は精神面にも及んだ。普段はお湯に何も入れないか、たまに入浴剤を入れる程度なのだが、納豆と空間と時間を一緒に過ごせるというリラックス効果は想像以上だった。
副交感神経が刺激されるし、ベータエンドルフィンなんかも盛んに分泌されていたんじゃないかと思う。
納豆の影響は意外なところで発見できるものだ。