前回の話



母と喧嘩した。


やってしまった。

完全に、攻撃してしまった。


そして学生時代なら、

こういう会話で全てが終わってた。


修復されることもなく、

お互いクールダウンするまで待って

そして解消されることのない思いは

長いことチクチク刺さりっぱなしになって。


圧倒的コミュニケーション不足の家庭。


でも、このままでいいわけがない。


私から電話をかけ直した。


母は出なかった。


その数分後に母からかかってきた。


「はい」


「はい」


「「………」」


何を話せばいいのか分からない

でも言わなくては


「言い方がすごく悪かった

応援してもらってないなんて思ってない」


「うん」


「でも俳優として

これから一人で頑張っていくには

発信することに臆病になりたくない」


「うん」


「傷ついてるのを見たくないって

思ってるってこと??」


「そうやと思う」


「でもそれは無理や

挑戦するってことは必ず傷つくもん」


「たしかにな」


「だから嫌なら今後の活動見やんといて

勝手に頑張るから

でもワガママやけど

どうしようもないときは聞いてほしい」


「……なっちゃんが健康でおること

それが母の誇りやねん」


「…」


「ハリーポッターがどれだけすごいとか

そんなんもよう分からへん

芸能界の厳しさなんて想像つかへん

でもな、健康で生きててくれてる

それが誇らしいねん

それだけでいいねん」


「…」


「だからなんで

わざわざ傷つくかもしれんことを

やりに行くんやと思ってしまう

そのままでいいのに」


「…俳優やから」


「お芝居だけじゃあかんの?」


「たしかに、やらんでもいいかもしれん

でも、私が今やりたいことなんやと思う

人として応援してくれる人がいないと

この先の挑戦に挫折する気がしてる」


「…ほんまはバク転だってしてほしくない」


「そこ!?冗談やと思ってた」


「同じレベル感で思ってるよ

ただ健康でいてほしいだけやねん」


「うん…」


「でもすごく勇気がいるときに

家族に止められるって傷つくよな

いつも最後まで話聞かんくてごめん」


「いや聞いてくれてるよ」


「うん」


「うん」




つづく