プロローグはこちら!
元来腰の重い麻雀を打つこの男であれば、決勝の大舞台でも焦ったりすることはないと思われたのが第一。
結果的に打8pでもチーテンは取れない形ではあるが、河にピンズはかなり高く鳴かれてもおかしくないところ。2巡前に掴んだ通っていないドラ1sではオリ気味になったが、残りツモ2回となればチーテンで6sなどを1枚押していてもおかしくない手牌だった。
また雀風的にデカトップと地蔵ラスの多い打ち手なので、表が出れば大きなアドバンテージになり、裏が出ても後々挽回が効く先鋒戦が適役だろうというのはチームの全会一致で決まったことだった。
しかしそれでも何せ全国放送の決勝戦である。幾ら中田でも緊張があるのではないかという一抹の不安がなかったと言えば嘘になる、というのが恐らくチーム全員の本音だ。
その懸念を裏付けるようなプレー(?)が開局早々見られる。
手が震えてうまく動かないのだろうか?私自身も経験があることなだけに、画面の前でかなり心配していた。
一方幸運なことに手牌はあまり迷う形にならず、ピンズのイッツーと下の三色が天秤にかかるまずまずのチャンス手になったものの、北家のシングル選抜大谷(以下敬称略)からのリーチに加え、その後西家YDT浜口の西ポンが入ったこともあり、対応に回る形となってしまった。
その道中、中田の選択が興味深い。
西をポンした浜口の手出しが現物の5s1sとなっておりオリ気配。私であればテンパイ料を追って打8p(ワンチャンスの8mを押した、オヤのイッツーが好き宮崎に2sは切りづらい)と行きたいところだ。
しかし中田の選択は3mのトイツ落とし。残りツモ二回でこの手から雀頭をなくしてしまっては、テンパイは少し難しくなってしまう。これを緩手と取る方もいるだろう。しかし下家浜口の手と河を見ると、中田の意図が見えてくる。
結果的に打8pでもチーテンは取れない形ではあるが、河にピンズはかなり高く鳴かれてもおかしくないところ。2巡前に掴んだ通っていないドラ1sではオリ気味になったが、残りツモ2回となればチーテンで6sなどを1枚押していてもおかしくない手牌だった。
一方中田の切った3mはリーチにほぼ通りそうな牌で、また下家の浜口の現物である。
「最近、終盤に不用意なチーテンを入れられないようにケアを強めている」と中田は語っていたが、それが垣間見える一打と言えるだろう。
結果は宮崎がうまくテンパイを取りきりノーテン罰符を払わされたが、「テンパイ料勝負に負けるのは仕方ない、ただ簡単に1人ノーテンの3000点は払わない」という中田の信条を強く見せ、かつ私達に彼がいつも通りであることを確信させる、1500点の損失であった。
次の東1局1本場でも、いつも通りであることを見せつけるかのようにこのダマ6400をリーチ。
このリーチは賛否両論あるだろう。ただ結果は脇に蹴られたものの、狙い目の3sは2枚山、かつどちらの待ちも先切りのマタギになっているという、リーチファイターのらしさが存分に見られた局面だった(ついでに言うと東も1枚スルーしている)。
その一方で疑問手があったのがこの東3局1本場。
メリットとしては当然テンパイチャンスが増えること、リーチ者のハイテイを消せることの2点がある。これは確かにとても大きい。
ただこの手には現状白以外にアンパイがなく、カンして持ってきた牌が危険なもので、結局何かでカンドラカン裏をあげた手に放銃…となるのが恐い。
点数状況に縛られる副将、大将戦ならともかく、まだ先鋒戦の東場であるわけで、ここは白を切ってノーテンを受け入れるのが中田の麻雀ではないだろうか。
結果的には最高の形であったが、ここは中田が先鋒戦で見せた1番の隙であったように見えた。
実際次局でも第一打でドラの中を切り間違えかけたり、789の三色の手順を失敗したりしている。
他家のアガリやノーテン罰符の支払いが続いて心が弱ってきているのかと心配になったが、その後も他家のリーチや仕掛けへの対応を続けて迎えた南2局のオヤ番に、また「らしさ」を見せてくれた。
オヤで最低でもリーチ赤1が保証されていること、白ポン後の形の強さから切りにくい5mではあるが、ソーズの安さに目を向けると2s残しの優秀さがよくわかる。
ただ結果は4pがくっついてのカン5pという微妙な手になり、当然リーチと行ったものの5pをアンコにした南家浜口に追いかけられ、2600の放銃となってしまった。
しかしここから中田が生命力を発揮する。
南3局でドラポンから動き出したトイトイドラ3をツモアガリ、迎えたオーラス。
テンパイだが形は悪く、また親がドラをリリースするなど場はかなり煮詰まっている。自分の目から赤が1枚も見えてないのも恐い要素で、キツイ展開に心が弱っていると「ヤミテンの2600をアガって、収支チャラで先鋒戦を終わらせてくれ」という思考が頭をよぎるはずだ。
しかし、この男を誰と心得るか。
そう。リーチファイター中田である。
南家の宮崎にメンタンピンイーペーコー赤の36pで追いかけられるものの、北家の浜口が手牌の赤赤に押し出される形で1シャンテンから3sを放ち、5200の打ち取りとなった。
かつて阪神タイガースの抑えを務めた藤川球児という投手は、そのストレートだけで打者を牛耳り、人々を魅了し、一世を風靡した。
彼の直球に魅せられたのはファンだけでなく、チームメイト達も皆その投球に酔い痴れ、自分たちの明暗をこの球に託せる、そう思ったはずだ。
藤川球児のピッチングスタイルも、中田の麻雀も、どこか愚直に見える所がある。変化球を交えれば、もっと楽になるのかもしれない。
それでもそんな考えを振り切るかのように、どれだけ緊迫した局面でも、あくまでいつもと「変わらない」直球勝負に拘った中田の麻雀は、内容関係なくチームメイトに勇気を与える強きものであった。
今にして思えば、決勝の結果はここで決していたのかもしれない。
次鋒編に続く!







