未だ暑さの残る8月上旬、私達のチーム「強打者カドワキ」は、麻雀甲子園東京予選の会場にて、最終4回戦を闘っていた。
麻雀甲子園の予選は優勝チームのみが勝ち上がりのルールで、1位チームとの差はおよそ300ポイント。チームは4人なので単純計算で1人当たり75ポイント詰めなければならず、その為には5〜6万点のトップが必須である。
苦しい立場で過度な踏み込みを強いられる選手の多い最終戦という特殊な場で、大トップという物はさほど難しいことではない。しかし4人全員が、となれば確率的には1人だけの時よりぐっと厳しくなる上に、1位チームのポイントが増えた場合など努力が水泡に帰することもある。事実上、通過は不可能と言っても過言ではない状況であろう。
にも関わらず当時のチームメイトである久保、中田、林の3名は誰一人諦めの言葉や態度、そして何より打牌を見せることはなく、最期まで拳を下さず闘っていたように私には見えた(作戦会議中に盲牌麻雀で遊んでいたのが気にはなったが)。結果としては私と林の2人で100ポイント強を叩くに留まり、後が続かず敗退となってしまったが、彼らが最期までファイティングポーズを取り続けたという事実が「次は勝てるに違いない」と私に確信めいたものを与えた。
チーム「ぼくくぼ」として装いを新たに臨んだ別日の予選では、私と入れ替わりで入った花田の活躍もあり他のチームを千切っての優勝。2ヶ月後の準決勝でも一回戦からチーム全員が好調で、危なげなく決勝進出を決めた。
こうなっては、私も生放送を視聴して彼らを応援しない訳にはいかない。
決勝を戦い終えた仲間達をいち早く出迎える為に大塚へ向かうべく家を出ると、外は予選を闘ったあの日を思い出させるような、10月にしては季節外れの暑さであり、私も思わずあの日と同じように腕まくりをして仲間の闘う場所へと向かった。
「ぼくくぼ」とは?
メンバーの人となりや逸話を書こうとしても文字に起こすのが憚られることばかりなので(笑)、どういった麻雀を打つプレイヤーなのかということを配牌からの最終形予想という形で説明したい。全て私の想像であるが、恐らくそう間違ってはいないはずである。
東1局 配牌
68m135779p12s中發發 ツモ1s
場況やドラは敢えて無視。
私であれば「なんじゃこら、ホンイツ?チートイ?發は1鳴きなんだろうか?愚形からチーするバックは?ピンズからであればアリなんだろうか…」などと中途半端な思考になるが、「ぼくくぼ」の4人であれば最終形は絶対に固まっている。
中田 最終形
68m345777p123s發發
中田という打ち手がこの發を1鳴きすることはまずあり得ない。それどころか、2枚目もスルーして雀頭や受けゴマに使っていくのが中田の麻雀だ。
メンゼンで勝負の形を作り、愚形でも臆さずにリーチ。待ちや打点に左右されない愚直なまでのリーチファイターぶりで、幾度となく対局者を震え上がらせてきた。
また手役意識も高い打ち手で、例えば今回の配牌のマンズ部分が24mであったとすれば、123や234の三色をターゲットにして、5mをツモ切ったり5pを早めに切るような一面も兼ね備えている。その為リーチに先切りのマタギやスジが通り辛く、しかも当たったら高い。
質量の大きめな体格も含めて、私がこの4人の中で最も恐れている打ち手である。
花田 最終形
1377p123s ポン發發發 チー768m
対称的にこの手を躱し手と判断し、マンズやソーズから動き出すバック仕掛けも積極的に行うのが花田である。無論發は1枚目をポンしていくし、この配牌のように愚形の多い手であれば1sや7pのポンも厭わないだろう。
個人的にこういった仕掛けは押し引きを間違え緩手や敗因としてしまうこともあると考えるのだが、花田の場合は絶対押し引きを間違えない。ムリだと思えば手牌が何センチでもオリるし、行くべき局面では1000点の愚形残りでノーテンの手でも全ツッパができる。
チーム内で唯一メンバー経験の豊富な打ち手で、その麻雀と崩れることのないメンタルは職場で生き残る為に身につけていった物と考えれば、洗練度がチーム1であることに疑いの余地はないだろう。
久保 最終形
5677p ポン中中中 ポン發發發 チー213p
花田と同じくカンチャンからでも激しく仕掛けるのが久保である。ただこの打ち手の違う所は、ホンイツを明確な目標にして進めて行くという点だ。その為中のような字牌は2枚3枚と場に見えるまで切らないし、マンズやソーズを仕掛けることもない。
今回の最終形はマンガンテンパイであるが、久保という打ち手は打点が3900だろうがホンイツのみの2000点だろうが押すと決めたらどこまでも押す。ちょっと押しすぎなんじゃないの?という牌も押す。それもノータイムでだ。
メンゼンの場合も同じことで、勝負になる形のシャンテンであればありとあらゆる危険牌を押していき、遂には「宣言牌のマタギは通る理論」なるものを提唱する程である(信憑性や例外のケースについては定かではない)。
彼のノータイムでの押しっぷりは距離感を測るのにとても苦労する。特に初見では対応の難しい相手であろう。
林 最終形
678m33777p11s發發發
或いは配牌での3トイツを活かしたチートイツを最終形に見据えるだろう。
こう書くと林という男がトイツ系の打ち手に見えてくるが、特にそういった偏りはなく、基本的には寧ろ4人の中で最もオーソドックスなタイプである。
ただこの男は「好きな芸能人」という質問に「金子正輝」と答えただけあって、1sへの拘りが凄まじい。この配牌に第1ツモが1sであったことで、間違いなくもうトイツ、アンコ手への手応えを感じているはずだ。
そして最終形でリーチをかける。「1sのトイツやアンコは裏ドラになりやすい」と常日頃から語る林には、裏ドラ表示牌の9sが透けて見えているに違いない。
ところがそのリーチが脇のピンフのみで流される。手癖の悪いことに裏ドラ表示牌を見たこの男は決まって落胆したような表情を見せ、ある言葉と共に手牌を落としていくのだ。
「鬼手だぞ」
彼がルーチンワークのように語るこの言葉を、優勝記念でTシャツにしようと思案中である。
ここまでたっぷりと説明すれば、「ぼくくぼ」のメンバーがどのような麻雀を打つのかが見えてきたはずである。
ではまず中田の出場した先鋒戦から、その戦いの様子を見ていこう。
先鋒編に続く!