上智大学の北原延晃先生の研修に参加してきた。


提出レポートから


今回の例会には、常連になった新潟の先生だけではなく、熊本や宮崎、京都からもお越しになり、コロナ渦以来、最大人数の参加者で教室が参加者が一杯になって、私もうれしかった。

2月は小澤征爾先生を失った喪失感が余りにも大きく、それを紛らわせるために、日々の授業準備をすると、授業が始まる1時間前までの隙間時間にモーツァルトのフルート作品に没頭している。日本が生み出した本物の巨匠が、まだ肉体的にも、芸術的にもバランスが良かったピークの時期に、小澤先生のセミナーで音楽を学べた時間は掛け替えのないものであるし、仕事への情熱や、物事を教える事で、現在の自分への大きな影響を感じている。

【1】宮崎県にたったの2人しかいない英語のスーパーティーチャーによる講演

内容:世界の数十カ国を旅したことで気づいたこと

・日本語として聞くと「えっ」と思う言葉が世界にはある。
・ジェスチャーが日本とYes/Noが逆な場合があるなど、外国ではジェスチャーが表す思わぬ意味に注意すべき。
・食事で一番おいしかったのはベトナム。
ただし、ホビロンは卵から孵る直前の卵の上部に穴を開けて食べる料理で、苦手な人も多いだろう。
・日本で過去に報道されたことが固定概念となった場合があり、実際に行ってみないと分からない。
・「名も知らぬ人の幸せを想え」と自分に言い聞かせるように、親切にされたことがある。

今回聞いた色々な場所を巡る国内旅行とは違って、私がやっていた、多くの時間とお金が必要な外国旅行では、お気に入りのウィーンとベルリンを軸にした旅行を繰り返し、行きつけのレストランを見つけたり、現地のオーケストラの団員と交流を深めてきた。

全く違う旅の方法からの興味深い内容であったと共に、スーパーティーチャーに認定されるにふさわしい話し方の巧さに感心した。

【2】北原先生による師範授業動画

対象:中学2年生
内容:最上級がターゲットになっているページのBパターン

本物の学生相手に授業をしている動画を使って、今回のように、一時停止して見所を北原先生に解説していただく形式がとても良かった。

古い動画から順番に研修で見てきた中で、「やっぱり意図的だ」面白いと思ったのはフラッシュカードを最初に使う瞬間。フラッシュカードの1周目。

小澤先生が、オーケストラの注目を集める一瞬の、僅かな緊張を生み出してから作品を始めるキューを出すのとは全く対照的。演奏では、全員一斉に揃う必要性があるので、英語の授業とは異なる。一方で、北原先生は、わざと無造作にフラッシュカートを、一定のリズムで一枚ずつめくって始める。

生徒は「あれっ始まっているぞ。ついて行かなくちゃ。」という様子で、柔らかい雰囲気で単語を音声化している。

今回、北原先生からも、動画を一時停止して解説があり、生徒自ら音を作らせる重要性について話があった。

私が北原メソッドに出会う前、職場で出会った唯一尊敬できる英語教師から、「英語以外の言語であっても」学習者自ら音を作り出すことが大事と教わった。これを教わった当時、彼は、教師をしながらコロンビア大学の修士課程で教授法を学び直していた。自分の教室を立ち上げてマンツーマン形式に北原メソッドを変換し始めたときからの基本になっている。

中学生の全学年をやってみて必要と感じた修正は、中学1年生の教科書を使う場合。入っている英語の音声そのものが少ない時期、少なくとも教科書の前半は、「従来型」北原メソッドのように教師のお手本にリピートさせるのを基本とする必要がある。ただし、フォニックスを意識させる時には生徒に先を歩かせながら一緒に音を作る。小学校の英語教育は地域差が大きいので、この方法も、今後は再修正を迫られる可能性がある。

【3】私が今考えていること

北原メソッドは、短時間の準備で最大の効果がある英語教授法という一面があるが、その神髄は、集団指導であっても、本物の帰国子女ほどの語彙力が無かったとしても、本物の帰国子女のように流暢に話す生徒を育てることができることにあると思う。

そもそも、私が教室を立ち上げたのは、赤坂中で自分の目で見たネイティブ・アカサカンのような生徒を、自分の教室で高い確率で生み出したいと思ったからである。

最近、そういう「帰国子女のように話す生徒」になったと私が判定した生徒は、授業中、ほとんど無意識に英語と日本語のチャンネルを切り替える、今までの他の例と同じような様子。最新の動画を撮る際にも、かなり長い、事前に用意した原稿を元にした内容を、それなりの速いスピードで、ジェスチャーを交えて「こんなものがあったらよいな」というCMのセールスマンになりきってやっている。最初に動画を撮りながら、「こう言い換えるともっと自然」と、撮り直しを提案すると、いとも簡単に修正していた。

私は長い間、その最も重要な期間は中学一年生だと考えている。そして自分の教室を立ち上げて、小学4年生からシルバー世代に至る幅広い年代を教える経験を経た結果、中1の夏休みまでがタイムリミットだと突き止めた。つまり、それまでに英語の耳を作り、発音の基礎をやらないと、ほとんど手遅れに近い。私の教室では、中1の3学期の入塾から、所謂、北原先生指導下の赤坂中の生徒のように最終的になった生徒はいるこのの、この生徒は相当な努力をした。例は悪いが、心肺停止に陥った人を救い出すために蘇生措置をして、実際に息を吹き返すには、一定のタイムリミットがあるのと似ていると思う。

一度退塾して戻ってきた生徒を含めて、何人かの「帰国子女のように流暢に話す生徒」を生み出した経験を経て、その重要な第二の期間は、中2の教科書を使う生徒の指導であると思い始めている。高い頻度になるかどうかのkeyになるのではないかと思っている。

北原メソッドにおいて、中1はまずは英語の耳を作って発音の基礎を身につける。2学期後半からは、書く活動を増やす。

北原先生によると、「中3はリスニングは(できるから、それほど重要視しなくても)もう良い。とにかくたくさん読ませる」ことに重点を変えるべきだとのこと。これは、現在の私のやり方で間違っていない。

今回、長い北原メソッドの実践者達に問いかけると、共通して、発達段階として中2の指導が難しく、先生の言うことを素直に聞き入れにくい生徒がいると聞いた。となると、北原先生がおっしゃるように、中2生徒には、興味関心を惹く楽しい読み物教材を使うことが効果的ということになる。

今回、お酒の入った場ではあるが、もう一度、私の教室に行っても良いと北原先生が言って下さった。心が躍る言葉だった。瞬時に思いついたのは、現在、小5二人、小6一人からなる、古い版の中2教科書を使い始めたばかりのクラスを指導していただくこと。目下のところ、二つのクラスが統合したばかりで、「こんな取り組む姿勢で本当に良いのか!」と檄を飛ばされながら、生徒達は新しい人間関係を構築している。温かい学びの雰囲気がある良いクラスがまさにできあがりつつある。生徒自ら、自分たちで作り上げていく新しい雰囲気を、英語道場の壁際から眺めるのはとても心地よいものだ。

中1教科書の後半にあった買い物ごっこを中断し、中2教科書を使い始めた時に再開すると、3人の内のある生徒は、次の買い物ごっこの時間までに、「これなんて言うのだろう」というセリフを自分で調べて作り直した原稿をノートに書いて持ってきたり、店員役と買い物客役のやり取りを見ながら映画監督のような役割を始めたりと、自主的にやり始めている。現実の社会で遭遇するタスクを協力してやり遂げる練習にもなっているのだ。金曜日の授業では、15分も早くやって来て、「買い物の練習をして良いですか?」と言って、自分たちで楽しそうに練習していた。

北原先生に、この興味深いクラスに来ていただけるように、自分自身の指導力をさらに磨き上げたい。



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