奥村です。
昨日も書いたのですが今回、
オービュッソンという小さな町に行ってきました。
ここは何百年も続く
タペストリーの町。
今回ここまで来た目的は、
宮崎駿監督の
「となりのトトロ」のタペストリーが完成し、
その公式訪問に参加するためでした。
実際に職人さんたちが
タペストリーを織っているところも見たのですが、
これがもう、
「そりゃ高くなるわ……」
という世界(笑)
ものすごく細かい作業を、
職人さんが延々と手作業でやっています。
一つの作品を作るのに
何か月、ものによっては何年。
大量生産なんて当然できません。
そしてミュージアムを見たあと、
タペストリーを実際に販売している
お店にも行ってみました。
そこで値札を見てびっくり。
新しい作品だと、
1メートル四方くらいのタペストリーが
57,000ユーロ。
日本円にすると、
ざっくり1,000万円弱です。
1メートル四方ですよ(笑)
もちろん美しい。
ものすごい技術なのも、
実際に職人さんの仕事を見た後なのでよくわかる。
でも、
「じゃあこれ、57,000ユーロです」
と言われて、
「いいですね。じゃあ買います」
とは、私はならない(笑)
1,000万円あったら、
たぶん私は株か不動産を買いますw
お店の人の話では、
もちろん買いに来るお客さんはいる。
でも油絵などと比べても非常に高額なので、
新しいファンを増やしていくのは
簡単ではないそうです。
確かにそうだよなあ、と思いました。
洋服なら、
「このブランドが好き」
というところから入って、
数千円、数万円の商品を買って、
少しずつファンになることができます。
でも、
「タペストリーに興味を持ちました!」
↓
「ではこちら、1,000万円です」
だと(笑)
入口のハードルが
ものすごく高い。
古いタペストリーの中には
新作よりずっと安いものもありました。
つまり単純に、
「古くなれば価値が上がる」
という世界でもない。
膨大な時間と技術を投入して作るから、
新作そのものがものすごく高いんですよね。
となると、
市場原理だけで考えれば、
かなり厳しい産業です。
どんどん作って、
どんどん売って、
利益を増やす、
というビジネスではない。
しかも、これだけ高度な技術を
次の世代に伝えていかなければならない。
「これ、普通に市場に任せたら
いつかなくなるんじゃない?」
と思いました。
ところがフランスは、
こういう文化や技術を
国や自治体なども支援しながら残しています。
なぜなのか。
今回実際に見て、
私はこれ、
国による「長期投資」なんじゃないか
と思ったんですよね。
今年いくら儲かったか。
来年いくら利益が出るか。
という話ではなく、
「100年後にも、この技術を
フランスに残しておく価値があるか?」
という時間軸で考えている。
そしてもう一つ、
現地に行って強烈に感じたのが、
これ、ものすごいPRなんですよ。
今回作られたのは、
世界中の人が知っている「トトロ」です。
それを、
何百年も続いてきた
フランスの伝統技術で、
巨大なタペストリーにする。
あれだけの大きさですから、
制作にかかる手間を考えただけでも
私にはもう値段を想像できません(笑)
でも、
これを単に
「タペストリーを1枚作って、
いくらで売れるか?」
という話で考えたら、
たぶん本質を見誤るんですよね。
世界中の人がトトロを見て、
「え、これ全部手で織ってるの?」
「こんな技術がフランスに残ってるの?」
「オービュッソンってどこ?」
となる。
私だって今回、
わざわざフランスの田舎まで来ています(笑)
つまりこれは、
タペストリーという商品のPRであると同時に、
「フランス」という国そのもののPR
なんですよね。
フランスって、
ファッションも、
ワインも、
料理も、
建築も、
美術も、
「そこにしかない」
というものがものすごく多い。
そして、そのブランドって
一朝一夕には作れません。
何百年も、
「効率が悪くても、これは残す」
ということをやってきた結果、
今の
「フランス=文化の国」
というブランドができている。
そう考えると、
職人さんを支援するために使われるお金も、
単なる
「儲からない伝統産業への補助金」
ではなく、
フランスというブランドへの
長期的な広告宣伝費
とも考えられるんじゃないかな~と思いました。
そして、
こういうものを全部、
「儲かるか、儲からないか」
だけで判断していたら……
世界中、ZARAとマクドナルドだらけに
なるんじゃなかろうか(笑)
いや、私はZARAもマックも好きですよw
安い。
便利。
世界中で同じ品質。
資本主義としては
ものすごく優秀です。
でも、
パリに行っても、
東京に行っても、
ニューヨークに行っても、
同じ服を買って、
同じものを食べて、
同じようなお店が並んでいる。
それだけになってしまったら、
世界はものすごく便利になる一方で、
ものすごくつまらなくなる。
市場原理だけでは
残せないものがある。
手間がかかりすぎるもの。
効率が悪すぎるもの。
作れる人が少なすぎるもの。
でも、
「売れないなら、なくなっても仕方ないよね」
で全部なくしてしまったら、
一度失われた技術は、
お金を出したからといって
簡単に取り戻せるものではありません。
だから、
今の世代だけで採算が合うかどうかではなく、
100年後、200年後にも
残しておきたいものなのか。
そういう時間軸で考えて、
社会がお金を使う。
これも一つの
「長期投資」
なんだろうなと思いました。
そして、その積み重ねが、
「フランスに行ったら、
フランスでしか見られないものがある」
という価値を作っている。
今回オービュッソンまで行ってみて、
タペストリーそのもの以上に、
そんなことが面白かったです。
ちなみに昨日から
パリ入りしていますが、
パリは忙しすぎますねw
人は多いし、
車は多いし、
どこへ行っても混んでいる(笑)
今回、フランスの田舎を何日も回ってから
パリに入ったので、
同じフランスでも
あまりの違いにびっくりしています。
パリはもちろんよい。
でも今回、
フランスに行くなら、
ぜひ田舎にも行ってほしい!
と思いました。
その土地にしかないものが
まだちゃんと残っている。
それを見ることも、
旅の面白さなんだなあと。
ちなみにこれもオービュッソンの職人さんが織った
ハウルの動く城のタペストリーです。
すごすぎます><
↓
