国が所得税と住民税の減税と言っていますが、住民税というのは、国ではなく、自治体が課税する税金ですし、

国は今も財源不足で、国債を発行していますから、

国が行おうとしているのは、

国債発行による、給付(バラマキ)だと思います。

 

しかも、減税という名の給付(バラマキ)の影で、さらなる物価高騰を招くリスクがあるにもかかわらず、インフラ等への巨額な財政出動をしようとしています。

今すべきは、                                         

1.地方に貯まった基金で住民税を減税し歳出規模を抑制して
2.国民の力を着けるために、公務員、個人事業主、オーナー企業などを増やすこと
3.過度なグローバル化や海外依存をあらため、方向転換すること

などだと思います。

質問原稿をアップします。

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フェアな民主主義 奈須りえです。

私は、住民税を減税すべきであると主張してきましたが、今回の国の所得税と住民税の減税は理屈に合わないと思っています。国は、慢性的な財源不足と国債の利払いのために国債で財源を確保していますし、今年の春、防衛費1兆円のために所得税増税を決めたばかりです。しかも、常日頃、社会保障財源が足りないから消費税増税と言っている国が、所得税という国税を減税と言っているのです。

減税という声に、思ったより国民が冷淡だったのも、こうした減税の矛盾に気づき、別の思惑があるのではないかと思っているからではないでしょうか。

 国は、所得税一人3万円、住民税一人1万円の減税と言っています。

借金で財源をまかなう国で3万円の減税で、22兆円も基金が貯まっている地方で、住民税は1万円の減税ですから、これも不思議です。

私が住民税減税を主張しているのは、大田区に基金が1300億円も貯まっているからです。
しかも、この基金は、大田区だけでなく、地方公共団体を合わせると2021年末現在で22兆円にもなります。2017年(平成29年11月)に総務省自治財務局が行った「地方公共団体の基金の積立状況等に関する調査結果のポイント及び分析」は、

・2006年度末と2016年度末の地方公共団体の基金残高を比較していますが、2006年度末は13,6兆円、2016年度末は21.5兆円で、この間7.9兆円も増えています。このうち財政調整基金は3.5兆円、減債基金は0.4兆円、特定目的基金は4.1兆円の増加となっていると分析していて、基金が増えて貯まっているのが、日本全体の傾向であることがわかります。

さらに同調査の、自治体種別ごとの増減をみると、都道府県は3.1兆円、市町村は4.8兆円の増加。市町村のうち政令指定都市・中核市0.5兆円、その他の市2.5兆円、町村1.3兆円、特別区0.7兆円の増加、一部事務組合等0.1兆円の減少。

交付・不交付団体別に比較すると、交付団体は、5.3兆円、不交付団体は2.7兆円の増加。不交付団体のうち東京都・特別区は2.5兆円、その他の市町村は0.2兆円の増加。

とまとめられていて、数の少ない東京都や23区など不交付団体の増加が顕著ですが、県も市も町村も、交付団体も増えているのも見過ごしてはならない傾向です。

また、増えた7.9兆円の要因のうち

2.3兆円は、「制度的な要因」と分析していて、住民税の定率化や地方分権の三位一体改革、合併などが影響していると理解できますし、

5.7兆円は、法人住民税の一部国税化で国がそれを地方交付税交付金の原資としたことを思わせる分析です。気になるのは、基金の調査で、基金の残高増加の要因に人口減少による税収減と上げていることです。将来人口が減って税収が減るから余った税金をその時に備えて貯めている。というこの言葉こそ、私たちが将来の人口減のため多めに税金を払わされ、基金が多額にたまったことに他なりません。地方税負担が需要以上に過剰だということです。
 私は、かねてから、議会でも、小泉構造改革や地方分権や三位一体改革で地方に集められた財源が、地方分権本来の目的に使われず、箱モノや開発に過度に使われそれでも余って基金に貯まっていることを指摘し、問題視してきました。

 

税金の使い方など自治体ごとに状況はそれぞれですが、たまたま、大田区の税収が良かったとか、大田区だけ、財政手腕が優れていた、と言うことではなく、基金が貯まる背景に、私が指摘した地方分権など構造的な要因があったことを裏付ける調査で、構造改革とはよく言ったものだと思います。

今回、国は、所得税と住民税の減税のほかに、非課税世帯への7万円の給付も行うと言っていて、本議会に補正予算が送付されています。

ところが、7万円の給付は、現在、国会で審議中で、まだ可決していません。

良いコトだから、早くやりたい、という一見正当な理由に見えますが、だからと言って国会で可決していない補正予算をもとに補正予算計上して、議会制民主主義の手続きを軽視してはいけないと思います。

国が、自治体に補正予算を年内に組むよう催促する異例の通知を出していますが、可決もしていない予算を根拠に補正予算を組め、と書かれているわけではありせん。与党多数だから可決するに違いないという区長の考えは、閣議決定を国会議決と同等に扱うに等しく、国会軽視で、大変に恐ろしいことです。大田区が、議会の議決を軽視したのは、今回が初めてではありません。コロナの特別定額給付金の時にも、早く給付するという名目で、議決をせず区長の専決処分を行っていますが、早いどころか大田区の給付が他自治体に比べ大幅に遅れ区民の皆様からおしかりを受けました。入札せず随意契約で業者を決めたことで、事務内容の条件が区の意向通りにならなかったことも大きく影響したと思います。議会を軽視したら、業者主導の契約になってしまったのです。

今回、国会の議決を待たずに低所得世帯への給付の補正予算を送付した大田区ですが、同時に閣議決定された住民税減税は、国会の議決は不要で、大田区が特別区条例を変えればできるのに、区は、何の準備もしていません。

国会軽視という民主主義の大大汚点を刻んでまで、国の物価高対策を早くやろうとしている大田区ですが、同じ物価高騰対策=住民税減税には、全く手を付けていないのです。

今回の国がいう一人1万円の住民税減税規模は、大田区の納税義務者数が43万人ですから計算するとおよそ43億円で、非課税世帯への臨時特別給付金57億円より小さい額ですし、大田区には、区民から取り過ぎて余って貯めている1300億円もの基金=貯金がありますから、十分に対応できる金額です。

基金を使わなくても、たとえば、2022年度の大田区の消費税収は187億円でしたが大田区がそのうち社会保障に使ったと決算書に書いているのは109億円にすぎません。78億円は社会保障に使わなかったのです。大田区のシティマネジメントレポート令和3年度版61ページをみると消費税が8%になって以降大田区に入った消費税収総額1367億円中大田区が社会保障に使ったのは、半分にもならない655億円713億円は社会保障に使っていません。財源が無いのではなく、優先順位の問題だということです。

急激な物価高騰に収入が追いつかないことは明らかで、それを放置すれば、区民の生活水準が下がり、貯金が目減りします。

そこでうかがいます。

大田区は、独自財源で一人1万円と言わず、速やかに住民税減で物価高騰から区民生活を守るべきではありませんか。

財政健全化の視点からも、蒲蒲線や箱モノ開発のために基金に財源を確保するのではなく大田区こそ、減税して、取り過ぎた税金を区民にお返しすべきだと思います。

国は、住民税減税と言っているのですから、住民税減税も先取りして対応してもおかしくないのに、そこは動かないのは、なぜかと思って調べたら、2009年にリーマンショックの時に、定額減税を定額給付金に変更して給付した事例がありました。

低所得者への給付は100%都費で大田区の財源を減らしませんから、フライングで補正予算計上するけれど、独自財源を減らす先取りの住民税減税には全く動かないということだと思います。

気になりましたので、国の閣議決定を調べたら、「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージにむけて~」という表題がついていて、あらためて今回の減税が経済対策の一環だと知らされました。

驚いたのは、減税が3.5兆円規模なのに、減税以外で21.7兆円の支出増を見込んでいたことです。今回の補正予算はその一部ということです。約6.3兆円が低所得者への給付で、残りが国土強靭化などのインフラをはじめとした財政出動ほかでした。

国は、減税で税収を減らすのが目的ではなく、減税を上回る国債を発行して、国土強靭化はじめ財政出動するのが目的だということです。

そこで心配なのが、今回の経済対策についての影響です。たとえば日本総研の西岡慎一 上席主任研究員は11月10日のメルマガで今回の経済対策について「先日、政府は巨額の経済対策を決定しました。コロナが流行してからこの時期の大盤振る舞いが恒例化しています。しかし、大規模な財政出動は現在のわが国には不要です。景気はコロナ禍の苦境を脱し、回復しています。回復期には財政を引き締め、将来の景気後退に備えることが政策運営の鉄則です。しかも、わが国では今年に入って需要不足が解消し、供給不足に転じています。巨額対策は、需要を過剰に刺激し、かえって物価高を助長しかねません。現在求められる対策は供給力の強化です。」

という指摘しています。大切な指摘だと思います。

内閣府は日本経済の需要と供給力の差を示す「需給ギャップ」について、ことし4月から6月までの推計値が3年9か月ぶりにプラスになったと発表しています。ニューズウイークの記事は、需給ギャップがプラスになったということは、需要に対して供給が足りないということであり、日本経済が人手不足やコスト増加によって供給制限に陥った可能性が推察される。と書いていますし、NHKの記事には、「需給ギャップ」はプラスの状況だと物価が上がりやすく、マイナスでは、物価が下がりやすいとされています。と指摘しています。

確かに、人や物が不足し始めていることを感じる場面はこの大田区でもみられます。

ことし6月、大田区の馬込小学校の図書室のエアコンの室外機が故障しましたが、修理するにも機材を調達できず直るのが9月になると言われ、区内の使わなくなった機材を探してようやく直せたということがありました。修理におよそ2か月もかかりました。大田区で入札の不調がめにつくようになりましたが、工事単価が上がって以降落ち着いたそうです。

経済産業省は2022年の経済白書に「2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大は、サプライチェーンの上流から下流にわたって大きな影響を及ぼし、今もなおその影響は継続している。ロックダウン等の感染拡大防止のための行動制限、渡航・移動制限といった対策に起因する経済の停滞や人手不足による影響のみならず、」

ここからが重要です。

「大規模な財政措置による急激な需要喚起もあいまって、物流の遅延や価格の高騰を招いている。物流の混乱は、資源・エネルギー価格の高騰を招き、高騰した資源・エネルギー価格は物流価格の高騰を招くという負の連鎖が発生している。」

と指摘しています。

国は、物価高騰の遠因に急激な需要喚起を指摘しているのです。

にもかかわらず、この時期に国は、減税で財政規模を縮小するのではなく、財政出動による急激な需要喚起を、行おうとしています。

 コロナでは仕方のなかった需要増かもしれませんが、今回は、国が意識して行っている急激な需要喚起です。

しかもさらに、心配なのが、今年6月に大田区が公共施設改築改修等中期プランを変え、箱モノだけで今後10年を比較すると年平均1.55倍、今後6年間集中して800億円も増やす計画に変更していることです。大幅な需要の短期集中的前倒しです。

報酬審議会の答申に、

「一般財源の大幅な増収は見込まれない一方、社会保障関係費や公共施設等更新需要など避けることが出来ない財政需要の増加が見込まれ、歳出に対し歳入が不足する厳しい財政環境が継続する」、とあるのは、大田区がそう分析できる資料を作ったからだそうです。本来、歳入に対し、身の丈にあった歳出を予算として計上することも可能ですし、そうすべきですが、大田区は、1300億円の基金があるからなのか、歳入が大幅に増えないと予想しているにも関わらず歳出を減らす努力はしないと決めていて、歳入を増やす効果も出ないと決めているのです。基金を、集中して使うということです。

 国もこの物価高騰の時期に短期に集中的にインフラはじめ、21.7兆円の財政出動。国大田区が歩調を合わせるように大規模な財政投入をしようとしているのです。

そこでうかがいます。

人も物も不足し始めている時に、箱モノなどの需要を短期集中的に激増させれば、さらなる物価高を招き、所得水準が下がりませんか。

日本はこの間、農業も林業など一次産品もエネルギーも製造も海外依存を高めてきました。ここにきての物価高騰の背景には、進めてきたグローバル化と外需依存の結果もあると思います。

今なら間に合いますから、方向転換すべきです。

賃金は、誰が増やすのでしょうか。

人に雇われて働いている人は、雇う人が増やします。この間、日本は、雇われてお給料を払ってもらう人を増やしてきました。投資利益に分離課税する日本において、税金で給付するということは、雇われてお給料をもらって働く人が払った税金が、べつの雇われてお給料をもらって働く人の収入になるということで、雇われて働く人の所得が減り続けている日本で、どうやって所得水準をあげるかという根本的な問題解決にはなりません。

賃金をさげる抑止になるのは、雇われていない公務員であり、個人事業主やオーナー企業の経営者などですが、この間、大田区は、民営化で公務員を減らし、グローバル化や国の政策で町工場が減り、商店街から商店が消え、雇われて働く人の賃金の低下を抑止し引き上げる力を弱くしてきました。今の課題は、大資本、グローバル資本、機関投資家とそれ以外の所得格差が大きくなっていることで、根本的な課題解決は、労働分配を是正し、公務員、個人事業主や小規模事業者など、誰かに雇われていない人を増やすこと等によって、所得水準を上げて、格差を是正することにあることを指摘し、質問を終わります。