2021年度大田区の決算についての奈須りえの意見です。

 

住民に身近な自治体が、生活課題を解決する、と言う名目で地方分権が始まりました。


課題解決のために、
国から地方へ税源が移り、住民税などの負担が大幅に増えました。

ところが、期待した社会保障には使われず、地方に集まった膨大な財源で、
大規模な土木事業や建設事業が始まっています。

 

国で行っていた無駄な公共事業が批判され、減ったように見えますが、

地方分権が、無駄な公共事業の隠れ蓑になっているのです。

 

社会保障のため、といわれて増税が繰り返されていますが、

社会保障は国の制度の枠組みで行われるので、自治体の税金を使う余地は無いと大田区は言っています。


しかも、介護も医療も保険制度なので、使えば使うほど、保険料負担、窓口負担が増えています。
 

税金も社会保険料も負担は増えるけれど、安心を得られないのは、保険のしくみに問題があるからです。
 

こうした問題意識から大田区の決算についての討論をしました。

 

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フェアな民主主義 奈須りえです。

 

令和3年度の第49から52号の全ての決算の認定に反対の立場から討論いたします。

令和3年度末決算で積立基金総額は1200億円を超えました。

2018年に空港跡地の165億円を引き出したためいったん減っていますが、特定目的基金と財政基金を合わせ88億円も増えました。

基金の積み立てが増えたのは、地方分権と三位一体改革で、社会保障の責任主体を大田区のような基礎自治体に整理し、そこに税収が集まるしくみをつくった頃からです。

住民税増税、特別区交付金割合52~55%。ほか消費税増税。社会保障のためとは言われていませんが、各種の税制改正で、特別区民税収が増えています。

それだけ、区民の負担が重くなったということです。

ところが、税収ほどに社会保障分野に税金が投入されることはありませんでした。

大田区も、介護も国保も国の社会保険制度の枠組みで運営されているため一般財源の投入は定められた範囲でしかできないと説明しています。

生活保護は措置で、国と東京都が大きく財政負担しています。

社会保障のための増税と言われていますが、制度上決められた区負担分以上に社会保障に一般会計からの繰り出しはできないし、していないと大田区は言っているのです。

実際、三位一体の改革の時に財政負担で議論になったのは、保育でしたが、民営化で待機児を解消すれば、国と都からの補助がでたので、大田区からの持ち出しは縮減できました。

地方分権の権限を使い、大田区は、独自に区民の社会保障のために、それらの税金を使ってこなかったということです。

そのころから、大田区では、体育館、土地購入、学校や施設の複合化、羽田空港の跡地開発や購入、移転を伴う出張所の更新、公園や広場整備など大規模な箱モノや開発などが始まります。

それでも、税金を余らせてためた基金が1200億円ということです。

大田区は努力の結果というかもしれません。

しかし、令和3年度決算における不用額の1番は福祉費68億円ですが、今年に限ったことではなく、毎年50億円から80億円の不用額を出し続けています。

ところが、不用額を出しながら、リフト付き福祉タクシー運航委託など福祉事業を廃止しています。

こうした状況をみると、予算で福祉や教育など区民に理解を得られやすい費目に多めに計上し、不用額を出して最終補正などで羽田空港対策、新空港線、公共施設基金などに積み立てることを繰り返して来たのがみえてきます。

社会保障のための増税で、増えた歳入を、箱モノや大規模開発に使う隠れ蓑の役割を、基金がはたしているのです。

新空港線整備や新空港線まちづくり構想案の財源も、この基金を使って行おうとしています。

しかし、決算審議で明らかにしたように、

問題は、区民の需要が低く採算性のとれない事業への税金投入を可能にし、事業者が、そこから、リスクなく利益をあげることが始まろうとしていることです。

蒲蒲線は採算性が極めて低く、それまでの鉄道の補助では事業化が不可能でしたが、蒲蒲線をモデルに法律をつり事業化を可能にしています。

公共性の無い事業を速達性で認可し、それを名目に区内全域でまちづくりと称した土木工事建設工事を始めようとしているのは、問題だと思います。

これまで、
・公共分野の民営化による低賃金化と、
・税の一部が投資家利益に流れ格差が広がる問題や、
・公民連携やデジタル化などによる民主主義の形骸化、
・意思決定の民営化=アウトソーシングの問題を指摘してきました。

そのうえ、公共性が無いのに、リスクは税で負担し利益は企業が得るということが許され始まれば、税負担は限りなく大きくなり、企業は利益を得て、さらに格差が広がります。

東京は、食費や住居費や光熱水費が高いため「東京都の中間層の世帯は、他地域に比べ経済的に豊かであるとは言えない」という国交省の調査結果があります。

重い負担感で支払った税金が、優先順位の低い、にぎわいや便利や楽しいや快適など公共性の無い分野に使われても、暮らしの安心は得られません。

しかも、調査したところ、基金は、大田区だけでなく、財政が厳しいと思っていた地方でも積まれ、2016年の総務省の調査では全国で21兆円になっています。

その基金を国債など政府系金融債を中心に買って運用する動きも同じです。

地方分権で地方の税収が増えただけでなく、都市部の税収が法人住民税国税化や、消費税の清算基準の変更、ふるさと納税で間接、直接に、地方へ流れましたが、それらで国債を買い支え、それが再び、国の補助金としてたとえば、大田区の蒲蒲蒲の鉄道整備に使われる構図です。

構造改革以降のこうした仕組みは、誰のため、何のために行われているのでしょうか。

それを許す税金の使い方が、令和3年度決算の審議等を通じ、明らかになった以上、認定に賛成することはできません。反対です。