大田区議会第二回定例会提出議案①補正予算が提出されました。
自由競争経済で価格が下がりサービスが向上すると説明されて始まった「民営化」や「民間委託」ですが、同時に、保育士や介護従事者などの低賃金化が問題になっています。保育園の待機児対策は、効果の検証なしに民間事業者で進めて大丈夫でしょうか。
第42号議案平成29年度大田区一般会計補正予算(第一次)について、反対の立場から討論いたします。
今回の補正予算には、大田区次世代育成支援緊急対策整備事業として私立認可保育所の開設準備補助、12億1,761万2千円が計上されています。
これは、育休延長者など国が待機児のカウント方法を見直したことにより待機児が想定を229名上回ったことで、待機児対策を700名拡充から1100名に上方修正したことに伴う費用です。
三位一体改革以降、公立保育園の費用は一般財源化されましたが、民間事業者にしか補助金が支給されないことから、待機児対策は民間保育園に誘導されてきました。
平成29年4月1日現在、私立認可保育園は、72園になっています。
大田区は認可保育園18園を残しすべて民間事業者運営にする方針ですから、このままいけば、ますます民間事業者運営の認可保育園は増えるでしょう。
今回の待機児対策も、国と東京都の補助金を使い11施設約400人の待機児対策を「私立認可保育園」で行いますが、本当に私立認可保育園で待機児を解消すべきでしょうか。
民間事業者による待機児対策は、保育士の低賃金や勤続年数が短く定着しないなどの問題を招いています。そのため国だけでなく大田区も「賃金を改善させるための費用」を補助し始めています。それでも、現場では、大勢の保育士が一度に辞めるなどの問題もおきていて保護者や子どもたちに混乱を招き不安を与えています。
民間事業者を活用する効果がどこにあるのか、本会議場においてもまた委員会でも質疑しましたが、明確な答弁を得られませんでした。
メリットとして、保育の質やサービスと言いますが、質やサービスについて大田区としての明確な定義もありません。民間事業者の効果を突き詰めれば、延長保育や休日保育、アレルギー対応できるからなどで、公務員の保育士は職員採用計画の関係で柔軟に保育士を増やせないというのが大田区の説明です。これらは、給料の高い公務員の保育士は増やせないというコストの問題になりますが、私が試算したところ、直営と私立園とで、明確に私立の方が低コストだという結果は出ませんでした。
公務員保育士の給料が高いから、と営利企業に保育園をゆだねた結果、保育士の給料というコストが削減され、それが問題だからと、処遇改善費用を補助金で支給しはじめている構図は、営利企業の利益のために補助金を出しているように見えます。
大田区の私立保育園で働く多くの保育士は大田区やその周辺に住んでいる方たちです。コスト削減だからと低賃金の保育士で保育を担うのと、直営で安定的な処遇の保育士にお願いするのと、どちらが良い保育環境を提供できるでしょう。どちらが、区民によりよい税金の使い方でしょう。
大田区は、直営と民間事業者保育園のコスト比較をしてどちらが効果的か示すべきです。
韓国ソウル市では、民営化を直営に戻し、現場労働者の賃金を増やしながら市のコストを削減し効果をあげています。大田区も直営に戻せば、少なくとも株主配当や内部留保にまわる分、保育士の処遇は改善されるはずです。民営化の効果と言われてきた、自由経済競争による価格の低下もサービスの向上も、公定価格と補助金で運営される認可保育園ではありえないことは、当初からわかっていたことです。
コスト比較もせず、問題を放置し、漫然と営利企業に保育事業を担わせることは問題であり賛成することはできません。