大阪都構想が住民投票により否決されましたが、この否決を改革を否定する動きと決めつける報道が目につきます。

住民自治の何たるかも、都構想がどういった統治機構なのかも知らない方たちの「二重行政=悪」で都構想が二重行政をやめられるといった、事実無根のスローガンに踊らされた論調には、正直「言ったもん勝ち」の恐ろしさを感じます。

そして、その背景には、都区制度を良しとする論調も含まれていて大変気になっています。

そこで、今だから考えたい都区制度について、連合審査会で大田区の姿勢を確認しました。

大田区は、都区制度について自治権拡充のこれまでの流れをみとめ、その課題が残っていることをみとめました。

大田区の優秀な「官僚」は健在でほっとしています。

ただし、税金の使い道、予算編成方針を抜本的に変えることについての質問には、現状を肯定する答弁しかありませんでした。

区民の生活課題を切り捨ててまで利益分配を守ろうとする今の税金の使い方について、引き続き、問題を明らかいにするとともに、指摘を続け、改善を求めていきたいと思います。


以下、質問の原稿です。
時間の関係で、発言していない部分がありますが、質問の趣旨をご紹介するため掲載します。

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大阪都構想が反対多数で否決されました。

大阪都構想は、特別区を設置するか否かを問うた住民投票だったことからもわかるとおり、東京都の都区制度に非常に似た仕組みです。

昭和18年、戦時体制下において「東京都制」が敷かれ、それまでの東京府、東京市は廃止され、東京都が誕生しました。終戦後、民主化政策により改正された都制のもとで、区の自治基盤が強化され現在の23特別区となっています。その後、多くの区民や都区政関係者の粘り強い自治権拡充運動が実を結び、平成12年4月1日から、特別区は東京都の内部団体から脱却して法律上の「基礎的な地方公共団体」として位置付けられ、今日に至っています。

 「自治権」という視点からの議論が希薄だった「大阪都構想」、地方分権が影をひそめた今だからこそ、歴史的経緯をふまえ都区制度の自治権拡充の流れを、区民を代表して確認しなければならないと考えます。

そこでうかがいます。

未完の改革と呼ばれる「都区財政調整制度」についてどのような問題意識をもっていらっしゃいますか。



ここに、今、行われている特別区長会に設置されている都区のあり方検討委員会幹事会第一回の西野前区長のあいさつを引用させていただきたいと思います。

思いのたけを少し申し上げたいと思います。

特別区制度が始まって60年を経過しています。その間を振り返って見ると、当初は区長公選、住民自治という立場だったのですが、途中、事務は都の方に引き上げる、区長選挙はやめるという住民自治の破壊といえるような状況、経過があり、特別区側から見るとこの60年は正に自治権拡充の歩みだったと思います。

より身近なところで住民サービスを提供できるようにしたいという気持ちで今日まで特別区政を東京都の理解を得ながら、拡充、強化してきた歴史だったと思います。

こうした経過の中で、今回は更に都区のあり方を再検討し、できるだけ事務を特別区に移せるものは移そうじゃないかと、そのときには移された事務処理の機能、能力も当然体制として作り出さなければいけない。そうなると区の再編問題も論議の俎上に乗るであろうという筋書きになったと思います。


そういう意味合いでは、都区が一致協力して共に手を携えて、正に今言われた日本のエネルギーの源として、発展すべきは発展し、また、一方では地域行政、地域サービスは、ガッチリ住民に十分に届くような体制づくりを進めていくことになると思います。
このことを改めて都区で検討し、よりよい住民生活、そして日本全国に向けて、正に東京から発信できる区政、都政というものを構築することが求められているのだと思います。

当然のこととして財源問題等も含まれるわけでして、体制、システム、事務配分、そういうことの上に乗って特別区が十二分に責任を果たせるような、財源問題の論議も展開し、地方自治のお手本として、都区関係が構築されるように私どもも精一杯の努力をするべきだと、このように考えています。よろしくお願いします。



ところが、地方分権でおりた権限は国家戦略特区のように、企業が利益確保のため「規制緩和を自由に使える仕組み」として活用される一方で、自治権拡充運動を後退させてしまっています。

このことは、たとえば、大森彌東大名誉教授が、2012年の特別区東京区政会館にて行われた特別区議会議員講演会「都区制度と特別区のあり方」のなかで

『平成 12 年改革(地方自治法改正によって特別区が基礎的自治体として認められたことをさしています)の結果、都区制度改革の動きは鈍っている。かつてのような区民を巻き込んだ自治権拡充運動は影をひそめた。これ以上の改革を都も国も進める気はなさそうである。特別区を普通地方公共団体に位置づけるという点での「昭和 61 年の都区合意」は結実しなかった』

という指摘をしていることからもわかります。


都構想の講演に大阪に行った際に所得平均の分布や福祉サービスなどを東京23区域や大田区と比べて驚きました。大阪市のほうが、大田区より住民サービスが良かったからです。例えば、人口269万人の大阪市の特別養護老人ホームの待機者はおおよそで2900人。ところが人口が1/4強の大田区の特養待機者は1500人にも上っていたからです。

日本の経済の中心、経済のけん引役とまで言われる東京都のしかも都心部に位置する23区の住民サービスが、なぜ、東京より経済状況の良くない大阪市より悪いのでしょうか。

土地が高い、人が多いと言われてきましたが、だから固定資産税、住民税が多く集まっています。この問題について、私たちはもっと真剣に考え取り組まなければならない時に来ていると考えます。

私は、その理由の一つは「都区財政調整制度」という仕組みに有ると考えています。
土地が高く、大企業の本社が数多くあることで入る固定資産税、法人住民税等調整三税といわれる税収は、一般的には基礎的自治体の財源になりますが、23区は特別区だということで東京都が徴税権を持ち、その45%を東京都が「大都市事務」を行うとしてとってしまいます。これに都市計画税100%を合わせた約1兆円が毎年23区域から東京都に吸い上げられる構図でこれが都区財政調整制度です。
財政調整は、23区間の財政力の違いを平準化する一定の効果はありますが、区の自治権や、大都市事務の45%が妥当かどうかなど都区間の課題は山積しています。
 に地方分権により、社会保障の責任主体は基礎的自治体に整理されており、区側の役割はこれまで以上に大きくなっています。これからの高齢化は特に都市部の課題であり、第三号被保険者の廃止の方向性など女性の就労が増える動きもあり、今後、都区の役割から見れば区側の需要が大きくなってくることは明白です。

そこでうかがいます。社会・経済状況の変化から区民のおかれている状況は、この約10年の間に大きく変わっています。
区政のおかれている状況や都区財調のしくみをみれば、いまだからこそ更なる自治権を拡充し、都区の在り方を見直す時にきていると考えます。ぜひ区長にはリーシップを発揮していただき、区議会と連携し都区の在り方について積極的に取り組んでいただきたいと考えますいかがでしょうか。


大田区は都区制度の問題を抱えながら、区民の生活課題を解決しなければならないわけです。

一方、根強い「東京富裕論」から法人住民税が国税化されるなど、財政状況はますます厳しくなるばかりです。しかも、法人住民税の国税化は、法人税減税の補てんとして位置づけられており、更なる法人税減税が行われれば、大田区の財源はさらに厳しくなる構図です。

にもかかわらず、オリンピック開催に乗じた各種開発や東京都のつくった都市計画マスタープランに、市街地再開発事業、都市基盤整備、道路整備、連続立体交差事業、清掃工場や不燃ごみ処理施設などの施設整備などが盛り込まれるなど、大田区の財政負担はさらに大きくなろうとしています。

社会保障の責任の主体となった大田区がこうした政治的・社会的背景を考慮せず、これまでと同じ感覚で予算編成を行えば、そのしわ寄せを受けるのは大田区民です。

4月1日付の待機児が154人になったという答弁がありましたが、カウントの仕方が変わったことによる数合わせにすぎず、区民間の保育料負担、保育環境の差は、依然として残ったままです。

フランスの経済学者ピケティは富の再分配がうまくいかなくなり、格差が拡大していると指摘していますが、富の再分配とは、大田区の税金をどう使うかという問題でもあり税金の使い方を変えることもまた格差拡大の歯止めになるということです。

東京都と大田区の事務や財源の関係を見直さなければならないと同時に、大田区も予算編成の在り方を抜本的に変え、保育園や特別養護老人ホームといった区民の生活課題解決を最優先に取り組む予算編成方針にするべきであると考えます。大田区の見解をお示しください。