FMラジオ J-WAVE 『JAM THE WORLD』堤未果さんの番組でTiSA(ティサ)について話しました。

説明しきれなかった部分も含め、TiSAについてまとめてみました。
ラジオを聴き逃した方、ラジオだけでは??の皆さんへ。

参考資料:新サービス貿易協定(TiSA)交渉の進展(外務省HP)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000387.html

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【TiSAとは】

国と国との間の貿易のルール。
新サービス貿易協定 Trade in Services Agreementの略。

新とつくようにサービス貿易の更なる自由化 
更なるというのは政府の提供するサービスが対象になるということ。

貿易の自由化を進める国際機関である世界貿易機関(WTO)の協定の一部

◆1995年1月~GATS(General Agreement on Trade in Services;ガッツ)というサービス貿易協定として始まった
GATS(ガッツ)は、公共サービス(例:国営独占の場合の電力、水道事業等、公立学校教育、医療など)以外のサービスを対象とした貿易協定だがTiSA(ティサ)は公共サービス含む物以外のすべてのサービスが対象。

公共含むサービスの事例・・・・
バス・電車(運送サービス)、銀行・保険(金融サービス)、電話・ファックス(通信サービス)、デパート(流通サービス)、病院・薬局(医療サービス)、塾・英会話学校(教育サービス)



【交渉参加国】

全部で49か国。TPPが12カ国。TPPにEUを加えたイメージ

TiSA交渉の参加国・地域(23か国・地域(EU各国を含めると49か国))

日本米国,EU,カナダ,豪州,韓国,香港,台湾,パキスタン,ニュージーランド,イスラエル,トルコ,メキシコチリ,コロンビア,ペルー,コスタリカ,パナマ,パラグアイ,ノルウェー,スイス,アイスランド,リヒテンシュタイン(太字がTPP交渉参加国)


TPP交渉国で入っていない国:シンガポール(星)、ブルネイ、ベトナム、マレーシア)



【交渉の進捗状況】

平成24年(2012年)~WTO(世界貿易機関)加盟国の有志国で継続的に議論してきている様子。
本格的な交渉段階に移っている。内容の詳細を加速度的に固めつつ,可能な限り早期の妥結を目指す。
◆現行GATS協定以上のサービス貿易分野の自由化、FTA(二国間以上の国際協定)の成果を取り入れた協定の策定を目指す。
我が国の締結済みもしくは交渉中全てのEPA/FTAにおいても,サービス貿易を対象。

●我が国の成長戦略として,諸外国の規制緩和等の自由化を通じ我が国サービス産業の海外展開を促進するとともに,我が国消費者の利益の向上により,我が国経済の強化に資することをめざす。
(外務省のHPより引用)新サービス貿易協定(TiSA)http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000006996.pdf


【TiSAが目的とする公共サービスとは】

GDPの74.5%  雇用の70.2% はサービス産業

日本の政府調達のトータルボリュームは約 35 兆円。うち、WTO 対象約 10 兆円、非対象案件が約25 兆円。
この非対称部分のうち、外国企業が応札可能なのは、EUでは85%、同アメリカ32%、同日本は28%。
実績となると、EU 件数で1.6% 金額3.5%。日本2.7% 金額3.5%(ただし、公共事業含まず)

具体的なサービスでいえば、水道、道路などの社会基盤、電算システム(税、戸籍・住民票、インフラ管理、保険請求)、電力、医療、教育、介護保険、保育、建築確認、障害者サービス・・・・

現行では、全ての政府機関、都道府県、12政令指定都市、特殊法人、独立行政法人などが対象だが、TiSAが締結されると区市町村にまで及ぶ可能性はないか。


【メリットを受けるのは誰か】

消費者と言われているが、企業。中でも大企業(多国籍企業)ではないか。

契約や商習慣、資金力なども含め、国を超えてサービスを提供することができる体力があるのは、大企業、中でも多国籍企業に有利。
利益を得られなかった場合に政府のWTOルール違反を訴えることができるISD条項もつくと言われているが、国をうったえられるだけの力を持っているのは、巨大な多国籍企業だけ。
巨大企業がサービスを提供するようになると、特定企業が市場をほぼ独占する可能性があり、価格や商品、サービスなどが一律化する、あるいは企業にコントロールされる恐れがある。(選択肢を狭める)

【国家戦略特区とTiSAとの共通点】

大企業=多国籍企業=機関投資家が市場を支配する可能性。
国家戦略特区は、TPPという国家間の貿易協定を国内で有効にするための法令整備が目的。特区という市場を多国籍企業に開放するために必要な規制緩和を行う。
TISAは、TPPの中でも、政府の提供する公共サービス市場を多国籍企業に開放するための貿易協定。

国家戦略特区もTiSAもTPPも、私たちの公共システム・公共サービスを使って、大企業、多国籍企業に利益を与えようとしている。国や地方自治体の権限が多国籍企業のために使われ、私たちの税金や保険料や利用料が多国籍企業に流れる。

これまで、私たちの税金や保険料や利用料使用料は、地域内を循環するしくみに支えられてきている。

地方自治体の公共工事が地域経済を支えているのも、こうした仕組みによるところが大きい。しかし、TiSAにより、市場が世界に開放されると海外にお金が流れ、地域内経済循環が変わる可能性がある。

さらに具体的に言えば、地域の中小企業で支えられてきた公共事業を多国籍企業に奪われる可能性がある。

【TiSAや特区による公共サービスの自由化でコスト削減や選択肢が広がることにつながるか】

広がらない
①一社独占の公共サービスはそもそも競争性の原理が働かない。

水道が良い事例だが、一地域一社。そもそも、競争は無いので競争によるサービス向上や価格の低下はおきない。
安全性も利潤追求のため最低限度になり、場合によっては、案税医制より利潤が優先されることもある。
 
②多くの公共サービスは財源不足を理由に需要に対し、供給量が足りない。そのため、売り手市場で消費者は選択することができない。保育園や特別老人ホームが良い事例

③公共サービスは、そもそも競争原理がなじまないため、税金投入されて初めて成立する。公共が事業主体なら不要な株主配当を税金で確保することになる。
同じ価格で提供される公共サービスなら、株主配当分コストを下げねばならない。仮にコスト削減につながったとすれば、多くの場合、人件費削減による効果。
結果として私たちは子や孫の世代の賃金を減らし就労機会を奪っている。


【TISAが締結されたらどんな影響?】

①学校教育を株式会社が担う
②株式会社立の病院ができる
③市や都で運営している水道事業をを株式会社が運営する
④ごみ処理を株式会社が行う
⑤特別養護老人ホームを株式会社が運営する


既に始まっている部分もあるが、お金のある人が良いサービスを受け、無い人は、質の悪いサービス、しか受けられない、あるいは、利益につながらない人や地域にサービスが提供されない可能性がある。

◆たとえば、大阪市では水道を民営化しようとしている。
 水道は地域に一つの事業者だから、競争は無いので競争性の原理により水道料金が下がることは無い。
 しかも、水道料金はかかったコスト分を水道代に転嫁する仕組みなので、水道設備に投資すればするほど水道料金は高くなる。企業は、売上を上げ、利益を高めるために、投資額を増やすことは無いだろうか。
 大阪市の水道民営化の資料にはフッ素という言葉も入っている。
 安全性より利益を重視することは無いだろうか。
 これまでは、「議会」がそのチェックをしてきたが、民営化されれば、東電と同じ程度の議会の関与しか無いが、大阪市の水道民営化の資料ではそれをメリットとして取り上げている。
 

一般に言われている民営化によるコスト削減効果も怪しい。

私が大田区の議員として大田区政を見つめ始めた時期に小泉構造改革が始まった。

コスト削減とサービス向上と言われた民営化や民間委託だが、私が大田区議会議員になった2003年の一般会計予算と2014年の一般会計予算を比べると、1800億円から2400億円へと減るどころか大幅に増えている。団塊世代の大量退職も終わり、民営化の効果が表れていいはずのこの時期にこの数字。
民営化した保育園は未だに待機児が600人。特別養護老人ホームも約1600人が待機している。


民営化とはいったい何だったのか、そことセットで考えると、いま、私たちの地域や日本、そして世界で何が起きているのかが見えてくると思う。

◆しかも、TiSAには「ラチェット条項」という一旦行った民営化や規制緩和は戻せないという条項が入っているといわれている。
 ボリビアでもフランスでも水道の民営化が失敗に終わり、再公営化(国営化)している。
 しかし、TiSAでは、一旦水道や教育などを株式会社がになったら、公営化国営化できないことになる。
 

【秘密裏の貿易交渉はなかなか国民には情報も入らず手も出せないが、できる事は】

知ること!考えること!つながること!

行政や議会に情報を求めるための電話・手紙・陳情。

行政職員も議員も知らない人が多い。調べよ、説明せよどういう姿勢を示す、

勉強会を開き多くの人と情報を共有する



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企業が国家や地域社会(地方自治体)をコントロール(支配)しようとしている。

いったん、開放した公共分野は再公共化できないというルール(ラチェット条項)まで盛り込んでいる。しかも、自由競争と言いながら、公共サービスの多くは生活に欠かせないため日常的に必ず「売上が」発生する。
税金や保険料、利用料金、使用料金という形で売上は確実に確保できるうえ、そこから株主配当へと流れる民営化は、必ずしも税金や保険料をもっとも有効に使う仕組みとは言えないのではないだろうか。

働かない公務員、サービスの良くない公務員が提供する公共サービスに満足できないなら、質の良いサービスを提供する働く公務員にするにはどうしたら良いかという選択肢もある。

私たちは、私たちの共同社会をどう作りあげていくのか、いま、子どもたちの世代のために真剣に考えるときがきている。