大田区の財政状況はここ数年悪化しています。
昨年大田区が公表した「大田区財政のターニングポイント」においても、このままいけば大田区の貯金である基金があと2年で底をつくと試算しています。
財政悪化を改善するために大田区として今何をすべきでしょう。
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■大田区が説明する財政悪化の理由■
「歳入減が大きく影響している」
「少子高齢化や雇用状況の悪化に伴う義務的経費の増大」
■民営化や民間委託の効果は?■
しかし、ここで私たちが考えておかなければならないのは、大田区では民営化や民間委託により様々な事業を外部化し、コスト削減に努めてきたということです。
民間企業の中には、人件費削減効果が、ここ数年の団塊世代大量退職により大きく現れているところもあるそうです。民間企業と異なり人件費については基本的に退職不補充によってしか行えない行政にとって、この時期にこそ、民営化や民間委託の効果が現れて良いはずですがどうなっているのでしょうか。
(退職不補充分だけの削減効果であれば、かなり職員の年齢構成バランスが崩れたはずでそうした検証も必要です。)
特に、ここ数年大田区の区民サービスが特段向上したという実感もありません。
大田区財政の悪化は、区が説明するように歳入減と義務的経費の増大だけでしょうか。
■土地を買って待機児対策?⇒現有資産(保育園・幼稚園)の有効活用■
大田区では、待機児対策の一部として土地を購入し保育園を建設して保育園定員を増やしています。
人口減少、少子化と言われているなか、保育園のニーズがあったとしても安易な土地購入は控えるべきです。
私は、施設ごとに定員にばらつきのあった認可保育園の定員を見直すことを大田区に提案し、約100名の定員増を可能にしています。
また、保育園だけで待機児対策を行えば、幼稚園が定員割れを起こすことになります。幼稚園と一緒に子育て環境の拡充に取り組むべきです。
■緑の保全⇒緑化率を規定し民地の緑を保全■
前回の活動報告でもふれていますが緑地保全は土地購入では限界があります 。
お隣の世田谷区では、都市緑地法による「緑化地域制度」
を導入し緑化を建築確認申請の要件として緑を保全しています。
一方の大田区は、緑化率は定められているものの条例化していないので拘束力がありません。
民地の緑を守るには、民間開発に一定のルールを作る必要があります。
■放置自転車対策⇒一定規模以上の商業者などに義務付けている駐輪場設置を形骸化させない■
現在の大田区の駐輪対策は、なかなか進みません。
課題であるとしながら、条例で規定されている一定規模以上の商業施設などに駐輪場の設置を義務付ける付置義務も守っていただいている事業者がいる一方で守らない事業者がいるなど不公平な運用がなされていますが区はこれを容認しています。
自治体によっては改修の際の駐輪場設置も義務の対象にしていますが、大田区は行っていません。
駐輪場の付置義務の遵守と改修の際の駐輪場設置を新たに条例に規定するよう提案していますが大田区は行おうとしません。
一方で、土地を購入しながら放置されている状況もありました。
例えば平成20年に大田区が購入した区役所近くマルエツの脇のかぎ型の土地は、まちづくり用地として買ったが何をたてるのかなど使用目的は決まっていないと大田区が委員会で説明した土地です。
購入してから2年近く放置され、無駄ではないかと決算委員会において指摘したところようやく駐輪場として整備しています。
この土地430平米、5億4,000万円。坪414万円は大田区が直接買わず、大田区土地開発公社に買わせているため利子負担だけで年間安めに見ても年間1000万円になります。
利用目的が定まっていないため、現在も土地購入の際に土地開発公社が借り入れた負債の利子を負担しています。
■利用目的の曖昧な土地購入■
大田区はマルエツの脇のかぎ型の土地の事例に見るように購入目的の曖昧な土地をここ数年買い続けています。まちづくりのタネ地や公園用地と説明されますが、そのまま放置されている土地も少なくありません。指摘され、駐輪場整備をするといった先ほどの事例。体育館の隣地のマンション購入に至っては、必要性も無く高額に買ったということで住民から訴訟を起こされています。
大田区が購入すればそれは直接大田区の財政負担になる一方で、大田区の外郭団体である大田区土地開発公社や第三セクターにも購入させていることから外郭団体や第三セクターの土地購入の借入金の利子負担や返済金もここ数年膨らんでいます。
銀行への償還金に充てるための区から公社への貸付金の決算は、この5年で激増。平成18年は8億6,000万円、19年は2億2,000万円、20年は1億4,000万円でしたが、債務保証限度額を増額した翌年の21年には32億9,000万円、22年には50億7,000万円にも膨らんでいます。
基金はあと2年で底をつくと大田区は説明しています。財政収入減り財政需要は増えています。
基金のとり崩し額は年間100億円。取り崩す要因の1/2を土地購入の返済金負担がしめています。
大田区の財政は危機的状況であり「大田区の財政のターニングポイント」は財政構造改革の意識付けを全庁的に行うためであると区自身が説明していながら、総務省の定めた、財政の指標からみれば「大田区の財政は健全」と説明し、これまでの財政運営の成果と評価する大田区は危機感にいまひとつ欠けると感じるのは私だけでしょうか。国家予算の1/2が借金でありながら改革を行えない国同様、当事者意識なくのんびりしているのが行政なのでしょうか。
平成23年度の予算審議がもうすぐ始まります。「予算編成にあたっては、マイナス・シーリングを実施し、行財政改革を果敢に進めながら、区民の負託に積極的に応えてまいります。」と言いますが、各部署一律マイナス5%などと言った乱暴なコスト削減ではなく、効果的な施策による効率的な区政運営を望みます。