ちょっと思い出す。
小さい頃の特別な記憶。
当時、引っ越したばかりで友達も少なく、一人で遠くへなんかいけないような年で、その土地の地理にも詳しくなかった頃、唯一の友達だった中村君との散歩はちょっとした大冒険だった。
ほんの数十センチの段差が僕らの前に壁のように立ちはだかってくる。二人でリポビタンD並のコンビネーションでそれらをクリアしていくのだ。なんて幼いケインこすぎだったことだろう。
「この先に秘密の抜け道があるんだぜ。」
ある日、中村がそう言った。
子供の頃の行動範囲なんて高が知れてる。家を中心にして半径1kmもないだろう。引っ越して一週間もしないうちに中村と僕はだいたいの道の探索は終えていたある日、中村がそう言ったんだ。
「いこうぜ。」
どこをどう行ったのか覚えてないが、他人の家の庭を抜け、細い路地を抜け、見たことない景色に胸躍らせて、それは本当に大冒険だったことを覚えている。
中村が教えてくれた抜け道を行くと、僕らがよく通っていた終着点の駄菓子屋までほんとうにあっという間についてしまった。まさしくそれは抜け道だった。
「すげぇよ!中村!」
尊敬のまなざしで中村を称えた。
今思えば、その秘密の抜け道を教えてくれた時が、僕らが親友になった瞬間だったのだろう。
-----------------
帰りなれた学校からの帰宅道、学芸大学の人ごみを自転車で逆走する。人ごみとぬるい春の風を掻き分け、もやもやした寝ぼけ頭でペダルをこぐ。春だなぁと、ちょっとにやつきながら。
五本木の交差点を抜けて、閑散とした住宅街をひたすらに走る、見慣れた景色、ふと左を見ると視線が抜けた。
幅1mもない細い道に、20cm角のタイルが20cmおきに(子供の歩幅くらい)道のむこうまで並べられている。苔の生えた、暗い道があった。
こんな道があったのか、一年間気づかなかったなと、自転車を降りて、おしながらそのわき道に入り込んでいった。入り口から出口まで、15mもない細く短い道で、住宅と住宅の間から入っていき、出口の左かわは腰の高さまで盛り土された公園があった。
ちょっとどきどきした気持ちで進んでいくと、向こうから子供が二人この路地に侵入してきて、すぐにしゃがみ公園のほうの様子をうかがっていた。
公園のほうを見てみると、一人子供が立っていて周りを見渡している。どうやらかくれんぼをしているようだった。
僕は歩みを止めずに、ずんずん進んで行って子供たちのそばまでいくと、二人の子供は僕に気づいたようで、目があった。子供の一人が人差し指を口にあてて「しーっ!」と小さい声で言った。するともう一人の子が、
「鬼が来た!」
と言って、それを合図に二人は僕の横をすり抜けて走っていってしまった。僕は振り返って、子供たちが道を曲がって消えていくのを確認してからまた歩き出し、その路地をぬけて、自転車に乗って、家へと帰っていった。
自転車をこぎながら中村と、秘密の抜け道のことを考えていた。
春の風があったかいなぁと思った。そして夏のことを思った。今年も暑くなるのだろうか。
背高草の、ざわざわと、それ以外聞こえない静かな夏の風景。
なんかさりげなく夏の花を思い浮かべてしまう。
ちゃらららら~ちゃらららら~ら~ら~
(number girl トランポリンガール参照)