急激に訪れた解散総選挙。
核となる勢力も存在しない、事実上の乱立状態。
こんな中で有権者に出来るのは
個々の政党、個々の立候補者の口車に惑わされず、
確固とした軸に基づいて投票することである。
当然、問題は一つや二つではないのであるが、
同時に全ての問題をクリア出来るわけではない。
優先順位と言うものがある。
では、今最も優先順位が高いものはなにか?
・エネルギー政策(原発関連)
・経済
他にも重要な問題があるのは承知の上で、
敢えてこの二つが最重要の争点だと考える。
さて、この2つの争点を議論する場合、
重要なことはどう転んでも国民は犠牲を強いられることを
理解していなければならないということである。
■エネルギー政策について
僕個人は、原発は廃止すべきとの考えである。
理由は完全にコントロールすることが出来ないからだ。
それは、元をただせば、政治以前に
テクニカルなリスクコントロールがお粗末だからです。
分野は違えど僕自身は技術者なので
技術者としてドライに見た結論です。
原発のリスクの核心は2つあります。
一点目は、燃料棒で核分裂反応を一度起こしたら、
それを常温に戻すまでに数十年オーダーの時間が
必要だということ。
核分裂が暴走してしまったら、数千度に達して
全てを溶かしてしまいます。
逆にこの性質はエネルギー供給者にとっては
夢の技術です。
放っておいてもエネルギーを発してくれるのですから。
一言で言うと【暴走性】。
二点目は、その間放射線や放射物質を
発し続けるということ。
これが何を意味するか分かりますか?
この性質があるために、事故があった場合の影響が
広域かつ長期に渡る可能性があるということです。
一言で言うと、【広域性】です。
まず、この二点を念頭に置いて下さい。
原発の安全神話を支えたのは、
「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」の
三つのレベルの安全技術です。
まず、「止める」ですが、これは根本的に出来ないことは
すでに述べました。
では、何をもって「止める」と言っているのか?
原子炉が稼働している時は、かなりの速度で
核分裂反応が起きています。
そこに制御棒と言う異物を挿入して、
核分裂反応の速度を減速することを「止める」と
言っているわけです。
技術者として、この用語が間違っているとは思わない。
ですが、普通の人が想像する「止める」とは違う訳です。
次に「冷やす」ですが、これは極めて技術的に難しいことです。
通常冷却に使われるのは水ですが、水の沸点は100度です。
従って、高い圧力をかけた密閉空間でなければ
効率的な冷却は出来ない。
つまり、「冷やす」ためにはかなりのハイテクが必要なわけです。
そして、「閉じ込める」ですが、「止める」、「冷やす」が
完全に失敗したら「閉じ込める」ことはできません。
核反応がどんどん加速して数千度の温度で全てを
溶かしてしまいます。
そういう意味で、福島原発の事故の時はかなり頑張って
「止めて」「冷やした」ためにあのレベルで済んだわけです。
さて、この【暴走性】と【広域性】を考えた場合、
原子炉で事故が起きたとき、
その影響は極端に大きいことが分かる。
一般的にある現象が起こる場合のリスクは
確率と影響度の積としてあらわされる。
しかし、その影響が明らかに水準以上である場合、
リスクコントロールとしては特別に考慮すべきである。
端的に言うと、事故が【起こってしまった時】の
対処も考慮せねばならない。
例えば、事故が起きた時は周辺の土地を
廃棄する政策を取るのであれば是非はともかく
リスクコントロールとして理解は出来る。
離れ小島と言う手もある。
何度も言うが是非はともかくである。
例えば、福島原発レベルの原発を
さらに密閉するようなシェルターを作るのであれば
話は分かる。
軍事施設並みの投資をして現在の数十倍~数百倍の
コストをかけて原発をコントロールするのだ。
技術的には可能だと考える。
それだけの覚悟や予算が無いのであれば、
原発は廃止する以外に道はない。
しかし、経済に与えるインパクトは当然ながら極めて大きい。
・国家滅亡のリスク要因を抱え続けるのか?
・経済的な大打撃を自ら受けるか?
まさに二者択一である。
原発を廃止すれば景気はさらに減速し、
リストラも増えるだろう。
現状のまま原発を廃止した場合に
普通に考えられるシナリオである。
勿論、今後代替エネルギーの安価な供給や
東京電力と競合する電力会社が出来れば話は変わる。
が、当面はかなり厳しい現実に直面するわけです。
この負の面に触れないで原発反対と言っている政治家には、
恐らく原発の停止などできません。
少なくとも、能天気な調子で原発反対と言っている政治家は
信用できません。
僕はそう考えています。
経団連をはじめ反対勢力があまりにも多過ぎるので、
覚悟が無ければやり抜くことは無理です。
■経済について
これについては二つのベクトルがあります。
・財政赤字の改善
・政府の財政政策による日本経済の復興
注)
日銀の金融政策による日本経済の復興については、
ここでは触れません。
現在の政治家の顔ぶれを見ると、これについては
政治主導で効果的な政策を実施することが
ほぼ不可能だと考えています。
上記二つは真逆のベクトルです。
財政赤字の改善をしたいなら政府を小さくし、
予算規模を縮小するのが早道ですが、
これにより内需は確実に減り日本の景気には
マイナスの影響を与えることになります。
一方、日本の景気を財政政策で刺激し、
雇用を増やす一番の方法は政府がお金を使うことです。
そして、そのためには赤字国債を発行するか
増税しかありません。
つまり、「財政赤字を減らしつつ、日本の経済を立て直す」と
言うことは「増税をします!」と宣言している訳です。
もしそうでないなら、その政策は実現できません。
政府に日本の経済を立て直して欲しいなら
税金を今まで以上に払って政府に思う存分使ってもらう。
ケインズ主義的な内需拡大政策です。
ただ、この政策が目立って功を奏したのは
緩やかなインフレが続いていた時期だということは
考える必要があります。
デフレの状態では政府がせっかくお金を使っても、
そのお金を途中の誰かが貯蓄なりで止めてしまうので
正直なところ効率はあまり良くないです。
むしろ、効果としては日銀が思い切った金融政策をした方が
よっぽど高い効果になる。
ただ、考えられる副作用もかなり大きくなる可能性があるので、
日銀が決断できないだけです。
一方、民間の力で日本経済を何とかしようとしているなら、
日本の経済回復について政治家の財政政策には
期待しない方が良いでしょう。
■結論はあなたの中に
ここまで、現時点でもっとも重要と思われる争点について
そのポイントを僕なりに論じました。
ここで提示したのは、いわば一つの材料に過ぎません。
結論はきっとあなたの中にあります。
全ての国民の中にある真実を、
今回の選挙でそれぞれの有権者が出せば
政治もきっと良い方向に向かう。
それくらいは信じて良いと僕は思うのです。
何度裏切られたとしても、
それくらい、まずは信じてみましょうよ。
学びの冒険者 原口直敏